か行

流れ来る、鳥を仰ぎ、追いかけて、

夏の日の、終わりを告げる、風ひとつ、

見失い、迷う日差しの、その中に、

揺らいでる、小さな花に、潜む月。


か「花鳥風月」



明け方の、人影ひとつ、見当たらない、

冷えきった、駅のホームに、ただ一人、

来るはずの、電車を待てど、追懐の、

記憶の中に、浮かんでは、

霞んで消える、君の影。


き「記憶行き」

 


晴れた日の、午後の日差しの、その中に、

風を受け、飛び立ち空を、切り裂けば、

夏空の、青に混じらず、消えていく、

見えもしない、堕ちる事さえ、許されず。


く「グライダー」



送らない、言葉を綴り、見つめてる、

宛名の無い、画面が光る、午前四時、

送信の、ボタンはいつも、未使用の、

削除画面、全て消去、さよならと。


け「携帯電話」



力無き、声を紡ぐ、その喉に、

問いかけど、帰るはずない、その答え、

待ち続け、震える呼吸、聞き取れず、

伝えたい、事さえ既に、分からずに。


こ「言葉」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る