第4話

莉子と里子は、夏の夜空の下、浴衣を着てお祭りに出かけた。二人の浴衣は夜の灯りに映えて、花火のように美しく輝いていた。莉子の淡い紫色の浴衣には桜の模様が、里子の青い浴衣には波の模様が施され、どちらも夏の夜にぴったりの装いだった。


お祭りの会場には色とりどりの提灯が灯り、夜空にきらめく花火が華やかさを加えていた。人々の笑い声や屋台の賑やかな音が、二人の気持ちをさらに高揚させた。二人はまず、金魚すくいやわたあめの屋台を見て回り、楽しそうにおしゃべりしながら歩いた。莉子はりんご飴を買い、里子は笑顔でそれを眺めていた。莉子と里子は、射的や金魚すくい、たこ焼きの屋台を楽しみながら、時折目を合わせて笑い合っていた。


「これ、すごく美味しいよ!」莉子がたこ焼きを頬張りながら言うと、里子も満面の笑みで頷いた。


祭りの喧騒が徐々に静かになり、夜が深まるにつれて、二人は神社の境内へと足を運んだ。神社の静けさは、お祭りの喧騒とは対照的で、二人を穏やかな気持ちにさせた。境内には、心地よい風が吹き抜け、涼しげな空気が広がっていた。静かな神社の境内には、ほんのりとした灯りがともり、周囲には柔らかい雰囲気があった。二人は、祭りの余韻に浸っていた。星空が広がり、夜空に輝く星々が浴衣の模様のように美しく見える。


「ここ、気持ちいいね。」里子が一息つきながら言った。彼女は石段に腰を下ろし、ふわりと広がる浴衣の裾を軽く押さえた。莉子も隣に座り、しばらく目を閉じて風を感じた。


神社の灯りが優しく二人を照らし、周囲の木々が葉擦れの音を立てていた。星空が高く広がり、空気はひんやりと涼しい。


「こんな風に、たまには何も考えずに過ごすのもいいね。」莉子がぽつりと言うと、里子は穏やかな表情で頷いた。


「うん、そうだね。」里子の言葉には、心からの満足感がこもっていた。


「今日、一日楽しかったね。」里子は優しく微笑みながら、空を見上げて言った。「莉子と一緒に来られて本当に良かった。」


「私も楽しかったよ。」莉子は微笑み返し、里子の手を優しく握った。「また一緒にね。」


「うん、!」里子は頷きながら、浴衣の裾を軽く整えた。

夜がさらに深まる中、浴衣の柄が風に揺れるたびに、軽やかな音が微かに響き、星空の下での特別なひとときを演出していた。

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