パッチワーク≪ツギハギ≫(2/2)
公園は
昼から夕に流れる空と、
空気にほだされた
しかし、
四肢のつけ根から外側へ、色素の濃い肌がすべて
均衡がとれた筋肉質な体つきは照り、陰影、シルエットのどれをみても古典芸術にかなう。
ただし、長い
「どしたの? キョトンとしちゃって」
「なんでもないです。……そのケガ、痛くないんですか?」
「なんでもなくないじゃんっ。前にちょっと、ハードルに
「そうですか」
言葉に続いて、
入念なストレッチと準備体操の後、
ハードルを並べた外側のトラックをぐるぐると周回する。速度はない。ウォーミングアップと、走行姿勢の訓練を
真剣な顔を浮かべる
やがて、
ほとんど
遠くから
「
突然、
「一緒に走ろぉー!」
満面の笑顔からの申し出だった。
がばっ! 硬直する
「なんでえ!」
周回遅れの
倒れた
「ほいっ、さ! 走ろう!」
「ちょ、とっ、
危ない姿勢をひっしに修正し、
俯きがちの
歩幅どころか息の調子も合わない2人だが、
「
「うーん……」
「ダメだよ、
しかし、並走は長く続かなかった。
少しの間、隣を
そのとき、
「大丈夫っ?」
地面に倒れた
この後、
そして、無理やり走らせるようなことをして悪かったと、謝罪の言葉を
「ううん。むしろ、お礼が言いたくてっ。なんだか気が
痛みの箇所を手で押さえ、身体を丸める姿は
「実はさ……わたし、これで3代目なんだ、≪スキン≫」
「えっ! なのに、そんなボロボロなの? あっ――」
驚いたのもつかの間、反射的に無遠慮な思いが口をついて出てしまう
「そうなの! 変だよね。わたしの使い方が悪いんだと思う」
「1回目は『がん』で、2回目は足を痛めて。替えるのに慣れてくるとね、だんだん大事にしなくなってくるんだ。
「
にこにこしている
「怖かったよ。初めては。でもさ、≪スキン≫を一ぺんでも替えると、死ぬってのがないってわかった。……わたしが怖いのは、走るのが好きじゃなくなることだよ」
「どういうことですか?」
「今のわたしの『好き』は、ツギハギなんだよ」
「ツギハギ……フランケンシュタインの怪物みたいな?」
「そんな感じ。最初のわたしも、2代目のわたしも、死ぬまで走ることが好きだった。だから、わたしも何も変わらず走ってる。
……でもさ、『好き』の前に『楽しい』が来てない。わたしが走り始めたとき、もう『好き』があったんだ。それで後から、知り合いみたいな顔して『楽しい』がくっついて来た」
決して所感として述べることはしなかった。
「だから、好きじゃなくなるかもって……」
「うん。楽しくない『好き』を続けられるほど、わたしは強くないんだ。だから、
「勝手にバネになられても……」
「うそうそ。一緒にがんばろうね!」
そのとき、笑い合う2人の後ろ、公園の木陰に座っていた
両親から受け取ったそれは、ゼッケンの付いた大会用ユニフォームだ。
「それ持ち歩いてるんですか?」
「うん! ゲン
「さたん! 佐谷
どういうわけか
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
見学を終え、
そこへ、
父親が顔を上げると、血色の悪い
「ああっ、
立ち上がった父親は
「よかった。帰るまでに力尽きているんじゃないかと、気が気でなくて……」
ところが、
「パパっ、
「うん?
「ちがうよ。
「あ、ああ。お母さんには言っておくよ」
その日の夕食の席では、
風呂でシャワーを浴びるとき、自身のきゃしゃな体を
ソフムに処方された鎮痛薬をとると、ベッドの中に熱っぽさを持ち込み、眠りについた。
夢のような今日の日を、
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