第3話 異世界の力

「えっと・・・いきなり威圧してしまったのは本当に悪かったけど、あなたの力が気になるのは確かなのよ。差し支えの無い範囲で、教えてもらえると嬉しいんだけど。」

謝りつつも、簡単にはあきらめない女王様が、クサカベと名乗るの少女の力について、聞き出そうとしている・・・私も興味がないといえば嘘になるから、無理に止めはしない。


「そ、そうですね・・・私は偶然、力を授かったようなものなんですが、簡単に言えば『視える』力です。」

「視える・・・?」


「はい。今のお二人は、この世界の人達に認識されないよう、賢者さんが力を使っていると聞いていますが、私はそうしている『力そのもの』がうっすらと視えるんです。だから、お二人を見付けられたんですよ。」

「なるほどね・・・あなた、うちの国に来ない?」

「ふえっ・・・!? まさかの異世界スカウト? お、お気持ちは嬉しいですが、こちらに家族や友達もいますので、ごめんなさい!」


「あら、残念ねえ。」

「こっちの住人を連れ去ろうとするんじゃないわよ・・・まあ、来てくれたら面白いとは私も思うけれど。」

「あれ、味方がいない・・・?」

クサカベの顔が不安そうになってきたので、そろそろ止めたほうが良いだろうか。


「ちなみに、賢者さんが本気を出せば、私からも視えなくなるので、今は程よい感じに調整してくれているそうです。だから、私自身は本当に大した者じゃないですからね・・・?」

「ああ・・・」

「あの子なら、いくらでも出来そうね。」

何か逃げ道を作られた気もするけれど、その話自体は本当なのだろう。私もこの世界の感覚を掴めば、自力で気配を消せるようになるかもしれない・・・



「ところで、今の話だとあなたは『賢者』とよく話しているのかしら。」

ひいかが興味津々という表情で尋ねる。確かに、彼女が・・・いや、間違いなく『剣士』も常に一緒だろうから、彼女達がこの世界でどんな風に過ごしているのかは気になるところだ。


「えっと・・・実は、私自身はあまり無くて、今回お二人がいらっしゃることの説明を受けた時が、一番話したと言っていいくらいです。

 私の師匠みたいな人であれば、もっと話していると思うんですが。」

「あら、そうなの・・・って、あなたにも師事している人がいたのね。」


「はい・・・私が力を授かって間もない頃に偶然出会った人で、自分だけではどうにもならない時に相談したり、お手伝いを通して試練を与えていただいたりしています。」

「あらあら、優しい師に出会えたのね。」


「優しい・・・? えっと、厳しくて時々優しくて、やっぱり厳しいくらいですかね。」

「ああ・・・何か想像はついたわ。」


「・・・あれ? もしかしなくても今オンラインだった? 私、終わったんじゃ・・・」

一瞬、少女の表情が固まり、私達の知らない言葉をつぶやいたが、どうやら一連の会話や行動に、良くないものがあったようだ。


「あら、まずいことになったの?」

「だだだ、大丈夫です、今のところは。」


「つまり、後になればその限りではないと。」

「あはははは・・・・・・」

この少女にも暑さを和らげる魔法は効いているようだが、冷や汗らしきものが流れ出している。その師匠は、それほどまでに恐ろしい存在なのだろうか。


「もし良かったら、あなたの師にも会ってみたいわね。力も見せてもらえたら嬉しいわ。」

「えっと・・・私だけでは決められないので、後で相談してみますね。それでは、そろそろ移動しましょう!」

空元気で笑っているように見える少女が、少し心配になったけれど、ここに留まり続けても仕方ないので、後に続き私達は歩き出した。

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