第5話 猪車《イノぐるま》
ロスナッシを見送った俺たちも移動を始めなければならなかった。ここは衛星都市から3キロメートルしか離れていないのだ。
「そんじゃぁマーちゃん、俺たちも山脈へ行こうぜ。のんびりと行きゃあいいんだ。俺ぁしばらくは街に帰りたくねえな」
俺は今回の一連の事件の
だが探索者とは街の外の危険地帯に出かけて行って、大自然や狂暴な生物に挑んでくるのが本来の姿なのだ。
「実はな、いつぞや約束した乗り物を用意したのだ。歩くのよりは速いが自動車ほどではない。その代わり目立たないし疲れることもないぞ」
マーちゃんの申し出は今の俺にとって実にありがたいものだった。楽で目立たないのが特に良い。
「本当かよ!? 俺ぁデコトラとかじゃなけりゃ何でもいいんだぜ。山まで80キロはあるしよ、楽ができりゃ文句のつけようもねえよ」
新しい装備を
「そう言われると倉庫から引っ張り出してきた
マーちゃんの声に答えて収納口から出てきたのは箱の様な馬車だった。馬を
長さも幅も2メートル半ぐらいで高さは3メートルってところだろう。
ちなみに俺のアイテムボックスの出入口は思った以上に
「マーちゃん、こりゃぁ猪車かなんかってことだよな。車輪が4つ付いてるけど平安時代の
うちの未来系
目的地が決まっているのに気がついたら別の場所にいた、という旅の持つ
「ケンチ、これは
マーちゃんの声に答えて現れたのは立派な角をもった2頭の
こいつらは以前、マーちゃんに突撃して死んだ5頭のうち、組合に
「マーちゃん、言い忘れてたんだけどよ。猪車を引いてんのは角の
マーちゃんが
「そうだったのか。気性の荒い動物はやはり難しいのだな。では角は切り取っておいた方が良いだろうか? サイボーグとして再生してからは
心なしか、うちのトカゲ姉さんがしょんぼりしてきてしまった様に見えた。
元々が地に落ちている俺の評判が、あと2センチほど地面にめり込むのを気にしなければ乗ることは出来るだろう。
そしてこの2頭はサイボーグ
「マーちゃん、これが普通じゃねえのは言った通りだ。それでも警戒されるような代物ってわけでもねえ。俺ぁこいつにありがたく乗らさしてもらうぜぃ」
そう言って俺は箱車の扉を開いた。スライド式だ。後で何か言われそうだな。
「そういうことなら良かった。これはサスペンションも付いているし、
どうやらマーちゃんのやる気を
ベイブレーダ号には2頭の猪であるシランミッチネルとマヨタディオンも繋がれた。
これによりベイブレーダが元々持っていた雰囲気は完璧なものになった気がする。俺は某オランダ人と同じく、マーちゃんと最後の日まで大陸中を
「中は快適だぜ。それにトイレがあんのはありがてぇ。用を
外装は黒い箱のようなベイブレーダだが、内装は狭くとも快適な空間だった。
「では出発しよう。ベイブレーダ前進せよ」
マーちゃんの掛け声と共にベイブレーダは走り始めた。時速は聞いたところ15キロメートルだそうだ。2回聞いたが変わらなかった。街に住んでいる普通の人が歩く速度の3倍も出ていた。
歩いて行くのであれば2日か3日はかかるのだ。それよりは時間的な余裕が出来る。それなら途中で採取の為に止まっても良いのではないだろうか。
「マーちゃん、実はな……俺ぁ昔から四つ足のサイボーグに乗って旅に出んのに憧れてたんだ。黒い旅人帽も長剣も冷えるような
昔の俺はマーちゃんに白状した通りそういう奴だった。
「私は四大元素の力で斬られて死ぬのは避けたい。あの男にあったら露店商の振りをするか、世界との接続が切れるのを願いたいところだ。
うちのトカゲ姉さんの観察はその世界のフィクションにまで
そして永い時を生きるあの
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