第4話 予定調和の破壊者

「それでは、お二人に滞在していただく場所へ移動しますが・・・驚かせてしまったらごめんなさい。」

「ふうん・・・?」

『公園』と呼ばれているらしい、この世界の人達にとってのちょっとした憩いの場から、案内人のクサカベに連れられて歩き出す。

これから起きることを予測したような言葉に、ひいかが対抗心を燃やし始めたようだけど・・・


「あら、地面の様子が変わったわ。これは石・・・なのかしら?」

「えっと・・・石は確かにそうですけど、油とか色々混ぜて、こっちの乗り物が動きやすいように作られたものです。そして、ちょうどやって来ましたあれが・・・!!」

クサカベが示す先で、初めて目にする存在が走り抜けて行く。なかなかの速さだろうか。



「ああ、『賢者』が言っていた、魔力は使わないけれど大きな魔道具のような印象の、人を乗せて動く箱かしら。」

「ええ。聞いていた特徴と一致するわね。」


「・・・・・・あの、もしかしてご存知で?」

「ええ、そうね。」

「ああ、悪かったわね。此処に来ることが決まる前に、ひいかが『賢者』を質問責めにしたことがあったのよ。

 あまり話すつもりは無かったようだけど、特徴的な違いとして、少しだけ情報をくれたわ。」


「いやああああ! ドヤ顔で教えようとしていた私が馬鹿みたいだあああ!!」

クサカベが頭を抱えて崩れ落ちた後、「てんぷれはしんだ、てんぷれはここにしんだのだ・・・」とつぶやいている。異世界の言葉は分かりにくいけれど、どうやら予想を外したことで、精神的な負荷をかけてしまったようだ。



「あの、クサカベさん? 確かに私達はあれのことを事前に聞いていたけれど、ひいかは実際に目にして楽しむ中で、平静を装っているわ。だから元気を出してちょうだい。」

「ちょっ・・・! みいか、何を言っているのかしら?」

他人にはともかく、私には丸分かりだからね? さっきの対抗心が素直に喜ぶ邪魔をしているようだけど。


「ほ、本当ですね。もしやヒカさん、ツンデレの素質あり・・・いや、これ面と向かって言ったら失礼なやつ・・・」

「あら、何か言ったかしら?」

「い、いえ、何も・・・」

言葉の意味は分からずとも、何かを感じ取ったひいかが軽く威圧を発し、クサカベがぶるぶると震えているけれど、私にも気になることはある。


「クサカベさん、あなたもひいかの表情が分かったの?」

「いえ、明るそうな感情の色が視え・・・・・・な、何でもありません。」

「は?」

「うん?」


「あなた、やっぱり力について詳しく・・・」

「ぐ、偶然視えただけですから! 本当に大したことありませんから!」

気配探知で悪意を判別できる人は複数知っているけれど、人の感情を色で視認するなんて力は、聞いたことがない。今は話してくれそうにないので、後で探りを入れてみるとしよう。



「さて、これからの移動のために、先程のあれが乗り合い馬車のようになったものを使うのですが・・・私達はこの地の法に向き合わなければなりません。」

「「え・・・?」」

そうして気を取り直したところで、クサカベが物騒なことを言い出したけれど、異世界を旅するというのは、やはり簡単にはいかないのだろうか。

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