第十一話

    二十六


「それはそうとして、宿世との繋がりを、説明して貰えないか」

「神の眼を信じられない方のために話すのですね」

「私のためでも良いわよ」

「日本人は、運と云いますが、運ばれてくるから、運なのでしょうか」

「どう云うことよ」

「電磁波に運ばれるならば、蛇行で掻き回されることになりますからね」

「人間の本性に善悪があるから、運にも善悪があり、箱のなかで混ぜ合わされると、云いたいのだな」

「それは私が、反りが合わないと云ったからよね」

「喧嘩の始まりが云い合いだとしても、感情に促されるのが、人間ですから、行き着く先は、殺し合い、となります」

「云われてみれば、感情が心の機能とするから、見境を失くすな。その時は、脳の支配が利かなくなり、無意識のうちに手が出たりもするもんだしな」

「机を叩くことや、足元にあるものを蹴ったりもするわよ。でもその時は、脳の指令がないから、記憶の中の、もうひとりの自分がやっている感じだよね」

「喜怒哀楽と云いますが、記憶と現実が入り混じったものを錯覚という認識下での判断とします。すると、錯覚自体が人間が造り出した、幻となりますよね」

「判るようで判らんな」

「判るように説明してよ」

「?、こうさんは天才と神童の違いを、どのように考えていますか」

「?」

「レベル? 問題は、始まりと終わりだろうな」

「簡単にするために、数字にします。生徒の総数が百人の学校と、千人の学校があります。先の学校に居るのが天才だとすると、後の学校に居るのが神童となります」

「後の学校に、十人の天才が居て、その中のひとりが、ずば抜けていた? と、云うことだろう」

「ペラミッド式?」

「赤瞳は、ふるいで考えます。すると、多くの方は網目の細かさに視点を措き、小さい人間という認識を発生させます。そこで十人十色と考えられるかが、発想の転換、すなわち、機転の利く人なんです」

「ならば、その機転が利く者が先の学校に居たならば、結果は違うな。それが、錯覚と云うのだな」

「個性に眼を向ければ、先の学校の一般生徒の中? かも知れませんよね」

「そういうことか」

「どういうことよ」

「彼は、勉強のできる生徒とは云ってない。加えて、運動神経の良い? とも云ってない、だろう」

「多くの人たちが云った? とも云ってないから、今に限らないないことも、当てはまるわよね」

「では、革命の始まりは、イエス・キリスト様ですが、?」

「戦争の始まりが、宗教だからだな」

「キリスト様が、神になろう、と、決断するほどの悪政が興っていて、民衆を救うと決意した?とも、考えられますね」

「キリスト教と対立していたのがユダヤ教だったことは、学校で教わっている。誰もが、生きる気力を失くす時代背景と繋げられるな」

「モーゼと云うユダヤ教の指導者を後で知ったから、モーゼとキリスト様の闘いとは考えていなかったわ。モーゼの残した旧約聖書の原型は判らないけれども、民衆をなにかから解放するための争いだったんだね」

「卑弥呼さんが、きちんと話さないのは、捨てた理由なのか、それともまだ、結果に達していないか、のどちらかです」

「神になろうと決心した本当の理由は、卑弥呼さんとの約束があり、それが、争いのない世の中? だったから、戦争に触れないと云うのね」

「だから、争いの火種となる芽を潰すために、確認と懺悔の慣習を促した? と、云うのだな」

「世の中の英雄の多くは、功労を修めた者?ですが、赤瞳は違うと考えます」

「解放するための運動で、犠牲となられた者たちと、云いたいんだね」

「犠牲者たちの希望は、夢にみる色鮮やかな未来だろうからな」

「キリスト様が凄いのは、知り合っていないはずの市民までが、夢のために努力したからです」

「ユダヤ民族までも受け入れて居るしな? その結果?というか解らんが、米国が世界一でなければダメな理由とすれば、欧州の隔たりをなくした知恵の結晶となるわけだな」

「同じような経緯は日本にもありますが、唯一の敗北を喫した理由と考えられなかった理由は、歪んだ精神で来日人となった心の傷だったのでしょうね」

「ユダヤ系日本人?」

「なぜ、日本人が後なんですかね」

「日系ユダヤ人? 見た目で判断しない理由は、おもてなしの国の精神ということか」

「朝鮮からの補充者も居ますし、韓国からの補充者も居ます。その都度、役割分担は代わり、時間を掛けて馴染ませています。多国籍人種の国というものを、レッテルと認識した管理者の配慮だったのでしょうね。しかし、混ぜ合って終った者たちに芽生えたものは、配慮よりも当たり前にしたい?が、強かったはずです」

「立場の違いを欲で上塗りしたのね。だから、政治家さんとの繋がりが隠したかったのかしら」

「赤瞳が貧乏人であることを隠さないのは、とれる奴から取れ? という行政に、取れるもんなら取ってみろ、という革命的精神で立ち向かっているからです」

「本当の日本人なら、いや、いにしえからの血を引く者ならば、そこまでしない? という打算はあったはずだよな」

「結果は必ず出ます。しかし、過去の因果をほおって措けませんから、植物人間うつせみを選択しました。お二人より幽体離脱に慣れている分、馴染む時間を削減できますからね」

 福山氏は、こうの縋るような眼差しを確認し

「勿論、君の考えに準じた選択肢? の中から選択したはずさ」と、うさぎの言葉に上乗せした。

 こうもそれで、ほっ、としていた。

「では、身の回りにある運ですが、個性により見方は変わります。赤瞳わたしの正義も、福山さんからみれば悪行と考えられますし、こうさんからみれば、悪意かも知れないからです」

「十人十色なのは判るけれど、違う理由はなに」

「努力という科学反応で、変わるものだからではないですかね」

「幸福は簡単に手に入れられないからか」

赤瞳わたしは、視ているものが必ず居ますから、頑張って下さい、と、よく云いますもんね」

「私にも云ったわよね」

「知り合う人全員に云っていますから、自らにも努力を課しています。例えば、同じ運を手にし、おふたりは芸能関係に踏み入りました。赤瞳に足りなかったものは、なんでしょうかね」

「お他人様から視られることに有意義感を持てなかった? とか」

「そお云ってしまうと、目立ちたがり屋を承知していることになる。ならば、目立つために必要な出費を価値観として見いだしたから?と、境界線を誤魔化した方が良いだろう」

「ならば、ピンハネする仕組みに、黙っていられない性分だったから?と、すれば、対価に重きを措いていなくて、わびしくならないわよ」

「そういうことか」

「みえない途に誘導されることは、赤瞳には、できなかった、ということです」

「宿り虫さんたちの、抵抗?って、ことにも繋がるわね」

「それは、嘘に唆されてる時でしょう」

「どうしてよ、マイ」

「暖かみ?かな。猫は獣だからかも知れないけれど、表情にしても、言葉にしても、違うものを重ねていると、暖かみが違うみたいだよ」

「手の上で、科学反応を起こすんだな? だから、御釈迦様の掌の上で踊らされている、と云い伝えられているのだろう。科学者らしい発想だが、誰にでもできる芸当ではない」

「人間死ぬまで勉強?という、格言があることを、ご存知ですよね」

「僕たちは、いつしか先駆者がいなくなり、傲慢を当たり前にして終っていた? ようだな」

「初心忘れるべからず、なのは、政治家さんだけではないことを、教えていたのね」

「世間が習慣にしたことを逆手にとると、慣習が解ります。その機転が求められているから、神童の片鱗となるのです」

「それを軍国主義社会と罵ったわけなんだな」

「教育は、躾の延長線上にあるべきものですが、欲を持つ人間だからこそ、価値観に変えて終うんでしょうね」

「我が子が一番なのは、誰もが抱く想いだけど、その想いを、ピラミッドの中に置けなくなるわけね」

「君の拘りかも知れないな」

「どうしてよ」

「ピラミッドが運気を上げてくれる? 迷信にも似た風水を信じているからさ」

「確かに、信教心に似ているけれど、川の流れにしても、風の自由さにしても、人間の自由にはならないものだからよ」

「風潮に逆らわないのは、そういう認識があるからです。ですが、海に存在する魚たちは、台風が通りすぎるまで、避難しています」

「多く者が、それに準じているが、自分だけは大丈夫?だとか、家族のため、仲間のため、という具合に、犠牲者を出しているもんね」

「自分勝手も、欲の分類に入れるのか」

「自分が想ったことは、自分だけの解釈とわきまえれば、相乗の犠牲者は出ないはずです。しかし、冷静ではない者に、冷静を求めるメディアは、命を護るための行動を取って下さい、と、連呼で呼び掛けています」

「自分の中で消化できないものを連呼されても、いえ、動揺した脳機能なんですから、声さえ聴こえていないかも知れません」

「どういうことだ」

「老人という例を上げれば、防空頭巾を被る経験があっても、鍋やボウルを代用品として被る方がいないのは、明白な事実なんです」

「そういうことか」

「時代背景が違えども、地震大国の現状は変わらないから、机の下やテーブルの下に隠れる方がいない、ってことでしょう。気象庁は発表で、大地震がやって来ると、予見しているもんね。ほとんどの方が知っていても、備えている方は、微々たる数なはずよね」

「そうなるな。スポンサーと視聴者に板挟みになっていることは解るが、必要なことは云えきれていないはずだ」

「そこに必要なのは正義ではなく、寄り添ってでも回避する触れ合いです。画面の中だから触れ合えない?という、言い訳だけは用意去れていますがね」

「お他人様だから良い?だとか、云うことを効かない罰?だとか、聴きたくないものが言い訳だから、離れて行ったのかしら」

「手軽さを出すために拡げたことにも、責任はあるかも知れんな」

「それが間違い?とは、気付いていても、独占禁止法という、ひとり儲けを犯罪としましたからね」

「それは、詐欺にも云えるわよね」

「捕まった者たちの経緯を暴露した形の報道は、新手の手法?を、生み出す結果を残しているよな」

「自分なら、という模索を言い換えると、自分の方が頭が良いから、へまはしないという自信過剰な人間を生み出しました」

「悪?という、境界線を曖昧にして終ったわけなんだね」

「仲間じゃないから、大丈夫? 形は違うが、狭窄きょうさになるな」

「一番困るのは、悪い、という、意識を持っていないことです」

「もしかして、文豪たちの自殺に繋げたいのか」

「臨機応変という機転は、新しいものを出すための熟語ではないですからね」

「安心を捨てたのは、人間自身になるわね」

「先送りにしたしわ寄せ?と、云うことだな」

「暗殺計画を持ったとしても、誰かに委ねるべきではないですし、面と向かって云わなければ、伝わらないこともありますからね」

「自身にとっての不利益を考えて、公表しない理由だな」

「理解しがたい云い訳なのは、本人が一番解っている?からね」

「身の回りにある運を、良くも悪くもできるのが機転ということが解りましたか」

「一応」

「うん」

 こうのだじゃれに似た応えに、その場は一段落を迎えていた。 

 誰もが幸せを願うのは一緒だとしても、幸せになるための努力をしないのも、人間である。好きなことに没頭できても、嫌いなことには没頭できない。そこに、努力というスパイスを加えるだけで、別物にも変わる。知っていてもできないのも人間だから、あえて云ったが、受け取り方は十人十色だろう。不愉快だ、という感情を抱いた方も居るでしょう。お詫びしておきます、ご免なさい。ただ、切欠を必要な方がいることも、理解していただきたい。世の中は、多くの生命体で形成され栄えて行くのです。人間だけの欲ではないことを承知しています。盛者必衰の理、に免じてお許し下さい。

 



    

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招き猫 うさぎ赤瞳 @akameusagh

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