幕間:聖人少女の回想

 本日二話更新です! こっちが二話目ですのでお気をつけを!

 幕間は基本的に他者視点になりますので、読み飛ばさないようお願いします!

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「いってらっしゃい!」

「うんっ、行ってくる!」


 皇都の中心に存在する大聖堂の広場。

 そこに集まった聖教会の席次聖人セイント――同僚たちに送りだされ、まばゆい光の中に消えていく一人の少女がいた。


 その現象は、足元に輝く魔法陣によるもの。

 つい先程出現したそれは、異世界から開かれた召喚門ゲートだ。


 この場の者が普通の人間なら、慌てふためいただろう。

 しかし彼らには、絶対なる預言をする巫女がついている。


 預言と一分一秒違わぬ時刻に現れた召喚門ゲートの光と、魔力の奔流が最高点に達したとき、その世界から一人の少女が消え去った。


 ――次に彼女が見た景色は、世界各地を冒険した彼女のよく知るものだった。


 ダンジョン。それは、創造神が作り出した魔の迷宮。魔王を縛る鎖。

 巫女から「異世界に召喚される」と聞いていた彼女は、当惑せざるを得なかった。

 

 そこでふと、目の前で呆然と立ち尽くしている少年に目が行く。

 黒髪黒目で中肉中背。貴族らしさもない。恐らく、なんの変哲もない平民なのだろう。

 服装は少し知らないものだが、ここが異世界ということを知っていた彼女にとってそれは驚くべきことに値しない。

 そして、彼が自分を召喚したのだと思い当たる。


 しかし、こちら側が一方的に事情を知っているとなると警戒される恐れがある。今は召喚主であるこの少年と友好的に接するのが重要だ。


「——こ……ここは……?」


 そんな声を出し、状況を理解出来ていない様子を表す。


「っ……!?」


 少年は驚いたように目を見開き、彼女の姿をずっと見ていた。

 顔から胸元――服装も見ているのだろう――、そして下半身。


 目線の動きから一通り見たと推測し、


「あ、あの……そんなにジロジロ見られてると……恥ずかしいんだけどな」


 と会話を切り出す。

 実際はこれより数段酷い、値踏みするような下卑た視線の雨で数時間パーティーをしたことがあるので、それに比べれば恥ずかしさなどないに等しい。


 どう反応するのだろうか、と考えていると、「ごっ、ごめんなさい! あまりにも綺麗でつい……」などと下手に出たような返答が返ってきた。


 最近は傲慢な人間や、高貴な人と話すことが多かった彼女にとってどこか新鮮に思えた。


「そ、そう? そんな慌てた様子で言われたことなんてないから、なんか新鮮かも」


 今度は嘘偽りない返答。だからなのか、顔が少し熱いように感じた。

 もしかしたら、ドキドキしているのかもしれない――なんて事を考えて、心の中でかぶりを振った。


「――そ、そうだ。名前……まだ名前を聞いていませんでしたよね! もしよければ聞いてもいいですか?」

「分かった。じゃあ改めて」


 どうせならかっこつけたい。

 そんな思いが胸中にうずまき、伯爵令嬢としての、S級冒険者としての、聖人としての「自分」を出す。


「――私の名前はシルフィア・アヴァイセル。異世界ではS級冒険者をやってたんだ」


 どうやら驚いた様子。これは、S級という言葉に対してだろう。


「つ、次は俺だな。俺はレイ朝宮伶アサミヤ レイだ。年齢はまだ15で高校生だ……です」


 彼女――シルフィアも驚いた。

 確かに若いと思っていたが、ここまでとは。


 そして、この年齢で自分を召喚できるという化け物じみた魔力量に戦慄する。きっと、魔力だけで言えばS級に匹敵するに違いない。

 次に〈万魔眼〉をこっそり使って魔力を見ると、まだまだ残っていることに気がつく。8割はあるのではなかろうか。


 ――あぁ、彼の実力はいかほどなのだろう!


 好奇心が、興味が尽きない。無限に湧き上がってくる。


 そうしてシルフィアは、伶をダンジョンに連れていくことに決めた。


 ◇


 ――しまった。この世界が違う場所だというのは知っていたけど、この世界の人の強さについては全く知らないんだった。


 そんな事を思ったのは、私たちがダンジョンを歩き始めてから1時間後――体内時計でだけど――のことだった。


 伶の実力は、農民に劣る膂力と、ゴブリンに満たない剣術。

 素晴らしいほどに初心者だった。

 どうやら彼の話にあった、


「この世界は平和で戦いが多くない。だから俺も戦闘技術は全然なんだよね」


 という言葉は真実だった。誇張も一切なしに。


 ただ、別に才能がないわけじゃない。脳内では何がしたいかを描けているのだろう。身体がついていかないだけのように見える。


 ただ、伶ばかりは責められない。

 なぜなら、また私の悪い癖が出てしまっているから。

 ちょっとした失敗を繰り返す、伶には「ポンコツ」と呼ばれる行動。

 美味と言われるオークを消し飛ばしたのもそれだし、魔力量につられて何も考えずここに来たのもそれ。うずくまって不貞腐れたい気分になるも、なんとか押さえつける。


 そんな悶々した気持ちのまま敵を倒していくこと数十分。


 ついにボスの部屋にたどり着いた。

 ゴブリンキングには魔剣【緑鬼の骸ゴブラド】を使うのがいいだろうと考えた。そうすることで、きっと「彼女」も喜んでくれるはずだ。

 醜い緑鬼ゴブリンの血が、祝杯となるから。


 そんなこんなでボスの強さの検証も兼ねた戦闘が終わり、ボスドロップが出現した。

 中身は技能種子スキルシード――ダンジョンについてはあの世界と同じらしいと考えると、少々珍しい。

 売ればそこそこの値段に、それこそ臨時収入として懐が暖まる程度だ思っていたが、どうやら数億もの値段がつくらしい。


 もしかしたらドロップに関しては違うのかもしれない。主に確率的な面でね。なぜ誤った常識が広がっているのか疑問ではある。


 と、そしたら私の持っていない〈天眼〉をゲットするなんてことが起きた。 

 系統は近くとも能力があまりに違うものだから少し羨ましさを感じる。〈天眼〉持ちが聖人席次セイントにいればいろいろ楽だったのに……

 

 なんて呑気に考えてたら、伶は〈天眼〉で魔族を発見してしまった。

 しかも、かの魔王ルミナス・メモリーディア・デモンナイトの妹という大物。本当にとんでもない。なんという幸運。


 最初こそ警戒されていたが、さらなる幸運が重なってかユーフォスとは無事に仲良しになることが出来た。

 魔族の友だちはこれで5人目くらい。もっと増やしたいと思う。お茶会をするのにも慣れてきたし。


 そして、そんなユーちゃんは最後に伶に対して剣を渡してくれた。


 ユーちゃんは「魔鉱で出来た剣」なんて言ってるが、実際には蒼穹魔鉱グランドサファイアというとても高価で貴重なものだ。魔鉱だけであればあのような美しい蒼い刀身にはならないし、耐久性なども抜群だろう。


 それに、そもそも剣としても美しい。あの白い持ち手から剣先まで、とても美しい――もし売ればかなりの、それこそこちらの世界で言う技能種子スキルシードくらいの値はつくだろう。


 これを渡したということは、きっと、ユーちゃんも私と同じように彼に期待をしているはず。

 

 何にそれを見出したかは分からない。

 でも、「紡がれた運命」を背負い、抱えている私を召喚した彼ならば。


 きっと、大きな事を成し遂げる。


 もしかしたら世界を――この世界も、あの世界も――救ってしまうかもしれない!



 ――そんな淡い幻想とともに、私たちはダンジョンを出たのだった。

 

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