三言目
どこか高くなった青空の下を、宛もなく走り続けた。
変わりゆく季節は、人を物悲しい気分にさせる。
カーステレオから流れる音楽は、よく晴れた秋の空には、どことなく不釣り合いな気がした。
海へ行こう。不意に思い立って、見慣れた道を走る。
翳り始める午後の青は眩しすぎて、寂しさを誘ってくる。
このまま、何処か遠くへ行ってしまおうか。そんな事をよく考える。
全てから逃げて、自由になれればなどと、叶わない幻想を夢見る。
自由とは、一番の囚われの身である。
そう思っては自嘲する私の耳に、波の音が囁くように響く。
砂浜に下りて、何をするでもなく海を眺めていると、やがて日が沈み、星が瞬き出す。
空を埋め尽くす程の星を眺め、何となしに北極星を探す。
その数の多さ故に、北極星の位置が分からず、ため息を吐き出すと、ふとあるところに目が行った。
沢山の星の中に、白く流れる天の川が見えた。
その流れは何者にも囚われず、まさに自由そのものだった。
砂浜を歩く。振り返れば、暗闇の中に私の足跡が残っていた。
その足跡は暗い波によって、あっと言う間に消えていった。
灯台の灯りが、水平線を照らす。遠く彼方に、船が見えた。
夜の海で光を発するそれは、まるで道標のように見えた。
暗い海でも迷う事のないその光は、何だか羨ましかった。
船着場に立って、水平線を眺める。
海風は冷たく、瞬く星は震えているように見えた。
目を閉じて、十秒数える。船が到着するまで、あと僅か。
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