チャプター2 スキン(1/2)
何度目かの、空が明いた朝。
頭のベルをもがれた元目覚まし時計が、水鈴の体内時計へ聞かせるように秒針をコチコチと鳴らしている。
部屋の主が起きる時間が、
ところが、
「うぅん、まだ朝じゃない……?」
水鈴は、自身を明け方にいざなった、異なる原因について考察する。
底冷え。
無理な寝相。
夢魔。おもらし。
そのとき水鈴の想像した多くのものは、見えざる手の
これだ!
この下に真相が
スポンジからむしり取った
これが人肌の密閉空間内に生え散らかしていた。
「
水鈴の悲鳴。あろうことか長く白い毛は、突然の声にびくんと跳ね上がり、ベッドの外に飛び出したのだ。
水鈴がよく見ると、長く白い毛は四本足の生き物で、
加えて、見知っただるだるのスウェット姿。
一瞬にして、水鈴の記憶の回路は激しく躍動し、索引、視界にある固有な
そしてその正否は、
「しずり、ん?」
「そーだよ。ぼくだよ」
長く白い毛は肯定する。
左手に前髪をまつわらせ、力強く
白い障害がなくなったことで、人物の表情が光の下にさらされる。
浮かべているものは、子どもらしいはにかみ笑い。水鈴の知る、
しかし、独自な使用感のあるスウェットとは
「……しずりんなら、分かるよね? 水鈴のきくこと」
親友のふりをした――姿はまったくの同一の、反面
「うん」
「水鈴としずりんが、はじめて一緒に観た映画はなぁんだっ?」
まさしくパスコード的な証明を求める。
「えっ、と……」
しずりを
「ああ、ああ……わかるよ。わかってるって! 待って。あー、タイトル出てこない。待って。たしか、沼で暮らす緑色の巨漢がファニーなロバとドラゴン退治に行って、助け出した姫様といい感じになるんだけどしょうもないケンカ別れして暗君に
しずりを貼付した人物は、鬼気迫る表情で頭をかかえながら
正面から対する水鈴も小刻みに
「いい感じって、姫様とロバが?」
「なんでや。だとしたら緑色の巨漢が暗君と……ってことになるじゃん」
「そっかぁ。でも、水鈴、それが最初に観た映画かおぼえてないんだよね」
「……はあ?」
水鈴が緊張感のある表情で、
「なんだったのよ今の」
しずりを貼付した人物は腑に落ちない結果について、ツッコミを入れずにはいられなかった。
そのとき、水鈴はぷっとおかしなラッパをふき出してしまう。
息をすいこむ動作にもふふっ、
しばらく黙していた人物も、水鈴のおかしさに接しているうちにつられてハミングをし始め、水鈴部屋はいつしか、清流輝く河岸にならぶ、心地よい賑やかさに包まれた。
「おかえり……っで、いいんだよね? しずりん」
「違うよ。おはよう、だよ」
その言葉を聞いた水鈴は、ついに眼前の≪スキン≫へ、日月 しずりの
喜怒哀楽の
しずりの胸のスウェット生地にこめかみを埋める
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