チャプター6 イミテーション(1/2)
医務室のソフムから死の宣告――どちらかと言えば、「早く死ぬべきだという忠告」を
そのあと、いたたまれない感情を処理することができず、部屋から飛び出した。
≪学園≫の廊下を、方向は
傷んだ精神は、おのずと
――何もない。
講義が終わり、本日の役目を果たした
旧時代の教育施設では、今の時分を「ホウカゴ」と呼んだはずだ。
頭の中に、親友と観たいずれかの映画の記憶を思い起こす
ずるずると、畑から
もし、
夕陽が
周囲には、
そのうちの1つ、
また1つは、楽器のメロディー。廊下の窓から見通した先の教室にて、吹奏楽部の部員たちがパート練習に
どこかの教室からも、取り留めのない会話で盛り上がる居残りの生徒たちの声が
永遠と続くような、退屈で雑然とした、しかし確かに
「1年半……」
不意に、口をついて出た言葉。
「どこも悪く、ないのになぁ……」
歩きながら、下を向いて医務室のベッドの上で乱れた統一制服を正す。
首元をおおう薄いピンク色のシルクスカーフ。
卒然、廊下の先に、不思議な光の点があらわれる。
点は
5分と経たない間に、
真っ白い色の過剰な長髪に、白衣を着たあどけない子ども。
低空をたゆたう長髪の毛先も、慣性を
「おや。何を突っ立っているんです?」
「……ふふっ。子どもらしい顔をして。お困りごとですか?」
やがて、標識の意味に気がついたソフム。
「今は終業後。廊下にいては、他のソフムが
緊張感を与えない、あくまでも
ソフムは、医務室をこえた先の部屋で足を止めた。連れて来られた
部屋に入ると、中には看板に違わず、背の高い
加えて、図書室は
「あのっ、先生ここは――」
「なははっ、汚いところで申し訳ない。わたしくらいしか使っていないもので……さて、君はどのような本が好きですか? ゆっくり語らいましょう。っと、少しお待ちくださいな」
不信感を
どうぞ、という言葉の調子で、ソフムは空いたいすを手前へ引いてみせる。
「……
告白する
書籍のタイトルが、つぎつぎ
・『明日からできる! テレパス話法』
・『スパイス農家大全』
・『消化器から見る進化学』
・『プレゼン力が上がるたった13の方法・2038年決定版』
・『
と、字面を読み上げるだけで、誰でもそこに一貫性はないと確かめることができる。
「承知しています。
≪スキン≫が生きる社会、それを動かしているのは、つまり≪スキン≫みずからの信念に他ならないのです」
「なんで、それが本を読むことと関係するんですか?」
「……そう。≪スキン≫は、本来ある見識のみに
いや、むしろ余分な知識は、思考をにぶらせる麻薬であり
ソフムの
「しかし、
空想、映画、論文、ポルノ、WFMOへの批評。すべてです。社会の維持には、人倫統制器の導入だけでよいと判断したのでしょう。だからわたしは本を読むのです!」
「んー? ど、どーゆこと……」
「本を読めばわかります!」
結論として、今すぐに
当初、
どうせ読むなら、
冒頭、主人公の青年は、拾い猫を家に迎え入れる。まだ子猫の気分でいるやんちゃなトラ猫。
もっとも、その家では1匹のハムスターがすでに暮らしていた。
家に誰もいない日、トラ猫は家じゅうを遊び回るさなかにハムスターの住む
そのときの衝撃でハムスターは重傷を負い、家族の誰にも最期を
主人公の青年は帰宅後、事件の顛末を知るや否や、トラ猫を
さらに「こんなやつ
ただし、問題は、青年の横暴ではなく彼の弟が口にしたセリフにあった。
「「許してあげて。ハムスターは、また買ってくればいいんだから」……」
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