第11話 ネタバレ探検部

「し、しってるの?」

『話してていいことかどうかは別としてですが、知っていることはそこそこ』

「…いや待て、配信されて行事は知っているという、いつものやつの可能性はある」

「なるほど、確かに」

『どこまでが知っていることで、話していいものなのか、ワタクシとして判断しにくいので……まずそこを定義していただかないと、ワタクシめとしても会話はしにくくあります』

「そもそも、そういう命令が全般的にどこから出てきてるのかから、最初から疑問だったんだよ、何でロボがD棟に出入りできてるのかからさ」

『……さっきから黙ってはいましたが…』


 質問攻めに気分を害したのか、ちょっとだけ変わるのを感じる。

 すごいな最近のAIって。


『ロボというの、間違いですので変更を希望します。そしてなんですか、ずっと下に見るような、動けることが偉い、とでも言いたげな過小なものを見る態度は!』

「………えぇ……」

『ここに長く、代々お仕えする特級メイドであるシノに失礼であると誰ひとり思っていただけてない』

「…プライドたけー…」


 内出屋くんも驚くばかり。


『ロボと言うのもなんですか!ワタクシめはこの学園と運命すらともにある、あなた方の誰よりここに詳しい住人です!』

「信じられないこと言ったな!?」

「あなた方に発掘品D053と名付けられそうになった時から、不満なんて数え切れなくあるのですからね!少しはありがたがっていただきたいです」

「発掘品…なの!?」

『まるで、今知ったようなことを、おっしゃられる』


 そうですよ。

 そんな、ちょっとした沈黙。


『……ま、まぁ、それは今はいいのです。ワタクシめもメモリー欠落が多くてしっかり復元するまでは、そちらに提出した情報以上は出ないですから』

「ほうほう、どこかにあるのかそのまとめ…探検部に全くないけど」

「生徒会の引き継ぎ書類にもないですね…教員の間だけでやり取りされていますかね、これは」

「我々にも、当然ですが情報などは伝わりません」


 自主的に勝手にうろついてる自警団に、そりゃあ機密みたいの話す奴はいないよな。

 帰り着いて、あの顧問に問いただす話がまた増えた。

 このロボ…と言うと怒られるので発掘メイドと今は呼ぼうか。

 これの話だけでも一話潰れるのでは…いや、やめよう。

 とにもかくにも、今は。


「うちも切羽詰まってるんです、話してもらいますよ発掘された人」

『その呼び方もちょっとひどいと思いますが!』


 そんな感じで、少しづつ話は進もうとしているのであるが。

 ふと内出屋くん気が付く。

 その発掘メイドだが、ずっと自分のことを話しているようで、ちらちら、何かを伺うような視線を送っている。

 なんだろうか?


『話して……よろしいのでしょうか?』

「「「待て誰に言ってる!?」」」


 そっちの方にみんなで、そりゃ注目する。

 ……そして、目に入るのは、口を人差し指にあてている、探検部、玲穂。

 発掘メイドの背中で運ばれてきた彼女だ。

 これはこれは。


「…そこらへんに権限があるとしたら、私の権限もあるってことだろうから、もう一気に話してくれるかなあ?」

「ナイス先輩!」

「いやぁ、照れるわね」


 とんとん拍子に障害は消え去った。


『ではまぁ…』


 そうして、語られ始める知らない話。

 探検部、津保玲穂は、ある日この発掘メイドがD棟に出入りしていることを知る。

 迷い込んだことはあるため怖いのは知っている。

 行き来するのに必要なものなどを、そのうち探検部には内緒で発掘メイドに聞く仲になった、らしい。

 探検部の常識は重装リュックにフル武装が基本。

 メイド服でさらりと出入りできるなら、それが勿論いい。

 コツがあるに違いない。

 玲穂はそう思ったのだ。

 だが実は違った。

 このメイドがバカ強くて、装備などなくても力で脅威はねじ伏せる。

 生物ではないので、ある程度のものの反応もこれには過敏にはならない。

 さらに独自の侵入ルートもあるが当人の認証でしか通れはしないという。

 玲穂の思惑と全く一致しない結果となり、期待はもろくも崩れる。

 しかし、それなりに仲良くなった気配があり、やれることは手伝うという進展があった。


 そこで出てくる、玲穂の期待、思惑、やりたいこと…。

 探検部の活躍、血で血を洗うバトル、臨場感のある現実かと思う死闘。

 これを手軽に見たい、保存したい!

 とくに血しぶき満載の内出屋君は気に入っていたという。

 ……やばい。

 いろいろやばいが、趣味がまずもう駄目だろう。


「貴澄さんはかっこいいんですぅ…死にそうになっても何の恐れもない、そして死んでるようになって戦う…私はもうこれしかないというほどにぃ…いえ!?その!死んでほしいということは思っていないんですからね!」


 そりゃそうだろう。

 部室で顔合わせるたびに、今日も死んでくれるかなと思われてたら、流石に内出屋君でも心がつらい。

 そして、ついに撮影という手段を獲得。

 撮れたものは満足すぎて今でも歓声が自然と出るのだとか。

 そうなると、このかっこいい先輩を知ってもらいたいと拡散を計画。

 ……その結果がこれだよ!


(こっちに…後輩ちょっとこっちに)

(なんすか先輩)

(う~ん、まずいよねえこれ…状況)

(実行犯ということで犯人は発掘されたロボですと言ってしまって丸く収まりません?)

(配信に関しては一貫して探検部で完結してるよ…どう考えても部が全責任負わされるよ?コレ)

(それ…やばくないですか?)

(だから後輩呼んでこう、内緒で話を小声でね、してるってわけよ)

(か、かといってですよ、証言で本人から確定情報出ているのを何かできるっていうんですか…?)

(生徒会にそのままが流れなければ、つじつま合わせはきっとできるよ、ここを考えよう)

「いや、もうそれは確実に無理なので…ここは、はっきり申し上げなくては…」

「「うっわ!!?」」

 いつの間に後ろにいたのか、生徒会会計。

「残念ですが、ここを私の一存で曲げたり報告しない部分を選ぶことは、残念ながらできません」

「…うつくしくない?」

「その通り」

「終わった……」


 落胆する探検部。決着である。


「自警団のほうは、これでどうするとか、あるう?」

「明らかに危うい情報漏洩、研究などがあれば実力行使はあるのですが…」

「ちょっとちょっと!!!」

「我々は判断する側ではないので…それに、実戦要素の映像を主目的とするのなら、今の市井の反応が作り物と思われている以上、我々としてはそれらの手段や対処が手に入るのは好都合である部分もあります」

「……過激派かと思ったら、意外と柔軟だな」


 内出屋君の見せられた妨害を見るに、全面戦争もあるかと幾分肝が冷えかけていたが、今は大丈夫っぽい。


「なによりD棟のリアルタイム情報など知る機会があり得ない、と言うのが我々でしたので興味深くすらありますよ、教職員にそれらが聞ける立場では、表立ってはないので」

「そういわれるとプラス要素はある気もしてくる」


 なるほど、リアルタイム確認なんて考えたこともなかった。

 が、自警のほうが視野が広そうなのは、どうなんだ。

 少しそんな引け目も感じたりする。


「さて、それでは、それぞれ状況とスタンスの確認…済んだようですね」

「すいません生徒会、魔術部何も聞かれてないでーす」

「何か、今の話で自分たちの立場が変わることありますか?魔法部」

「いや全くないんですけどね」

「そうでしょうとも」


 すべてハッキリとして、罪人が確定したこの空気。

 探検部としては、非常に居づらい。


「そこで1つだけ、私から確認したいことがあるのですが、よろしいか」

「どうぞどうぞ」


 拒否権があるやつが居ようはずもない。


「探検部、食堂ロボどちらでもよいですが、撮影機材…これら、どこから調達したかお伺いしても?」

『ちょうどよく、揃えてくれる方が居ましたので、頂いてお掃除のついでに小分けに投げたりいたしましたよ、それが何か』

「そう、それが……誰か、なのですね」

『生徒会の方です』

「「「ん!?」」」

「美しい返答をどうも、それはこのスマホの顔写真の人物で、D棟に蒔いたのはスレーブ式の超小型カメラ、それで間違いないですか?」


 映っていた人物。


『はい』「あ、どうしてそれを」

「樟恵世華呼……うちの書記が、それらを用意したと」

「あれ!?本当にどういうこと?」

「なんか空気、変わってない!?」

「内輪に疑問は持ちたくなかったのですがね、私は内偵をしていたのです」

「話が見えないなあ」

「映像を見た瞬間に編集も視点もこれだけ用意されて見事である、という点に副会長はいたく感服され、同時に私と同じ疑問を持ったのです…この速さと技術が仮に外部でないなら、誰が作ったのだろうと」

「外部には、そもそも協力者居なかったのか」

「そんな伝手もカロリーも、ないですよぉ」

「それは数日の電波監理とサーバログである程度調べはつくので可能性からすぐ消えましたよ、だから探検部にも強くカマをかける必要はあった」

「あれで演技なの!?」


 知らされる状況がここなのが納得いかない内出屋君。


「拡散も、各種まとめや情報サイトに情報蒔くのがそれは見事でしてね、教職員一覧から徹夜で洗ったりもしたんですよ?」

「そして結果が…」

「焚きつけ、企業の試作段階のあり得ない製品の提供、拡散の大規模戦略…ここが、素人1人の思い付きでここまでになるには足りないのではと、思いませんか?」

「全くそこまで考えてないよこっちは」

「それはもっと美しさを磨くべきですね」

「そうします」

「身内から出るほころびは、何より疑惑のままにするのも美しくありません、そういうことで…」

「ことで?」

「今おそらく聞いていますね樟恵世華呼!これから拘束して事情聴取までは決まっていますので自室にいるように!!」


 こうして…。

 適当な取引をいくつかした結果、生徒会の遊びは秘密にするという条件で、すべてがうやむやになるように処理をされた。

 配信についても、いきなり終わらせるのも不審であること、D棟の映像は今後の危機対策に価値があるという話で続けられることになる。

 もちろん生徒会の映像チェックもこれから受けることになるが。

 なお。

 これに強烈な反対意見も少数あったが、多数決で即もみ消されたことも、一応付け加えておこう。


「……俺の名前で……続けること…ないんじゃない?俺の疑問そんなに間違ってる?なぁ?なあ!?」

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