二言目
良く晴れた夏の午後は、綺麗過ぎる青空になる。
その高すぎる青を眺めていると、不意に怖くなり、視線を落とした。
足元には、夏の日差しに焼き付けられた道が干上がっている。
その道はひたすらに続き、まるで、干からびたいつかのあの日のようだった。
どうにもおかしな気分だ。夏はそれだけで、人をおかしな気分にさせる。
長く続く道を走り出す。
工業地帯が続くこの場所は、高い煙突から絶え間なく煙が立ち上る。
その黒煙は夏空に吸い込まれ、何処かへと流されていった。
あの日の夢も、一緒に燃やしてくれないだろうか。ふと、そんな事を思った。
見慣れた高い建物が、管制塔のようだと思った。
夏の青には不釣り合いな程、堂々と立つそれは、移ろう景色を、ただじっと眺めていた。
もうじき、海に着くだろう。
八月の終わりは、何だか物悲しくなる。
短い夏の終わりを告げるように、何処かで蝉が鳴き出した。
相変わらず日差しは強く、干上がった道は暑そうだった。
ここに、今年の夏も捨てていこう。
そんな事を思いながら走っていると、ふと道端に目がいった。
そこには、いつかここに捨てたあの夏の日が、煙草を片手に壁にもたれながら、私を見て笑っていた。
残暑の厳しい夏の日の、国道356号線にて。
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