第62話 鬼修行ッ、カナタ一派!
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押しに献上する+1様より、倫理観ゆるキャラ・ナロちゃんとリルちゃんイラストをいただきました!
(「頭だけモチモチシロネココウモリ」ってなんやねんって感じだったので、補足ありがたや……!)↓
https://kakuyomu.jp/users/mazomanzi/news/16818093086437189726
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――三日後に最上級概念霊【消失】が現れるとわかった。
となれば今は決戦の準備が最優先だ。
例の敵【消失】は、典型的な一撃必殺タイプの相手だ。
しかも範囲攻撃持ち。何でも消し去る極太ビームをぶっぱなしてきやがる。
そこで、
「いくぞ、セツナ、リル。全てはおまえたちを思ってのことだ……!」
「「ひぃ~~っ、愛が重い~~!?」」
天蓋空間【絶し夜咲く月万魔殿】の中。
俺は概念霊装展開状態で空を翔けながら、少女二人に次々と攻撃を繰り返していた。
彼女たちの回避性能を上げるためだ。
「避けろよセツナ? 【人形】【空砲】攻撃補助・殺刃翼五枚、射出」
概念霊【人形】による霊糸接続と、【空砲】による衝撃付与。
それらを受け、超振動した腰の刃が、赤い粒子を放ちながらセツナさんを正確に追いかけた。
「かかかかかっカナタさんの鬼畜ぅ~~! DVあかちゃんッッッ!」
「誰がDVあかちゃんだ」
アホみたいなこと叫ぶセツナさん。
だが氷のスケートボードで自在に空を翔け、攻撃を全部紙一重で回避していく。
すごいなぁこの人。流石は壱號級。オウマが廃人になった未来の霊奏機関重鎮だけある。
「ほら、リルのほうも休むなよ。――付術発動、刃となれ【バイク】よ」
懐から『バイクのハンドルグリップ』を取り出した。
これが媒介だ。俺はグリップを柄のように掲げ、そこに概念霊【バイク】を憑依。
霊力が溢れて形を成し、まるでバイクがそのまま形を変えたような、異形の機械大剣と化した。
タイヤの部分には巨大な
「なななななななにそれなにそれぇっ!? こわすぎるのぉ!?」
「俺の付術の技量はBランク。いよいよ『付術顕装』じみた真似もできるようになってきたわけだ」
未熟な付術では、物体に霊性を宿らせるか、霊をそのまま物体化させるくらいだ。
だが霊の魂を精密に捉えて変形できるようになれば、より自在な武装を生み出せる。
「さぁ、唸れ」
グリップをひねる。
すると大剣内部よりブゥンッッッという音が響き、チェーンが唸りを上げ、刃が猛回転を開始した……!
「ひぃいいっ!?」
「
「絶対痛いじゃすまないのぉーーーーーッッッ!」
リルは四つ足での大逃走を始めた。
速い。影から影への移動能力を使いつつ、俊足での疾走も交えている。
「嬉しいぞ。身体の調子はいいみたいだな」
その背を追いながら笑った。体調改善治療が功を奏したようだ。
以前の戦いでは、身体が弱いからか影移動のみだった。
それだけなら対処は簡単。周囲の影を先んじて攻撃すればいいだけだから、捉えるのは容易だったんだが。
「近づかせない、の!」
彼女の手から鮮血の術式陣が現れ、十三体の赤黒い狼が召喚された。『
そいつらはリルを守るように、追いかける俺に飛び掛かってきた。
「いいなぁ。遠距離型霊奏師として完成しつつある……!」
向上した敏捷性と、足止めにも使える召喚魔術。
さらに月光下での回復能力も含めたら厄介この上ない。
決め手にこそ欠けるが、いわゆる『ターゲット散らし』として見るならうってつけだな。
最上級概念霊【消失】戦でも役立ってくれそうだ。セツナさんも飛行能力があるため期待しているぞ。
「うぅ~、カナタさんっ。近いうちに最上級概念霊【消失】が現れるってホントに本当なんです!?」
「ああ。こいつによれば、な」
『マジにございますよぉ~!』
ぽんっと音を立て、俺の側にネコ毛玉コウモリが現れた。
霊媒師・平賀ナシロ――改め、電子妖精ナロちゃんだ。
『わたくしめの情報統合予想能力を疑いますか、子供用プールさん?』
「子供用プールさんってなんですか!?」
彼女のことは、〝たまたま拾った【電子】の亜人〟と紹介しておいた。
嘘は言っていない。
そもそも平賀ナシロがAI化なんて現象を起こせたのは、自分の憑霊【電子】によるもの。
不知火オウマに殺された際、卵細胞を捧げることで、電子上に産み落としたのが彼女だ。死体という『非生物』に変わった瞬間だからこそ、【電子】と極限まで同調してできた緊急技だとか。
皮肉な話だな。違法な亜人生産をして断罪されたナシロが、最後は亜人になるとは。
『ふんっ。アナタのごとき頭悪そうな豚団子はカナタ殿下の正妻に相応しくありませぬっ』
「頭悪そうな豚団子!?」
『アナタのことですよっ。ホログラムつば、ぺっぺっ』
「ぎゃ~!?」
ちなみに生きていた頃はスマート体型だったらしい。そのためセツナさんには辛辣な模様。
「ころすーーーー!」
『ころすーーーー!』
ドブみたいな口論をする二人。セツナさん、俺の攻撃避けながらしてるんだからすごいな。
「このネコのゲロ毛玉!」
『ネコのゲロ毛玉ですとぉ!?』
「ふん。……まぁ信じてあげますよ。わたくしと同じく、カナタさんを慕う者同士ですし……」
ちょっと赤くなりながらそう言ってくれるセツナさん。
語彙はお嬢様と思えないほど下劣だが、なんだかんだでいい人なんだよなぁ。
だが俺のほうを見るや、「でもっ!」とプキュプキュ怒ってきた。
「カナタさん、最上級概念霊を捕まえようとするのは無理すぎませんっ!? このトンチキあかちゃん!」
「誰がトンチキあかちゃんだ」
霊力変換:雷属性。五指を通して、霊糸接続された殺刃翼の先から電磁レーザーを乱れ撃ちした。
セツナさんが「わぎゃあああああっ!?」と叫びながら完全回避する。アホっぽいのにスペック高いなぁこの人。
「まぁ、俺も困難を言っているのはわかる(最初、そんなつもりなかったし)」
だが電子妖精ナロちゃんに期待されてから気付いた。
もしも成功したら、
だから二人には〝最上級概念霊を生け捕りにする〟と伝えておいた。
「ゆえにおまえたち、無理してついてくることはないんだぞ?」
「「いまさらっ!」」
セツナさんは氷弾を、リルちゃんは血の弾丸を放ってきた。
俺はそれらを咄嗟に防ぐ。まさか反撃までしてくるとは。
「最上級概念霊の捕獲を狙う? しかもたった数人で? なんですかそれっ、滅茶苦茶すぎてワクワクするじゃないですか……!」
「カナタさまについていくのっ、どこまでも……!」
静謐な印象を受ける青髪と銀髪の少女たち。だが二人は燃えていた。
「おまえたち……」
最上級概念霊【消失】、捕獲戦。
それに対し俺は、実力者数名で挑むのがベストだと決めた。
無駄に数を揃えてもビームぶっぱで死ぬだけ。前世で数十名が死亡したのはそれが原因だ。捕獲のために戦いが長引けば犠牲者はさらに増える。
だからこその少数精鋭。
俺をアタッカーとし、他二人にはタゲ散らしに集中してもらうってわけだな。
途中で『八咫烏』で駆け付けるかもだが、彼らとは友誼を交わした。〝俺たちに任せ、他の霊奏師を追い散らせ〟と命じたら聞いてくれるだろう。
無用な犠牲者は増やしたくないからな。
「本当に危険なんだが……」
そう言う俺だが、二人は不敵に笑うばかりだ。
「うふふふ。解決したら栄誉いっぱいってことですよね~! わたくしの実家、霧雨家の名もめっちゃ高まって、レスバで家紋出せば最強になります!」
「オウマおとうさまの娘はやっぱりすごかったって、世間にわからせてやるの……! 北条キララにドヤ顔でつば飛ばしてやるの……!」
私欲メラメラな少女たち。あぁまったく、ずぶとい家族を持ったものだ。
おかげで遠慮なく巻き込めるよ。
「よし。ならば回避能力向上訓練の続きだ。そぉら、逃げろ逃げろ!」
「「えぇ~~ん!」」
泣き喚く彼女たち。しかしアクロバティックに空を翔け地を駆け、召喚した氷武者や血冥狼を盾にして攻撃を喰らわないのだから、流石だ。
「あと一分は耐えてみろよ?(【消失】出現がないにしても、二人には強くなってもらいたいな……)」
これからのニホンは大いに荒れる。
五年後には
一年後には横浜の【ダンジョン】が暴走。横浜市民、五十万人が死亡。
二年後には霊媒結社『黄金の夜明け』により、北海道が【クトゥルフ】系統溢れる異界化。北海道民、五百万人が死亡する。
また北欧商業連合国『ヴァイキング・フリート』が、
そして今回の【消失】戦のように、未来で起きる厄ネタが前倒しになることだってあり得る。
だからこそ、
「やっぱり五分は耐えてみろ」
「「ドSーーー!」」
自身の修行がてら、彼女たちを徹底的に鍛え上げた。
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【Tips】
山田くん田中くん:参號級で合格した二人。ほとんどは
ただまだまだ経験不足なので、今回はカナタに置いていかれる。
悲しすぎて錯乱して「俺たちが女の子なら……!」「女装すればいけるか……!?」とトンチキなこと思ってる模様。
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第五章:【消失】戦準備編、完結!
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