第48話 屋敷
岩塩鉱山の視察が終わった後は早かった。
ヒルマッカラン街守閣下は、本当に何か言いたそうだったものの、
「凄い物に乗ってるな、ケンチ。黒い上等な猪車に狂暴そうな角猪まで繋いで。お前は神官服に白い
南門でのヤッパリォーネ副長は、正直に感想を述べてくれた。
俺も、こういう
「街守様が
副長にはそう言うしかない。全部本当のことだ。
うちのトカゲ姉さんは、普通のトカゲであるペットのマーちゃんとして、この
こうして岩塩鉱山への案内も無事に終わった為、カモネ
「ケンチ、屋敷がほしいと言っておったな。カモネの使っておった屋敷を買わんか? 格安の金貨200枚でどうだ? あそこはもっとするだろう。4割引きぐらいにはなっとるはずだ」
鉱山への案内が終わってから日は経って、教会暦805年6の月28日のこと。内区の領主館に呼び出された俺は、出し抜けに街守様からそんなことを告げられた。
ちなみにマーちゃんと出会ってから120日目になる。フロアは雨の日だ。
「そりゃまた、どういうこってす? 金が必要になったんですかい? そういや、岩塩鉱山に行って、そろそろ
「そういうことだ。うちの街については、あの事件は終わった。後は国都の連中が判断することだ。カモネの所から、金貨200枚は没収したがもう少しほしい。お前は金を持ってるだろう?」
街守閣下からは思った通りの答えが返ってきた。この
今のところ、M資金は金貨だけで30万390枚もある。
これは、解体した
金貨200枚なら、カモネの所からいただいた分を返すだけなので丁度良いだろう。
「マーちゃん、街守閣下がこう
うちの徳川埋蔵金姉さんには、許可を貰わないとならない。
「即金で払えるのは良いな。ヒルマッカラン殿、その値段で買おう。あそこは色々と便利だろうな」
マーちゃんから許可が出た。
実は階下にいる領主館内受付窓口の皆さんにも、
トカゲを頭に乗せた神官である俺は、ここでは顔パスの有名人になっていたりする。そんなわけで今日も神官服だ。
「手続きは今日中に終わる。引っ越しは適当にやれ。それから地下通路は埋めたが、あそこは悪用するなよ。後から何か出てきたら報告しろ」
街守閣下からは注意と念押しがあったのだが、こうして俺たちはあの広い屋敷を手に入れた。
あそこなら角猪を飼ってますと言っても通るだろう。普段はアイテムボックス内のフロアにいるのだが、周囲から厩舎内が見えないのでバレる心配もない。引っ越しも一瞬で終わる。
その日のうちに金を払い、手続きを済ませた俺たちは外区へ帰ってきた。
付け届けの威力は凄まじく、書類が作成されて承認されるまで、領主館内受付において最速で審査まで終えたらしい。本当にあっという間だった。
全額を即金で支払ったのも大きいだろう。普通の人はそんな金を持ち歩かないからだ。
「ケンチ、この後はどうするのだ。引っ越しの必要は無いのだ。今の部屋は物も生活感も無い。鍵はもらったし移動だけだ」
「マーちゃん、この後はアパートの解約に、組合事務所まで行ってこなきゃならねえ。それにアッコワの兄貴には、マーちゃんを紹介しても良いかい?」
今日はまだ時間もあるので、組合事務所まで行って手続きを終えてこようと提案した。
ついでに、マーちゃんのことについては、話した方が良い時期かもしれないと聞いたところ「ユシュトル殿は出世しそうだ」との返事があって許可が出た。
念話とマスク越しの小声で、会話を終えた俺たちは、組合事務所へ行って
「お
探索者組合の事務所の受付の一番奥には、久しぶりにアッコワ・ユシュトルの兄貴が座っていた。
この
銀髪の下にある
例によって2階の別室に通された俺は、アパートの鍵と一緒に金貨20枚も出した為、アッコワの兄貴からそういう台詞が出てきたというわけなのだ。
「実ぁ、頭に乗ってるトカゲのマーちゃんを紹介さしていただこうかと思いゃして。俺の運が向いて来たのぁマーちゃんのお陰なんでさぁ……」
茶色いトカゲに化けたマーちゃんは、今も頭の上にいる。
今の俺は秋になったということで、革の上下に着替えているのだが、ふんわりした
「悪気は
どうやら、アッコワの兄貴はマーちゃんを試したらしい。俺は股間が冷えたが、マーちゃんは怒ってはいないようだった。
「アッコワ・ユシュトル殿だな。私はマンマデヒクという。マーちゃんと呼んでほしい。ケンチとはアイテムボックスを経由して出会ったのだ」
マーちゃんはいつもの調子で挨拶すると、身体の色を青に戻し、葉っぱと光輪、翼と光を出して元の姿に戻った。
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