第8話 道具類と連想
「さっきまで乗っていた『バス』を小さくしたような乗り物も、本当に多く使われているのね。」
再び徒歩の旅となったところで、柵の向こうを走り抜けてゆく様子を眺めながら、ひいかがクサカベに話しかける。
「はい。あれは個人用で、バスよりもずっと多く走っているはずです。」
「個人用・・・数が多いから確かにそうなのでしょうけど、この世界の人達は、あんなものを簡単に手に入れることが出来るというの?」
「うーん・・・・・・まず、あれの値段も、性能や名の知れた生産者かどうかなどで、本当に幅が広いんですが・・・多くの人にとっては、安い買い物ではないと思います。
ただ、一度買えばそれなりに長く使えますし、何より便利ですので、頑張ってお金を貯めて購入する・・・といったところですね。」
「ああ、なるほどね。私達の身近なところで言えば、手入れすれば切れ味をあまり失わない、質の良い武具を購入する感じかしら。」
「ひいか、それ自体は間違っていないと思うけど・・・」
「い、異世界を経験した人達って、どうして戦いを基準にして話すことが多いんでしょうか・・・」
「あ・・・・・・」
クサカベがまたしても不安そうな表情になっているけれど、もう遅い。
「クサカベさん、悪かったわね。私達が居るところでは、どうしても盗賊とか危険な生き物が出やすいのよ。ここはそういった心配が無い場所のようだけど。」
「ああ・・・こちらでも場所によっては、危険な動物はそれなりに・・・でもお二人、熊とか瞬殺しそうですよね。」
「あら、そんな動物がいるなら試してみようかしら。」
「ひっ・・・! こ、ここからは遠いので、今回はどうかあきらめてください・・・!」
・・・私も興味が無いといえば嘘になるけれど、この少女の反応を見る限り、気軽に出来ることでも無さそうだから、自重しておきましょう。そもそも、戦いに来たわけではないのだからね。
「ま、まあ、武具だけではなくとも、さっき言っていた『名の知れた生産者』というのは、魔道具などに言えるわね。質が良いことが保証されているようなもので、値段も高くなるという感覚なら分かるわ。」
「あっ! そういう話題は楽しそうです! こちらの感覚からすると、まず『魔道具』というのが気になってしまいますが。」
「魔道具も本当に幅が広いのよね・・・一番身近なもので言うと、魔力さえあれば照らせる灯りだったり、火を出したり温めたりする道具もあるかしら。
あとは、『賢者』と同じ方面での知り合いに、魔道具を弄るのが大好きなのがいるけど・・・」
「ひいか、その話題は・・・!」
「そいつが愛用している魔法を撃ち出す型のもの、うっかり森に向かって撃ったりすると、射線上の木々がなぎ倒された跡が残るのよね・・・」
「やっぱり異世界恐いじゃないですか・・・!」
うん、それを否定するのはもう無理そうだ。
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