第55話 羽ばたく鴉

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投稿後、前話の【Tips】に、

『シイナさんの反応』と

『〝カナタに率いられて酒を運ばされてる北条キララさんたち〟を見た一般人や使用人らの反応』を追記しました。


一般人ら「うわぁ、カナタの部下になったんだ。写真撮ってネットに上げよ」


キララ「やめてくださいましッッッ!?」


シイナさん「カナチャン――(失神)」

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 晩餐会場にて。



「ふぅ……(しまったなぁ)」



 俺は軽く後悔していた。


 というのも、リルちゃんが狙われているという話から北条キララさんらとの決闘まで、まーーたちょっとキレて頭ふわふわになってたとこあるからだ。


 乱暴なのはダメだよね~。普段の俺なら決闘なんて嫌がっただろうに、ノリノリで受けちゃったよ。



「わっ、わたくし違いますのよ!? 北条キララはオウマ様一筋ですのッ! ここっ、これには事情があって……!」



 などと使用人らに喚いているのは、俺に連れられて酒を届けに来たキララさんだ。


 セーフだったな。

 決闘に勝ってからはどうにか理性を取り戻して、キララさんたちオウマファンの霊奏師ズに『お酒用意させて運ばせるだけ』っていう優しい罰を与えるだけに出来た。


 ふふふ。みんなホッとしたんじゃないかな?


〝カナタくんは全然鬼畜な罰を与えなかった! やっぱり善良なんだ!〟って。


 俺、ナイスカバー。さらに労って善人度を上げますか。



「ご苦労だったなぁ」


「うっ……空鳴カナタ……!」



 おっと、なんか涙目で睨んできましたよ?


 あぁ~なるほど。罰ゲームは軽かったけど、決闘に負けたこと自体は悔しいんですかね。

 キララさん向上心あるなぁ。尊敬しますわ。



「安心しろ」



 俺はキララさんに近づき、軽く腰のあたりを抱いた。

 使用人たちにもわかるようにだ。俺が友好的な人間とわかるよう、友情のハグですわ。



「ファッ、何を!?」


「そちらが求めるならば、また今日のような熱い夜を過ごそうじゃないか?(再戦オッケーだよ!)」


「なぁっっっ!?」



 お、キララさんびっくりしてますね。

 俺の器の大きさに感動しちゃったのかな? へへ。使用人たちもギョッとしてるよ。

〝なんだ、空鳴カナタ、フレンドリーでいいやつじゃん!〟って感じかな?


 じゃあさらにキララさんと仲良く見えるよう、愛称で呼びますかね。



「本当にご苦労だったぞ、キラりんご?」


「キラりんごっっっ!?」



 女の子は甘い物が好きだからね。たぶん気に入ってくれるだろう。

 俺のネーミングセンスが怖いぜ。どうだ使用人たち?



「あ、あの空鳴カナタに、あんな愛称で呼ばせる関係なのか……!」

「気高いことで有名な北条家の女当主様が、もうそこまで堕ちているのか……!」

「北条キララ様のほうから呼ばせたのかな……?」

「当たり前だろ。邪智に優れた空鳴カナタが、あんな大学生のバカップルみたいな脳が膿んだネーミングをするわけないからな……」

「それに比べてキララ様のほうは好条件求め過ぎた結果二十九歳独身だからなぁ。一度恋愛にドはまりしたら、脳が膿んであんな愛称で呼ぶよう迫っても……」

「見た目だけは金髪お嬢様でバスト三桁オーバーくらいパツパツでも、所詮はオウマ様を王子様扱いして追っかけ続けてる二十九歳残念女だからな……」

「いつかやらかすと思ってたぜ……!」

「生物学上、女性は三十代間際が一番性欲高くなる『アヘアヘ期』ですからね」

「残念女が『アヘアヘ期』になった最もIQ低いタイミングを、空鳴カナタは狙ったということか……!」

「これが兵法……!」

「理想の高い女がツラのいい暗黒年下にこまされてパーになるのはあるあるだからな……」

「北条キララを筆頭にしたオウマ様応援勢力が、まるっとカナタの傘下になるとは……!」

「SNSに書くぞッ、『北条キララさん、カナタにメス堕ちさせられてキラりんごとか呼ばせてアヘアヘしてる』っと……!」

「見損ないました、キラりんご様……!」

「それにしてもネーミングセンス終わってますねキラりんご様……!」



 なんか小声でワイワイしてるな。

 まぁ『ネーミングセンスがどうたら』ってのはちょいちょい聞こえてくるから、たぶん褒められてるんだろう。

 ふふんッ。



「ちッ、違いますのよぉ~~~~ッ!? すすすすっ、全ては空鳴カナタの罠で!」


「あぁそうだキラりんご。おまえ、いくら興奮してたからって、ピンク街で襲い掛かってくるような真似はやめろよ(人通り多いんだからさぁ、吉原)」


「ファッッッ!?」



 友達でもちゃんと注意しますよ。

 なにせ俺は善良だからな。友人を叱れる友の鑑ですわ。


 ほらほら。使用人たちも「ピンク街で襲った!?」「空鳴カナタは一応赤ちゃんだぞ!?」「善が邪悪に染められたのではなく、邪悪と邪悪が結びついただけ……!?」と、キラりんごちゃんの非常識ぶりに驚いてますよ。



「う、嘘ですわっ! そういうことじゃなくてっ」


「嘘ではないよな? 襲ってきたよな?」


「それはそうですけどぉっ!」



 お、認めたねぇ偉いねぇ。


 使用人たちも素直さに感動したのか、「事実だったのか……!」「キラりんご様やべぇ……!」「0歳児に欲をぶつける29歳……ッ!」「俺さっきからカメラ回してるけど、この伝説のシーン流出していい……?」と震えているよ。



「あ、あ、あぁぁあ~~~~~! どぼじでごんなごとにぃいいい~~~~~~!」



 泣きながら逃げていく北条キララ。他の霊奏師たちも慌てて駆けていく。


 使用人たちはそんな彼らのファンになったのか、「「「インタビューさせてください! ネットニュースに売りますから!」」」と追っていった。



「フッ(ばいばいキラちゃんズ)」



 ふふふ。わかるよ。

 俺は赤ちゃんだけど中身はオトナだからね。年下にたしなめられたら、理性が納得しても悔しいだろうよ。気持ちはわかる。


 だが明日だ。明日になって落ち着いたら、きっと〝カナタくん、諭してくれてありがとう! 善良!〟と俺を讃えているだろう。

 世間も反省したキラちゃんズを褒めてるはずさ。



「ニホンの未来は明るいな……」



 さ~て。いいことしたしメシ食いますか~!



 ◆ ◇ ◆




「「「カナタ様ぁッ!」」」



 オウマ総帥の席に行く前に、ご飯を取ろうとした時だ。

 周囲からササササササッッッと、綺麗に盛り付けられた無数のお皿が出てきた。


 むむむ?



「「「どうぞ召し上がってくださいませぇッッッ!」」」


「おぉ?」



 そう言って皿を差し出してきたのは、死罪人部隊『八咫烏』の者たちだ。


 おいおいどうしたよ。正直、みんなヤンキーばっかかなぁって不安になってたのに、なんか優しいじゃん。どしたん?



「なんだ、気を遣ってくれるのか?」


「っスッ! カナタパイセンのこと、マジリスペクトしてますッ! あのオウマ信者のキララを支配するとか、マジパネェッスよ! リルも買ってきて兄貴に見せるし~!」



 と言ってきたのは、赤線の入った黒隊服に身を包んだ、赤髪ツインテールの女の子だった。

 快活で明るい後輩系女子って感じだ。



「へへへ。パイセンパイセン……!」



 まぁ両眼はなぜか光のないレイプ目になってるんだが。

 おかげでキュートなツインテールも、もげて落ちたクワガタの頭みたいな印象を受ける。

 こわいよぉ。



「あ、自分は『罪人番号・ハの〇二一』。隊内ではハニーって呼ばれてるッス!」


「ほう、可愛らしい愛称だ。それにずいぶん若く見えるな」



 十代前半くらいか? それで死罪人部隊『八咫烏』行きとかやばいな。



「あはは、若さじゃカナタパイセンには負けるっスよぉ~。赤ちゃんだし」



 それはそう。



「いやぁ、自分半年くらい前はシャバにいたんスけどねぇ。霊奏学園で普通に学生やってたんスけど」


「ほうほう」


「けど……あははっ、ちょっとクラスで〝空気読めない〟って言われて、イジメみたいなのされちゃってぇ。……それで全員爆殺したら、『八咫烏』行きっスわぁ~……!」



 たはぁ~と苦笑しながら頭を掻くハニーちゃん。

 

 うわぁ、そらまた過激なことを。やっぱこえぇよ。

 報復とはいえ過ぎれば悪だな。死罪人扱いもやむなしか。


 だが、



「頑張ったな」


「えっ」



 俺はポンッと、彼女の肩に手を置いた。労いの意思を込めてな。



「よく頑張った。やるじゃないか、ハニー」


「あっ、あぁ~……カナタパイセンは極悪ですもんね! いやぁ、『八咫烏』のみなさんも、むごたらしくよく殺してやったなぁ~って褒めてくれてぇ~!」


「違う」


「え」


「殺すむごさなど俺は褒めない。死体損壊など虫でも出来る」



 そうじゃなくて。



「よく、一人で立ち向かったなと褒めているんだ」


「っ!?」



 重要なのはそこだろう。


 敵は複数、自分は一人。まさに孤軍奮闘の状況だ。


 ――〝探せば味方はいた〟〝ほかにやり方はあったはず〟と言う輩もいるかもしれないが、そんな意見はあとから事件を知った能無しの戯言だ。



「パ、パイセン、何言って……っ」


「褒めている。そしておまえを認めているんだ」


「なっ」



 一人でよくやったものだよ。『超・学園長』のモヨコ先生だって、特號級で世界を回りながら複数の学園の長を務める手前、一生徒の苦境にすぐさま駆けつけることはできないからな。

 結局、当事者の認識が全てなんだ。そして彼女は孤独だった。



「ハニー。追い詰められている現状、おまえの世界は、おまえ一人だけだったはずだ。その末に、凶行に走ったのだな?」


「っ、は、い……っ」


「偉いぞ! おまえは勇者だ!」


「っっっ!?」



 彼女の肩を強く抱きしめる。



「ちょ、やめてくださいよ! 自分は、人を殺したんスよ!?」


「あぁそうだな。でも――おまえは自分を殺さなかった。自殺を考えたことも、あったんじゃないか?」


「っ、そ、それは……!」



 ならば誇るべきなんだよ。

 俺は周囲に披露するように、ハニーの背を押して前に出した。注目させた。

 さぁ見ろ『八咫烏』たちよ。



「おまえたち。何を残酷さなど褒めている?」


『ッ!?』


「違うだろう。彼女の誇るべき点――それは『勇気』であるはずだ!」


『ッッッ――!?』



 残虐さなどどうでもいい。その輝きにこそ目を向けろよ。



「結果は惨劇だったかもしれない。今の社会は彼女を悪だと糾弾しただろう。だが、だがな。この子は一人、たくさんの敵に立ち向かったんだよ。自分の未来を歪ませないために、戦争したんだ。そこを称賛せずにどうする?」


「カ、カナタパイセン……!」



 勇気。すなわち、理不尽な現実と戦おうという意志。


 そこに善も悪もなかろう。ヒトであれば、誰しもが誇るべき概念だ。



「爆殺なんざ重罪だ。社会が責めるのも仕方ない。だが、それ以前の、小さな火……彼女が導火線に付けると決めた『戦う意志』だけは、決して間違いであるものか……!」



 断言しよう。



「自分を歪ませんとする、辛い現実。ソレと戦ったこの少女は、胸を張るべき英雄――!」



 そう訴えると、「あ、ぁぁあぁ……っ!」と、ハニーちゃんは震えた。



「た……立ち向かった自分は、悪くなかったんスか……!?」



 死んでいた両眼から涙があふれる。張り詰めていた力が抜けるように、その場に膝をついてしまう。



「じ、自分ッ……ずっと後悔してて……っ! 『八咫烏』では派手に殺したと褒められたけど、そんなの嬉しくなかったっ! もっとイイやり方があったらと、ずっと考えてた……でも……!」



 ハニーちゃんは力なく笑った。俺をゆっくりと見上げ、「パイセン……!」と呼んでくる。



「自分、爆殺はやり過ぎだったかもしれないけど……」


「そうだな」


「でも――自殺じゃなくて、敵をブッ殺すことを選んだ勇気は、間違いじゃないんスよね!?」



 はっ、愚問だな。



「当たり前だ! 社会がおまえを認めずとも、この空鳴カナタが認めてやる!」


「パイセンッ!」



 感極まって抱き着かれた。

 お~よしよし。い。



「しょ、正直、カナタパイセンのこと、怖かったッス……! でもみんながワルだって憧れてて、それでまた〝空気読めない〟って言われたくなくて……!」


「はは。無理に悪ぶることはないさ。素直に生きればいいんだぞ?」


「はいっ。今はパイセンのこと、素直に大好きっス……!」



 そりゃ光栄だ。大人の女性ならウェルカムだったんだがな。



「よしよし……(この子も死んだんだよな)」



 年間死傷率八割の『八咫烏』メンバーだ。前世じゃ知らずの内に消えたんだろう。

 けど、こんな子も世界にはいると知れた。

 それがわかってよかったよ。



「カナタ様……!」

「カナタ、さまぁ……!」



 涙するハニーをあやしていると、震えた声音が周囲からも響いてきた。

 目を向ければ、『八咫烏』の者たちが。

 悪辣さをまるで誇っているような彼らが、「ああ……あぁ、そうだ……!」と、何かに気付いたような顔をしていた。



「ぉ、オレが最初に殺したのは、親だっ。虐待してくるようなクソ親共だ!」



 一人が零すように告白する。



「それからは自暴自棄になって悪に染まったオレだけど……あの時の〝親を殺して生き延びる〟って決意は、誇るべきモノだったのか……!?」



 刺青にまみれた男が問いかけてくる。ならば答えよう。



「ああ、そうだ。よく頑張って、生きてこれたな? えらいぞ」


「ッ~~!? は、はぃい……!」



 そんなこと言われたの、初めてです――と、彼はその場に突っ伏した。

 


「わ……私も悪くなかったの!?」



 次に女性の声が響いた。



「虐めてくるクラスメート殺して逃げてっ、それでもう何人殺しても変わらないって霊媒師になったのに……私、最初に殺した時の自分を、恥じなくてもよかったの……!?」



 目の隈が酷い女性が問いかけてきた。あぁ答えてやろう。



「そのとおりだよ」


「っ」


「俺がそのときいたならば、庇って抱きしめてあげれたのに、ごめんな?」


「っっぁぁぁっ……! い、いえ、そのお言葉だけで充分です……っ!」



 彼女もまた跪いた。胸元に来た顔を優しく包んでやる。



「カ、カナタ様ぁ……! 自分は逆だ……! 勇気なんて、なかったンだよ……!」



 恥じらいに満ちた男の声が響いた。



「あぁそうだ……親に万引きしてこいって言われたあのとき、オレぁ従った。クソみたいな現実と立ち向かえなかったから、ゴミ野郎になっちまったんだよ……! それに比べたら、ハニーの嬢ちゃんはすげえよ……! オレとは、違いすぎるよなぁ……?」



 大男が、羨望と後悔の眼差しでハニーを見つめた。


 おいおい、何を言ってるんだ。



「おまえも頑張ったんだろう?」


「え……?」


「歪んでしまったかもしれない。けどおまえは、必死に生きてきただろうが。他人を食い物にしてしまったかもしれないけど……でも、自殺だけは選ばずにきたんだろう?」


「っ」


「それだけは誇っていい。おまえは、おまえにとっての勇者なんだぞ?」



 そして、ウアアアアーーーッと、男は子供のような泣き声を上げるのだった。


 おぉ~よしよし、ほれ、撫でてやるから頭かがめろ。



「ぉ、俺は、あのとき襲われてなければ――っ」

「わたしは、親が霊媒宗教で――!」

「わしは、『当主にならねばゴミだ』と育てられ、それで才能ある弟を……っ」



 人生の転換点――悪行の始まりを告白していく罪人たち。


 それは、ともすれば言い訳かもしれない。

 無関係な被害者には聞かせるべきじゃないだろう。〝自分は〇〇をキッカケに悪事を働きました〟――なんて、責任逃れと変わらないかもしれない。


 だが、しかし。



「そうか、辛かったな。おまえたちは頑張ったんだよな」



 事実、どんな悪人にも確かにいるはずだ。

 自分を歪ませてしまった『敵』が。



「なぁ、おまえたち」


『っ』



 俺は、死罪人部隊『八咫烏』に呼びかける。



「安心しろ。説教なんてする気はないさ。俺はそんなに偉くない。だが、だがな」



 罪人ら六十四名。


 隅のほうで真っ白になってるロウガと、なんかブリッジしながら「カッ、カナちゃッ、カナッ!?」とビクビク呻いて覚醒と気絶を繰り返しているシイナさんを除き、俺は彼らに呼び掛ける。



「もしも歪んでしまったことに後悔があるならば。もし、罪悪感が胸をかすめる夜があるなら……そのときは、痛みを胸に、それでも前を向くといい。だっておまえたちは今、尊敬できる生き方をしているだろう?」


『ッ――!』



 彼らははたと気付いたようだ。


 そう。俺が『八咫烏』を晩餐会に誘ったのは、彼らのことを尊敬しているからだよ。


 罪人なのは知っている。悪人だとはわかっている。


 正直怖いさ。でも、頼もしい。



「おまえたちの役目は、凶悪極まる霊媒組織や未知の概念霊に、一番槍となって立ち向かうことだ。それによりどれほどの霊奏師が助かっている? ひいては、どれだけの国民が救われている? ハニーちゃんは、わかるか?」


「えっ、わ、わからないっス……!」


「そうだ、。数え切れないほど、おまえたちは救っているだろうが」



 だから責めんよ。歪んでようが構わんさ。



「おまえたちが歪んでから奪った命。その数よりも、何十倍もの誰かが救われている。そして何より――今を生きる、この俺自身が助けられているんだ。おまえたちは、俺を救ってくれているんだ……!」


『カナタさまぁ……!?』



 だからありがとうと、感謝を伝える。


 すると彼らはさらに泣き濡れた。やれやれだなぁ。



「なぁ『八咫烏』よ。誇るべきおまえたちだが……中には、暴力や残酷さが、死ぬほど好きになった者もいるだろう?」


『っ』



 多くの者が俯く。あぁ、かまわんよ。恥じなくてもいいぞ?



「俺はそれを否定しない。むしろ存分にブチ撒けろと思うよ」


『なッ――!?』



 歪んで抱えてしまった衝動。だがそれも使いようだ。



「おまえたちの人生にも現れたような『敵』。どうしようもないゴミクズ、胸糞悪い組織。そういう相手に対してはな……どれほど惨酷になったところで、誰が困るという?」



 むしろ、想像してみろと彼らに問う。



「天才で、金もあって、何十年もかけて大計画を立ててきた凶悪霊媒師。そいつが人生全てを次ぎ込んだ策略を……爆笑しながら踏みにじってやったら、気持ちよくはないか!?」


『ッ!?』


「あるいは民衆を騙すのもよかろう。本当は暴力が振るいたいだけなのに、〝正義のために僕は戦う!〟だとかペラッペラッッなことを言って、民衆に応援されながら暴行を楽しんだら、気持ちはよくないかぁ!?」


『ッ~~!?』


「それで誰かが救われるんだ! とてもステキな生き方だろう!?」



 彼らはワクワクしているようだ。瞳が希望に輝いていく。



「おまえたちは、誇っていい。胸を張って生きてもいいんだ」



 全ては心の持ちよう一つ。

 自分に誇りを持ち、そして仕事の楽しみ方を覚えれば、きっとモチベーションも変わるだろう。

 それは魂で戦う霊奏師にとって、大きな力になるはずだ。



「おまえたちの始まりの悪を認めよう。これからの悪を認めよう。この俺だけは、おまえたちの味方だからな……!」


『カッ、カナタ様ぁぁああああーーーーーーッッッ!!!』




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【Tips】


『八咫烏』:カナタにワイワイと気安く接触。

だが彼は、『刺激的な悪』――なんてレベルじゃなかった。

自分たちの始まりと、そしてどうしようもない悪性すら優しく飲み込み認めて導き逃げられなくする……まさに『闇』。『真の邪悪』を知ってしまった。

覚醒する。



シイナさん:気絶しては起きるたびに、カナタの尊さに昇天している模様。

話しかけようとするたびに、失神。



カナタくん:全部『善意』で言ってる模様。自分が邪悪とか一切思ってない。


キラりんごちゃん:クソみたいなネーミングを自分でつけたことにされて、人生おわった!


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