五十音式

藤原琉堵

あ行

過ちを、嘆く素振りで、繰り返す、

晴れた日の、午後の日射しの、その中に、

名前のない、花が一輪、揺れるよう、

触れない、その手を伸ばし、引き裂いて。


あ「過ち」



抱きしめた、細い腕の、その中に、

錯覚を、感じる君の、背に触れる、

かじかんだ、指先なぞり、辿れども、

意味もなく、流るる涙は、迷子の灯。


い「色事」



積み上がる、虚像の塔の、頂上に、

座り込む、人影一人、俯いて、

居ない視線、気にして喋る、一人劇、

崩れてく、積み木の山に、埋まる僕。


う「嘘」

 


晴れた日の、午後をなぞり、辿るよう、

片翼の、翼を広げ、飛び立てど、

失速の、渦の中に、堕ちていく、

妄想の、浮かぶ雲の、絵空事。


え「絵空事」



夕闇に、栄える今日の、終焉に、

音もなく、崩れる明日に、重ねれど、

いつだかの、遠き日ひとつ、浮かんでは、

両の手に、溢れて消える、追憶者。


お「思い出」

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