第46話 ステータス、オープン!(※一人はオープンする権利もない)


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 氏名:空鳴そらなきカナタ

 年齢:0歳(聖暦2030年4月1日生まれ)

 職業:霊奏師

 所属:未定

 階級:特號級

 霊性:属性・火/水/土/風/雷 霊力量・EX 霊奏経絡量・EX

 技量:巫術・C+ 付術・B 符術・C+ 負術・D+

 憑霊:【人形】、【空砲】、【一反木綿】、【緋々色金ヒヒイロカネ


 備考:空鳴家(従三位)の第三子。素行注意。要殺処分検討対象。

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「これが自分の能力評ですか……(おおおお)」



 渡された高級紙。そこに記された文章に瞠目する。


 階級欄マジかよ……本当に特號級になってるじゃないか。

 いや、今の二周目ボディ的にないこともないかな~と思ってたが。



「ふむふむ(ステータスは全て上がってるな)」



 前世の俺は、

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 霊性:属性・風 霊力量・D 霊奏経絡量・C

 技量:巫術・C 付術・C+ 符術・C 負術・D

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 って具合だったはずだ。


 それが今や属性は全部盛り。

 霊力量は前人未到の計測不可EXで、そこから推察される経絡量も意味わからん量ときた。


 技量こそはまだ平凡の域だが、元々霊奏術の内部制御はどうにも苦手な身だ。平均以下から平均くらいにはなれて嬉しいよ。

 燃費悪かったり『巫術新星』『付術顕装』『符術天蓋』のような上位技が使えなくても、最悪霊力のゴリ押しで単純な相手ならなんとかなる。


 ――まぁ不満があるとすれば、備考欄の『素行注意。要殺処分検討対象』ってとこだけどな!


 俺、悪い特號級じゃないよ……! なんか最近変になることあるけど、みんなの味方だよぉ……!



「うぐぐっ、僕は弐號級か……!」



 兄ミチオも紙を渡されたが、階級欄を見て唸っていた。


 ちなみに彼は先日、オウマの計らいで再試験を受けている。

 ロウガのアホに邪魔されたから当然だな。ただ本人の希望で、



『適当に余ってるプロ霊奏師連れてこい! カナタが倒したんだから僕も倒すっ!』



 と言って、そのまま勝っちゃったんだからホントすごいよ。

 やっぱこの人は天才だ。



「ははは。ミチオ、弐號級でも十分すごすぎることだよ? 普通は肆號級、よくて参號級でスタートするものだからね」



 悔しがるミチオにミチタカ父さんが苦笑した。


 まったく言うとおりだよ。

 スタート段階で弐號級以上と認められるヤツなんて数年に一人くらいだろう。


 一周目の俺? 俺は普通に最低ランクの肆號級スタートでした……。しかも落第寸前でした……。かなしい。



「ふむ……(特に資格試験では実力を厳しく見られるからなぁ)」



 いくらスペックが高くても経験不足。

 わぁ早熟の天才だ。だから雑に高い階級渡して高難度任務与えたらあわあわしちゃって死にました――なんて笑えない。

 ゆえにしばらくは下積みさせるわけだ。



「うぐぐぐぐ……っ。カナタみたいに特號級にとは言わないが、壱號級にしてくれたっていいのに……!」


「焦っちゃダメだよミチオ。概念霊との戦いでは、相手の特性を素早く見抜くことが大切になる。そのためにはいっぱい下積みしないとね」


「むぅ、わかったよ父さん」



 ミチオは頬を膨らませながら頷いた。

 それから俺のほうを引き気味に見る。



「……カナタのヤツは、見抜くスピードも速いしな……」



 あ~~~。そういえばミチオの術式構成を当てたりしたっけ。


 そのへんは俺の数少ない特技だな。

 一周目の俺は低スペックのモブ雑魚だった。

 だから相手をよく視るようにしたんだよ。正確に、そして素早く特性を見抜ければ、弱い俺でも勝機が掴めるからな。



「ちっ。いつか追いついてやるからな、カナタ」


「ええ、ミチオお兄様ならきっとできますよ」



 そう言うと兄は「ふ、ふんっ」とそっぽを向いてしまった。お世辞と思われて不快にさせてしまっただろうか?


 だけど俺は知っている。この人は十代の内には壱號級になった天才だ。

 その才がさらに開花するきっかけがあれば、特號級入りも絵空事じゃないだろう。



「――う、うぅぅ……っ」



 ちなみに、姉のヒナミも兄には劣るも、十分な天才なはず……なのだが、



「あーし、落ちてたぁぁ……!」


「えっ(えええええ!?)」



 ヒナミ姉さん、試験落ちたの!? えっ!?



「なんでよなんでよなんでよぉっ! そりゃシャロには負けたけど、あーしってば天才でしょ!? 鬼つよでしょ!? なのに、なんでぇ……!」



 肩を落とし、ついに彼女は泣き始めてしまった。


 一周目の世界では合格したはずだが……あー、そういえば。



「ヒナミお姉様」


「なによ! アンタあーしより綺麗な顔で無駄に丁寧に振る舞って上位メスマウントでもかまそうとしてんの殺すわよッ!?」



 誰が上位メスだ。てかこええよ。



「落ち着いてください。お姉様が落ちた要因ですが」


「わかるの!?」


「えぇまぁ。お姉様……術、全部披露する前に負けてませんでした?」


「えっ――あああああああああああああッッッ!?」



 ハッと気付いて叫ぶ彼女。両親は「あ~」と顔に手を当て、マロさんは「ほほほほ!」と爆笑しながら茶をグビグビ飲んだ。


 あるあるって感じだわな~。資格試験後半の模擬戦の典型的なやらかしだ。

 ギリギリで余裕のない戦いでほどやっちまうんだよ。



「四種の術を全て見せねばなりませんからね。なにより――【緋々色金ヒヒイロカネ】戦のように、霊奏師になれば、相手を『上手く嬲る』技術も必要になる」



 霊を捕らえたり、霊媒師を無力化してアジトを吐かせたりするためにな。



「だから一発で致命傷を与えてしまえば、勝っても落ちちゃうわけですね。まぁヒナミお姉様は術全部使ってない上でしかも負けたわけですが……」


「うるさいうるさいうるさぁいっ!」



 ヒナミ姉さんはエェェ~~~ンッと泣いて、ヒナコ母さんの胸に飛び込んでしまった。

 むべなるかな……。




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【Tips】


前世のカナタ評価:


上層部「あいつ、弱いはずなのにほとんど怪我せず帰ってくるよなぁ。霊三匹いて汎用性あるし、任務めっちゃ詰め込んでコキ使おう!」

カナタ「ファッ!?」



※結果、無駄に経験豊富に。むべなるかな……。


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※今回短めですみません!

明日から朝更新に変更してみます!

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