Fresh Mate/rial flow Organization
チャプター1 バースデイ(1/4)
それは記念すべき日であるらしい。透見川家のリビングには、あどけない
フリルのないショートケーキ。天面では、動脈を巻きつけたようならせんロウソクの何本かについた炎が気流に揺れている。
「わああっ!」
実際、声というより鳴き声に近い。
「ありがとう、パパ! 今までで一番おっきなケーキ!」
「喜んでもらえてうれしいよ」
父親という人物が感慨をのべる。その手で、
「うん、
「ダメだものね。あとで切ったげるから」
両手に掴んだポトフ鍋をリビングテーブルに「どーんっ!」といって置く。
「ハッピーバースデイ、
「すっごい! やったやった。お母さん大好き!」
「パパも大好きだぞー」
そのまま色々楽しんだ一家。
腹も夜も満ち、ぐったりとした
「
両親のどちらかの呼びかけに、「あい」とよだれ混じりに鳴く
どちらかはそれにそのまま言いつける。
「明日から『入学』だけど、大丈夫かな? 分からないことはたくさんあるだろうけど、時間はいくらでもあるんだから、焦らずにね。友だちを大切にしなさい。おやすみ、わたしの
ソファに転がる
どちらかはそれをしょって、二階の
明かりのない寝床。しばしの後、両親がそろって寝床のそばに一着の服を置いて、
また空が
目覚ましを必要としない、
すると、非常にゆっくりと、光のシルエットのなかに見覚えのある人物が浮かび上がった。
自分だ。
鏡だ。
――いや、誰だ。
「えーっと……しずりん?」
合わせて指差し呼称。直後、人物と目が合う。
人物は
そのため、特段の気まずさもない2人の表情は、いつのまにか、吹き出した笑みに変わっていた。
「グッモーニン、みすぅ(この湿気のある呼び名は、いつの間にかしずりが
「おはよう。今日はなに?」
「だからモーニングコールだって」
しずりについては、軽口をたたくと連動して大げさな身振り手振りをとる、まるで吹き戻しのような落ち着きのない人物であり、およそ寝起きに会話して心地よい相手ではないだろう。
「ぜったい意味知らないで言ってるよね……じゃなくて、本当はなに?」
「はは。なんてね。改めてハッピーバースデイ、みすぅ。今日は≪学園≫の入学式! というのでね、新たな
しずりはきびきびと腰を動かす。ダンスの振り付けめいた動きで、両手に伸ばした1着の服を
それは、昨夜
「統一制服……っ! すごい、
「そうよねそうよね。これから、ぼくが着替えさせちゃるけ!」
「うんうん! お願い!」
しずりは統一制服の肩をもち、貫頭衣の名にふさわしい形で
肩の上で切りそろえられた白髪にはふれない。
腰には巻きスカートを
「ありがとう! すっごいかわいい!」
「かわいいって何だよ」
姿見の前に立つ
「うれしいところ悪いけど、まだ完成じゃないんだよねー」
「ふぁっ?」
言葉を口にしたあと、
しずりはスカーフを
「みすぅさ、
「ありがとう……しずりん。大事にするね!」
上のような一幕があり、以降、
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