第5話 死に至る呪詛

「呪い、だと?」

パーティちゃんまつりさんは、ぼくの顔見つめている。

なんの役に立たない無能と思われるか、ひとりで粛々と感染者を、片付けている化け物か。

どちらかで見られることが、ずっとずっと続いている。


可哀想なヤツを見る目で、見られたのは久しぶりだ。


「そう。奴らに『噛まれる』ことで、こちらに呪いがかかる。それが、まるでゾンビにでもなったような状態だ。

理性も言葉も失い、ほかの人間を食おうとする。心臓はまもなく止まるから」

「じゃあ、おまえは、なんかその呪にレジストする魔術を身につけてるってことなのか?」


晩御飯は、ぼくのリクエストした肉だった。

ただし、レトルトの肉炒めで、たぶんどこかの牛丼チェーンの味だ。

それにアルファ米のご飯。


「そうなんだ。実はこの世界を救うために、召喚された勇者がぼくなんだよ、パーティちゃん。」


「ハルアキが、勇者かどうかはともかく。」

パーティちゃんは言った。

「なにがしたい。なにをするつもりだ。」


「学校の外に出る。都心に行ってみるつもりなんだ。」


「電話も繋がらない。」


「だが、ネットは動いている。不思議だと思わない?」


「偶然、だろ? あるいは、この感染症の被害が世界にとって、致命的なものではなく、ネットの関連のインフラは生きてる、と。単純にそういうことじゃないのか?」


「水道もガスも電気もとまって、ネットの中継基地だけが生きてるなんてことがあるも思う?」


「あのなあ、ハルアキ。」

パーティちゃんは、ぼくの紅しょうがを攫って自分の口に放り込みながら、言った。

「おれは、ここで、日々増える感染者をし処分しながら、最後の一人になるまで行きのるつもりだったぞ。」


「ずいぶんと、緩慢な自殺をなさる。」

ぼくは、〆にとってた紅しょうがを奪われて、立ち上がった。


「どこにいく? もう日が落ちるぞ。」


電灯はソーラーパネルが蓄えた分しかない。

校内は真っ暗だ。基本的には、生徒は、ヨルは個室に閉じこもる。そして、まだ自分が今日も人間でいられたことに、感謝の祈りを捧げて、眠りにつくのだ。


「デートだよ、パーティちゃん。マッチングアプリで、マッチしたんだ。すごい美人だよ。」


「誰だ? ほかのコミュニテイのやつか?」


「経済学部棟の虎仙会、花園音音さん。」


「経済学部棟の魔女か。」


「へえ、そんなふうに呼ばれてるのか。それはぼくは知らないんだよ。メッセージをのんどもやりとりして、気が合いそうだったからから合ってみただけだったんだけど。」


「日が暮れてからは、野犬もでる。」

バーテイちゃんは、革のコートを羽織った。

襟から差し込むようにして、鉄の棒をしまい込む。

「俺もいく。」


「ぼくのデートを邪魔するのか?」


「そうだな。多分。向こうもひとを出して来てるだろう。おまえを、むこうに拉致ら れられて終わりかもしれない。」




ぼくは、文句を言ったが、パーティちゃんは強引についてきた。

確かに、むかしは兄のように育ったが、いまはいまだ。

そこまで過保護にされるものごめんだった。


だが、待ち合わせ場所の。

昼間はそれでも、瀟洒な雰囲気のあっまカフェテラスには、カオンさん以外にもふたりの人物がまっていた。


「親の付き添いあり、なの?」

カオンさんが、ガッカリしたように言った。


「そちらも同じようなものなのでは?」

カオンさんの傍にはふたりの女性がいた。

カオンさんよりも背が高く。その手には日本刀が握られていた。


もつひとりは、うんと背が低い。

顔立ちはかわいいが、その半分を眼鏡が覆い尽くしていた。



「“女帝”姫柊さんに、オカ研の岡三ぶ長。」

パーティちゃんが呆れたように言った、

「また、たいした人物がやってきたもなだ。

最近のマッチングアプリの性能はすごいな。」


「そっちは、無敵会の祭さんだよね。」

背の高い女の人が言った。

姫柊さんのなまえは知っていた。


経済学部棟の支配者だ。

頭も切れるし、すごい美人だが、なによりすごいのは戦闘力だ。

食事中に、発症した仲間を、一刀両断で斬り伏せた、とか。


野犬20頭をひとりで、片付けたとか、いろいろと伝説のある。

オカ研の岡サンは、とにかく、ホンモノの霊能力だというもっぱらの評判だった。

それでいて、所属は薬学部。バリバリの理系だった。



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