第9話 拠点到着

「もう少しで到着というところまで来ましたが、お二人に滞在していただく場所につきまして、先にご説明したいと思います。」

「ええ、お願いするわ。」

私達の世界にある魔道具についての話が一段落したところで、クサカベが改まった様子で話し始める。


「お二人はこの世界に興味を持って来てくださったということで、賢者さん・剣士さんとお知り合いの方々・・・私の知人でもありますが、皆で色々と考えた結果、こちらの旅人が泊まるような宿よりも、ごく普通のお家を体験していただくのが良いのでは・・・という結論に達しました。まず、この方針に問題は無いでしょうか。」

「ええ、もちろん構わないわ。私達もそういうところを知りたいと思うし、わざわざ案内までしてもらって、贅沢を言うつもりなんて無いわよ。」


「それを聞いて安心しました。そして、話の続きなのですが・・・場所は私の家です。」

「・・・そ、そうだったの。世話をかけるわね。」

「クサカベさん・・・あなた、色々と押し付けられているわけじゃないわよね?」

ここまで聞くと、目の前の少女が何か心配になってきてしまう。


「も、もちろんです! 消去ほ・・・げふんげふん、私の家が最適だと皆の意見が一致しましたので。」

「そ、それなら良いけれど・・・」


「それに、賢者さんが色々と気を遣ってくれましたので、私は本当に大丈夫ですよ。あっ、ちょうど着きました!」

クサカベが足を止めたのは、周囲にあるものと大きく変わらない、確かにこの辺りで一般的なものだろうと感じられる住居の前。ただ・・・・・・ひいかと目を合わせ、うなずき合う。


「ねえ、あなた。これは家に見せかけた、『賢者』の隠し拠点か何かなの?」

彼女の力をよく知る私達には分かる。ここにはその魔力がたっぷり込められていると。


「そ、そんなことはありません。ここは正真正銘、私の家ですが・・・その、多少のことがあっても大丈夫なようにと、賢者さんが色々・・・」

「・・・あの子は私達を何だと思ってるの?」

「さすがに模擬戦で家を破壊した記憶は無いのだけど・・・ああ、でもここは、庭があまり広くはないのね。」

「ちょっ・・・! ご、ご滞在中はなるべく遠慮していただけるとありがたいかと・・・皆の心の平穏のために。」

まあ、さすがに他人の家でそこまでするつもりもないけれど、そうなった時の被害まで想定したような『賢者』の魔力には、思うところも出てきてしまう。


「実のところ、この世界のお家に色々するのは賢者さんも初めてなので、興が乗ったとか・・・」

「ああ、そういうことなら分かるわ。」

ひいかが武具を振るう時になると目を輝かせるように、あの子も魔法が大好きなようだから。


「そんなところだとは思ったけど、ここまでしたのなら、私達への挑戦とも受け取れるわよね。破れるものなら破ってみろと・・・」

「そういう話は何一つ聞いてませんからね!? 庭のお花とか吹き飛んだら、私本気で泣きますからね!?」

どうやら庭にも、少女の大切なものがあるようだ。ひいかの行動には充分に気を配らなければ。

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