孤独のヒーロー
俺がラッシュ・ボルトになってから半年が経った。
ソード・マンティスが倒され、二代目の俺の元に数多くの
ヴィラン共が挑みに来た。
そして今日も一人の子悪党が俺の元に挑みにきたようだ。
「アンタが二代目っていうラッシュ・ボルト?一代目に比べると随分と弱そうになったじゃない…」
路地裏にいた俺は、声がした方を振り返って見ると、そこには黒いスーツを着た女が立っていた。
「ほぅ…奇襲じゃなく、一対一で挑みにくるとはな…礼儀を分かってるじゃないか……」
思わず関心の言葉がこぼれる。
このラッシュ・ボルトに不意打ちを仕掛けた卑怯者はいても、正々堂々と挑みにくるものはいなかったからだ。
「へっ、気に入らないのよ…その武器。ハンマー・フィストを思い出すようで…ね」
黒女は俺の武器を指差して言った。
ハンマー・フィスト死んだことになっている。いくら塗装を変えたからと言って、古くからのファンはこのヒーローが使っている武器を良くは思わないだろう…
「オマージュだよ、オマージュ…」
「殺す…!!」
黒女は俺に攻撃を仕掛けてきたが、間一髪で俺はそれを回避し
額からは血が流れる。
危ねぇぇぇ、毒なんか塗ってたら一発アウトじゃねぇか…!?
俺は頬を思いっきりつねって、血流を一時的に止める。
「大丈夫よ…毒はないわ」
黒女がこちらを嘲笑うかのようにクスクスと笑う。
にしてもめちゃめちゃ速いな。おそらく皮膚を裂かれた感触としては、爪型の武器だろうが、正直何も見えなかった。
俺はボルトスマッシャーをすかさず構える、と同時に黒女は爪でさらに追撃してきた。それを俺はボルトスマッシャーで受け止める。
「舐めんなよ…」
俺はハンマーで奴を思いっきり空中に吹っ飛ばす。
「
空中にいる黒女に向かって俺は、自身を回転させながら攻撃する。
「はっ!!当たるわけないじゃない…」
黒女は当然とばかりに後ろに交代しながら地面へと逃げる。
「これで最後だと思ってるんなら、随分と滑稽だな」
俺は回転したままハンマーを黒女に向かってぶん投げた。
「何!?」
黒女は咄嗟に爪でハンマーを受け止めるが、投げのハンマーの威力は凄まじく、徐々に押されているようだ。
「さて、トドメだ」
俺は地上へと着地すると、黒女が受け止めているハンマーを思いっきり押し込んだ。
「
爪で支えられなくなったハンマーが、奴の体に当たったか当たらないかの所で止まると、奴はばたりと倒れ込んだ。
「何…をした…?」
やっとのことで言葉を紡いでいる黒女に俺は、特別に教えてやった。
「体を電気で麻痺させてるんだよ。しばらくすりゃあ動くようになる。
暇つぶしには楽しかったぜ…そいじゃあな」
俺は倒れている黒女にそう言い、立ち去ろうとした。
「行かせるかぁ…」
俺はその言葉を聞き振り向いてしまった。
「行かせるかぁ…!!」
黒女が懐に仕込んでいた投げナイフを投げる。
「マジかぁっ!!」
この距離じゃ避けれん…!!
投げナイフは俺の目の前を通り過ぎ、俺が被っているマンティスの仮面に当たった。
仮面は割れ、外の景色がよく見える。
「ハンマー・フィスト…?!」
やべっバレた!!
俺はきびすを返して、その場を逃走する。
後ろから黒女の声が聞こえた気がしたが、そんなのどうでもいい。
他の誰かに見つからないうちにトンズラしなければ!!
俺は闇夜の街を掛け抜けていった。
灰色のヒーロー ファンラックス @堕落休 @fanracx
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