第42話 捕獲
~犯罪組織のボスの場合~
都市ズットニテルの外区北側にある事務所兼屋敷の中には、エラベルとムレルヴァ以外の人間がいなくなってしまった。上階には、ヌーラネイト・キトルデンハイム氏の死体があるだけだ。
イーナがもしこの場にいれば、彼女達は即座に屋敷から脱出していただろう。だがイーナはこの場に居らず、エラベル・カモネはどうやって逃走の時期を決定するか迷っていたのだ。
彼女達は、同じような
アホの様な男に
「イーナが帰って来ない。こういうことは言いたかないけどさ、ここから逃げるよ、ムレルヴァ。地下に行って、西側に続いてる例の通路を使うんだ。いいね?」
エラベルは、
「まさか、イーナとここで別れるとは思いませんでした。強くなっても、自分より弱い者を引っ
ここに来て、ムレルヴァはそんなことを言って返した。ロビーに残るというのだ。
エラベル自身は、その行為を馬鹿のやることだと思ったが、彼女にそれを
「そういうことなら止めないよ。アタシはそういうのは無理だから、ここから逃げさせてもらうよ。じゃあね……」
エラベルはそう言うと、地下室の方向へ身体を向けた。
イーナは強い者が弱い者を
エラベル自身もそういう目にあったが、それはその行為が社会に容認されているからだと、彼女自身は思うのである。自分が同じことをやったからといって、それが責められる方が間違っているのだと彼女は思った。
今回は自分がやり方を間違えた、というのがエラベルの感想だった。ほとんどの者が正しいやり方で、自分と同じことをしているのだというのが彼女の主張なのである。
セトゥス・サヌーキ・トクシマティが、以前からずっとエラベルに感じていた気味の悪さの正体はこれだった。
こういった
エラベルが地下室の方向へ身体を向けてから、彼女には長い時間が経った様に感じられたが、実際には少しの間であったらしい。
凄まじい音と同時に、玄関の左側の扉が吹き飛んできてムレルヴァを
「うむ。ひのきの棒ペネトレイションはこういう時こそなのだ。
ムレルヴァが
そう
「マーちゃん、見た感じ中にゃ2人しかいねえぜ。1人はもう駄目だ。鍵を開けて入るんじゃいけねえのかぃ? 外から透視してよ、扉の近くに誰もいねえのも分かってたろぃ」
先ほどの妙な意見に抗議したのは、
「ケンチ、透視を信用し過ぎるのは良くないのだ。相手の
最初のアルトボイスは、続く真っ当な主張に対して、過度な用心深さで応じた様にエラベルには聞こえた。そんなことが出来る奴がいたら、自分の側近にしているに違いないと思ったのである。
「ボスは黒髪って聞いたが、どっちも黒髪で美人だ。両方とも顔色が
田舎なまりな
アレだけ大きい音を出して扉を破壊しているというのに、人が集まって来ることも、相手が抗議することも気にしていない様に見える。
「では遠慮する必要もないな。後で聞けばハッキリすることだ。あの女性が最後の1人なのだ。上階で死んでいた男も蘇生した。弥助001番を含めて147人になるのだ」
先ほどから会話している2人組だが、全く姿が見えないのに声だけが聞こえることに、エラベルは得体の知れない何かを感じた。そして今話されているのは、キトルデンハイムと自分のことだと理解も出来た。
「あんた達、何者だか知らないけどね、金が欲しいならあげるから。アタシを見逃してくれないかい? アタシだけで良いから」
エラベルは、自分の声が震えていないことに少しだけ満足した。
そして正規の人間とは思えないやり口に、こいつらも裏の人間ではないかと彼女は思ったのである。積める金は全部出して、自分だけは逃げようというのが彼女の出した答えだった。
「姉さん、あんたがエラベル・カモネだな。噂通りの女だ。俺たちが今回集めてるのぁ人間だ。金じゃねえ。人間も山とか畑で取れたら、そっちから収穫した方が良いたぁ思ってんだ」
その
声の
この男は今まで何処に居たのか、武器を携帯していないのは何故か、頭上の茶色くて太っている
そんな男は、エラベルから3メートルしか離れていなかった。
「人なんか集めて何するつもりなんだい? 隣の国の奴で、研究に使ってるのがいるけどさ。アンタらもご
エラベルは必死になって話している最中だったが、目の前の
====================
※連載再開しましたのでよろしくお願いいたします。
『俺が吹き飛ぶと桶屋がもうかる』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます