第15話

夏休みの最後の日、莉子は高原の避暑地で見つけた特別なお土産を里子に渡すために、里子の家を訪れた。袋から取り出したのは、見た目には普通の小石だったが、その表面には自然が作り出した美しい模様が刻まれていた。


莉子は、小石を手に取りながら、静かに里子に説明を始めた。「この小石、模様がすごく綺麗でしょ?でも、よく見ると傷がたくさんあるの。見る人によっては、それが傷に見えるかもしれないけれど…」と、彼女は小石をじっと見つめた。


「私がこれを見たとき、傷だらけでも必死に存在しようとするこの小石の強い意志が感じられたんだ。どんなに困難な状況でも、精一杯生きようとする力強さが、私にすごく感動を与えてくれた。だから、これを里子に渡したいと思ったの。」


里子は、莉子の言葉を静かに聞きながら、小石を手に取った。その瞬間、里子の目に涙が浮かんできた。小石の模様を見つめながら、彼女はその意味と莉子の気持ちを深く理解し、感謝の気持ちが込み上げてきた。


「ありがとう、莉子。この小石…すごく意味が深いね。」里子は涙を拭いながら、小石を優しく握りしめた。「これを大切にするよ。私も、どんなときでも前を向いて、強く生きようと思う。」


里子の声は夏の陽射しのような光を莉子に届けた。莉子は里子を抱きしめて涙をひとつ落とした。

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心の青空、ふたりの夏 紙の妖精さん @paperfairy

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