第10話 交流とお茶

「それでは、ここで履き物を脱いでください。」

「中はこんな風になっているのね・・・木で出来ているところが多いのかしら。」

小さな門をくぐり、扉をがらりと開けて、一段高い家の中へと上がってゆく。


「はい。壁などは専門の人達が色々工夫していると思うので、私も説明するのが難しいんですが、主要な部分が木というのは確かです。」

「私達の所と似た部分もあるけれど・・・これがこの世界の家なのね。」

木の表面を滑らかに加工しているらしい床を歩きながら、ひいかが辺りを見回して言った。


「あー・・・正確にはこの地域の、ですね。家は場所によって特色が出ると聞きますし、この辺りで昔からあったものに、別の地域と交流が出来て取り込んだもの、あとは技術の進歩や流行り廃りもあって、色々混ざっていると思うので、私ではちゃんと説明できる気がしません・・・」

「なるほどね・・・こちらでも東西の交流が盛んになって、西のほうは南との通商路まで生まれて、新しいものが色々と入ってきている感があるけれど、こちらの世界も同じようなことがあるのね。」

「ああ、何となく規模は違いそうな気がしますが、それは確かだと思います。」

今の会話で察した様子のクサカベだけど、それだけで分かるような情報を持っているのか、話を遮らずに済む時に聞いてみたい。



「まずは、居間にご案内しますね。お茶を出しますので、少々お待ちください。」

「ええ、ありがとう。」

「こちらの世界でも、そういう文化は共通しているようね。」

「客人が来たら石とか投げて歓迎する世界があったら、少し恐くない?」

「そ、それはそうね・・・」

ひいかと軽い会話を交わしていると、クサカベがこの世界のお茶を持って戻ってくる。


「・・・! これ、すごく美味しいわ。」

「クサカベさん、あなた出来るのね。」

それを一口飲んで、私達は揃って驚きの声を上げた。


「あっ・・・それは大変ありがたいのですが・・・お湯の具合には多少気を遣いますけど、逆に言えばお湯に入れるだけで、誰でも作れるようになっているんです。」

それを聞いて、クサカベが少し恥ずかしそうに答える。


「あら、お湯の熱さを上手く調節するのも大事と聞いたことがあるわ。」

「ええ、きっとクサカベさんは上手く出来ているのよ。」

「ああああ・・・難易度のイメージがだいぶ違ってる気がする・・・ただ、もう一杯入れて説明するのもあれだから、また別の機会に・・・」

少し頭を抱えて何かをつぶやく様子が見えるけれど、ともかく美味しいお茶を楽しめるのは良いことだろう。

しばらくして諦めた様子のクサカベと共に、この世界で『紅茶』と呼ばれるお茶を飲んで、一息ついた。

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