第四話
九
「黙りコクっているのは、
こうは前回に轍を踏んだことで学習したから、それを口にした。
マイは罰が悪そうにしながら
「地球の不安定さは、鉱物が衝突で質量を増やしたからよ。地殻が造られた時、熱に弱い性質の物質が熔けてできたのが、マントルとマグマだからね」
手を変えたのは、見えない内部構造を認識させるためでもあった。
「そもそもが、見えないものだから、それが曰くとなったとしても、そんなこと? 誰も気に掛けないよね」
「気に掛けないから、なぞが謎を呼んだとしたら、都市伝説なみに扱われても仕方ないわよね」
「例えばその真理を観れたとしても、見えない人間たちに、あなたはなにを望んでいるのよ?」
「人間の想定内に正解がないとしたら、そこに生まれる絶望感の大きさに、肝を冷やすことになるはずだからね」
「そうやって導く先が理想? だとしても、その理想は誰のために存在するのよ」
「人類では大袈裟過ぎるかも知れないけれども、生命体の未来を任された人間が対処できないから、彩りが確定されないとしたら、貴女の言い訳? がすべてなんじゃないかな」
「私? 民主主義社会の間違いでしょう」
「そうやって争いを肯定した結果、戦争が絶えない社会が造られたから、傲慢がなくならないんじゃないのかな」
「あなたの云う選択肢が間違っていたとしたら、リーダーの選択を誤ったことになるよね」
「そうよね? でもね、立候補の目的が野次馬的思想であったなら、そこに気付けない民衆の愚かさを晒していることになるわよね」
「悪意を晒す候補者なんて居ないはずだから、制度に間違い? があるんじゃないのかな」
「だったらその制度は、誰が造ったのよ」
「私に訊かないでよ」
「例えば宗教的に視ると、開祖や尊師だよね。その教えは残されたものでしかなく、理解に落ち度があるから、制度が見直されるんだよ。だから神々が七日後に復活するのよ」
「間違いをそのままにして措いても、良からぬ悪意が勢いを増す恐れがあるからね」
「そうやって、結果を先送りにしたのは、なぜかしら?」
「納得のいく答えが
「見方を変えれば、ひとつの答えに執着したからじゃないの」
「その結果、戦争を捨てたはずのこの国は、後方支援と云う
「選挙に無関心な若者たちに、その責任を押し付けたのは、時代背景かも知れないわね。もしも足りないものがあるとしたなら、中途半端に取り上げるメディアかも知れないね。結果が出るまで取り上げても、表面だけを繕うのが、政治家というイメージがあるからね」
「そういう背景に導いた、教育機関にも責任が存在するし、自称 頭の良い連中が居場所にしたものが総括する機関でもあり、本当に頭の良い者たちを追い出した結果、時代背景がそれに追従したに過ぎないよね」
「当たり前にした民族性は、何処に措いて来たのかしら?」
「それが、敗戦国の皺寄せであり、仏国がナチスに負けた真実は、ユダヤ民族に騙された結果ならば、見えない神を追ったユダヤ人が日本に居たことに繋げられるよね」
「開国よりも先に、宣教師が来日したからなの」
「日本語が神語に近いのは、
「なにが云いたいのよ」
「イザナギノミコトと、イザナミノミコトが、元なんじゃないかな?」
「そうなると、ギリシャ神話では、ゼウスやヘラではなく、女神ガイアとウラヌスになるよね」
「そうなるね。そこで考えて欲しいことが出きるのよ。例えば開祖にしても始祖にしても、始まりは目新しくて、人々が興味を持つわよね」
「発想の転換がもたらす効力でしかないけれど、新しいもの好きの人間の本性と云うか、資質と云うべきものだからね」
「それ等が飽きられる理由が存在するのは解るわよね」
「当たり前にして終った感性かしら」
「二世三世が、得たものに縋り着く理由があるから、新しい転換を考えない? としたら、ひとり減り、ふたり減りってなり、減り続くわよね」
「それが、ゼロまで行かなくても、得たものが尽きるのは、見え見え? だもんね」
「それを古代に当て嵌めると、獣たちにエサとして狩られる現状は、想像できるよね」
「出きるけれども、何に導きたいのよ」
「転換点にあるものが、ものであることが解るはずよ。そしてそのものは眼に見えることが解るはずよね」
「狩られることを防いだのは火だったはずだろうし、家だったかも知れないわね」
「貴女が前に、云ったことと同じかな? 想像が違えば、答えも違って当然なのは解るけれども、話の流れだけは、整理して欲しいのよ」
「答えを必要とした意味は、自身を納得させるために必要だった? ということなんだね」
「まだ気付かないかしら? 社会に答えは必要ないのよ。そこに気付けないから、起点を界に、転生が興るのよ」
「そんな気にはなるけれども、転生なんて頻繁に興らないよね? それを念頭に置くならば、行方不明者が行く着く先は、異世界になるはずよね」
「日本国だけでも年間数万人、行方不明者が出ているわ。総人口が減って困るのは、税の徴収が減るからよね」
「だよね。それでも法の番人の警察は手一杯だから、捜索する案件は限られて終っているわよね」
「一時、拉致問題が明るみになったけど、例えば国家元首の母親が拉致されていたならば、墓場まで持っていく案件ではないかしら」
「なるほど? でも、その子息が総裁選に出てるから、そんな与太話し?を、したかった訳なの」
「例えにした理由は、貴女の興味を引くためだけど、起点の先は異世界もあるから、そこに必要なのは世界観なのよ」
「世界観?」
「貴女が想像する異世界は、現世が基準となっているはずだろうし、逆転の発想まではしないはずだからね」
「逆転ならば、現世の正義と悪の逆転も想像できるけれども、云われないと考えないのが、現代人の資質? とでも云いたいのかしら」
「そこで考えて欲しいのが、比率なのよ」
「なんパーセントの計算をして欲しい訳なのね」
「貴女にとっての比率だから、あたしの計算では誤差が生じるはずだけれども、一握りの正義と一握り悪を同数として争った結果、どちらが先にゼロになると想う?」
「消耗戦を計算すれば良いのね? ならば、悪が先にゼロになるわよね」
「?、それって、物理的な計算よね」
「どういうことよ」
「悪は討たれるものだけれど、湧いたように増えることを計算に入れているの? って感じたわ。まぁ良しとして、あたしは、正義を言い訳と視るから、正義が先に、ゼロに達すると考えているわ。それが個性だから、そこに焦点を措いてないから理解しておいてね」
「だったら何処に、焦点を措いているのよ」
「貴女は、起点を界に逆転する異世界に堕ちることになるわ。それが、現世の妙であり、起点の理だからね」
「妙に理? なにが云いたいのよ」
「正確に云うと、想い知るために、逆転の理があり、不公平という愚痴を溢した瞬間に堕とされるのが、異世界と考えてみて」
「?」
「物理に頭を苛ます? 科学者たちは、化学を軽んじるけれど、抵抗力という壁の多くは、越えられないものなのよ。だから、アインシュタインは、相対性理論にたどり着いたし、トーマスは、流れに導くために、伝導効率に頭を悩まし続けたのよ」
「それでも皆さん、強靭な志で乗り越えたよね」
「神の國と云われた日の本は、急がば回れという志を神々から教わったわ。海の向こうの話では、ブッタは身を投じて教えとしたわよね」
「なにが云いたいのよ?」
「追えば逃げ、止まれば距離を保つ神々を見続けた人間たちは、弱肉強食をどうやって凌いだか? それは、知恵の活用法でしかないと考えられるなら、犠牲にした命の重さを知ってか知らずか、家畜の命を安くしたわ。視点を変えて視れば、当たり前にするために、宇宙をゴミだらけにしているし、層という量子を破壊し続けているのよ」
「それで宇宙の理を無下にしているとでも云いたいのね? それらは一部の者でしかないはずだし、多少の犠牲は想定内ではないかしら」
「犠牲にして良い命はないし、それを体験させるために、異世界は存在する? って解るわよね。それを不条理と知らしめるのが想いの起点であり、人の内に隠れる悪しき意思は、実体を離れたときに、漂う(彷徨う)のが空間なのよ」
こうは、詞や文字に付きまとう責任を実感していた。
こうは決心にも似た志を抱き
「さあ、そろそろ行こうよ」
マイは、こうの内心を悟り、呪文を唱えた。
次なる試練は、志を必要とする背景だと知ったのは、念が無色透明な姿に進化を遂げていたことを、湖面に映った姿で確認できたからである。
十
「念を押すけれど、あたしだけでなく、魔物の姿を確認した時点で、貴女に掛けられた術は意味をなさなくなって要るから、直ちに帰還してよ。呪文は、撤収でも撤退でも良いからね」
こうはまたしても、困惑していた。
行き着く先に措ける疑問は、ある程度 説明されていたが、自身に纏わる疑問を遠ざけて要るようにも窺え、上手く往なされている節は否めなかった。訊けば答えるとは想えるが、焦点をずらされたことに気付くのは、何時も後からであった。
『纏わり付く念がなにを示しているのか?』なんてことは経験上なかったし、計算?なんてものを当て嵌めたことなどはなかったからである。
今見える世界観に注意すると、情報として飛び込んできたものが、過去だろうな? くらいにしか想えなかった。視線の先に広がる世界に高層ビルはなく、どちらかと云うと、樹木に覆われていたからであった。注意に用心を重ねると、アスファルトが敷かれる道は存在していなく、人々の往来が踏み固めた砂利道を確認した。だからと云って、見えない羽を持つ念であることを知っていたから、頭を抱えるような困難が待っているとは想わないでいた。
そんな想像をしていると、
異国の公用語が解らないことを心配していると、突如顕れた勾玉が光を発し、異国人の発する詞が日本語に聴こえるようになった。それと同時に、なにやら怪しげな恐怖が沸き起こり、肌を差す錯覚に気付いた。逃げるように移動して、人里から離れた山深い境地に辿り着いたのは、こうをその場所に導いた感があったが、照準が合うと興味もそちらに移動していた。
偏狭に建つ一軒の山小屋が放つ暗黒の
気晴らしのように出てきた異国人を視た刹那に、「ニュートンさん?」と発していた。異国人が音を聴き取ったのだろう? 手が届く距離に遣ってきて、「高山病に掛かって終ったか? 霧と雲の違いを弁えているつもりなんだがな」と云い、踵を返して、小屋に戻っていった。
こうはついさっき? 身の危険を察知していたので、異国人のニュートンに纏わり付き、身を潜めることに成功したのである。
胸元に輝く勾玉を信じたのか?
「私を覚えていませんか?」と、尋ねていた。
「私は恐怖のあまり、空耳まで聴こえて終っているのか?」と、厄の兆しと想って終ったようだった。
こうは、マイの口から出たに呪文という詞に想いを託し『南・無・妙・転・換・法・蓮・華・経』と、唱えていた。すると、勾玉が集光を始め、朧気な姿を映し出した。
「これは?」
「私のことを覚えていますか?」
ニュートンは、視てからの異国人に知り合いは存在していなく
「私も、ガリレオ・ガリレイのように悪魔に魅入られた? と云うことか?」と、湧き出す恐怖に
こうは、『女神と云うのは恐れ多いけれど、天使ぐらいに視えないかな』と想い定め
「悪霊ではないことだけは確かよ。私自身もカラクリは解らないんだけれど、貴方は人類を救うメシアだから、勘違いしないで欲しいわ」
ニュートンは、見知らぬ異国人が話し掛ける理由に疑問を抱きながら、
「英国は自由な発想を理解していると想っていたが、よもや処刑去れるとは、運が悪いにも程がある」と、云い放った。
こうは、信じ込ませるために
「私は、マリア様の使いっぱに去れたみたい。マリア様の前世は、ヘスティアと云う女神で、今は結界のラスボスなのよ」と、与太噺に尾ひれを付けて語った。
「マリア様? 貴女は、神の使いと云うのか?」
「落ち着いて話してる状況ではないけれど、貴方の発表を待っている偉人たちが要るんだから、躊躇わないで公表して。貴方が発表した軌跡が、ミレニアム以後に摸倣する悪霊を退治するんだからね」と、云った途端に、小屋の扉がガタガタと音を立てて蠢き始めた。
慌てて外に出て視ると
「貴方はミカエルじゃない?」と、云いながら
『退散』と念じ雲になるや否やに、姿を消した。ミカエルがそれを見送るように唖然と佇んでいた。
こうは帰るなり
「話が違うじゃない? なんでミカエルが、私に危害を加えるのよ。お茶目さんどころか、凶悪魔神だったわよ」
「そりゃあそうよ。死に神として加わる前なんだからね」
「そういうことは、先に云うもんでしょう? 忠告の意味は、危険回避のためにあるのよ」
「だから、退散の詞に間髪入れず、呼び戻したんだよ。感謝されることはあっても、恨まれる筋合いはないわ」
こうは、『確かに、生存したまま帰還できているわね』と悟り、おとなしくなった。
マイは息を入れ
「ガリレオ・ガリレイが1642に処刑去れたのは知っているよね? その年に誕生したニュートンさんは、同じような宿命を背負った? と、感じて終って、志を揺らいだのでしょうね」
「ガリレオさんは、コベルニクスの地動説を信じ続けたから処刑去れたのよ」
「詳しいわね?」
「私は、そんな物理学者の異名を持つ科学者の物語に出演していたからね」
「科学者の本領は、生存する実社会よりも後の世界に繋がる発見だからね。そういう観点を持つと、夏から秋に襲来する台風に当て嵌められるのよ」
「どういうことよ?」
「台風の怖さは、立って要られない強風を持つだけではなく、海水をも嵩増しするわ。わき水が湧き出す点と、流れ着く先の海の点との勾配が川だけれども、津波のような勢いはなくても、水の浸水に注意が必要よね。台風の目が進行するのは、不安定な気圧配置を好むのよ。高気圧があれば押し上げられるし、秋雨前線があれば、停滞するのよ」
「なにが云いたいのよ?」
「熱帯低気圧の役割は本来、淀んだ空気をかき混ぜることだから、一過の後の風が変わるのよ」
「だから?」
「地球は円形だから、低気圧を上げやすくするために円形であることが必要とされているし、高気圧を下げやすくするために発生するのよ」
「気象庁の発表が平面だから解り難いけど、立体的な想像で重ねると、高低差に潜む災害に気付ける訳なんだね」
「自転や公転の向きは、概念と観念のたまものなんだろうけれど、北極点が太陽に傾く夏から、離れる冬へ向かう恒例行事という認識を持つだけで、想定範囲は狭くなるんだよ」
「それでも、強風を甘くみると
「転ばぬ先の杖とは良く云ったもので、弱い生命体であることを弁えて措けば、備えることが身を護るから、貴女は少し切れたんだよね?」
「解ってもらえれば、それで良いわよ」
個性に対し酷評はあるけれど、終えて良い生命はない。繋ぐことの出来る手を持つのが人間だから、災害という特例と想い定め、一丸となり乗り切って欲しい。お粗末ながら、想いを書き加えさせて頂いきました。 敬具
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