第2話 案内人

「は、はじめまして。これからお二人をご案内させていただきます、クサカベと申します。」

この世界の住人らしい少女が、緊張した様子で挨拶をしてくる。見る限り、初めて会った頃の『剣士』や『賢者』と同じくらいの年だろうか。


「お出迎えありがとう。私は・・・ヒカと呼んでちょうだい。こっちはミカよ。」

「ミカと申します。どうぞよろしくお願いします。」

女王として挨拶をする時の正式な名前は論外として、どこまで砕けたものにするか逡巡した様子が見えたけれど、落とし処は見つかったようだ。


「ヒカさんと、ミカさんですね。こちらこそ、よろしくお願いします。」

少女が丁寧に頭を下げる。どうやら、この地の礼儀は私達が知るものと共通する点があるらしい。クサカベという響きも、隣国でその名を持つ者がいたはずだし・・・


「それでは、早速ですがこちらの世界で滞在していただく場所に、お二人をご案内しますね。」

「ああ、少し待ってちょうだい。」

制止するひいかの顔に笑顔・・・これは良くないやつだ。いや、それに至る原因が無いわけでもないけれど。



「クサカベと言ったわね。あなたは一体何者なの?」

「はい・・・?」


「ここに来てから、私達をしっかりと認識した者は誰も居なかったわ。ただ一人、あなたを除いてね。只者ではないのでしょう? 力を持っているのなら、私に見せてもらえないかしら。」

「・・・!!!」

十数年前、私達の国が存在する大陸に危機が訪れた時、王女という身分を隠して大いに戦果を上げ、王位を継承した後も有事の際は自ら武器を手に前線に立つ、一人の戦士としての気迫が、クサカベと名乗る少女に向けられる。



「ぴいいいいいっ!!! ご、ごめんなさいごめんなさい・・・いや、何も悪いことしてませんけど、ごめんなさい!!」

そして、最初から殺気など感じさせなかった少女は、悲鳴を上げて震えながら、地面にしゃがみ込んだ。


「何やってるのよ、ひいか! 力があっても、戦えるかどうかは全く別の話じゃない!」

「みーか、痛い痛い・・・うう、悪かったわよ。もし力比べでも出来たら、楽しそうだと思ったんだけど。」

ひいかの頭をぎりぎりと指で抑える。本当にこの戦闘大好き女王は・・・! 足元で『いせかいこわい、いせかいこわい・・・』とうわ言のようにつぶやく少女を助け起こし、全力で謝罪する。


「うちの馬鹿が本当にご迷惑をおかけしました・・・!」

「ちょっと、みいか! その言い方は酷すぎない?」

「はあ? ここに来てからの自分の行動を振り返ってみなさいよ。」


「あわわわわわ・・・だ、大丈夫ですからお二人で喧嘩しないでください。余波で私が死んじゃいますから・・・!」

「「あ・・・・・・」」

いつもはあと数回の応酬くらいで仲直りするけれど、目の前にアロガントバッファローでも現れたかのように怯える少女の様子に、私達は気を取り直してもう一度謝った。

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