第4話 旅立ち
その日は辛い物が好きだというロスナッシと、本格洋風ビーフカレーをナン(薄いパン)で食べた。
2日連続3食目だったが俺は涙を流してしまった。これがあっての俺だ。
それに目の前のロスナッシも、両目から滝の様に涙を流してカレーを食べていた。
たとえ世界を
「ケンチ、俺は明日から旅に出ようと思う。だがこれをもう食べられないとなると己の身が
「ロスナッシ、俺の予想じゃぁ大陸の中央部かその玄関口に行きゃぁ屋台で売ってんじゃねえかな。味はちょっと違うんだがこいつぁ香辛料を使った煮込み料理だ。そのうちこっちでも食えるようになるんじゃねえか?」
悲壮な顔をしているロスナッシにはそう言っておいた。ラシーズ店長の様な商人がいることも教えた。
「そうか、ありがとう。世界には希望もあるのだな、
ロスナッシは意外なことに俺と同じ宗教者だった。そして色々なものを見てもなお、マーちゃんを
その
ちなみに奴の言うカロリーフレンド問題とは、聖人ターケシ・ゴーリ降臨の際に彼が所持していたカロリーフレンドとはどういった物だったのか、というある種の不毛な論争のことを指している。
このカロリーバーの形状や味、目的や製法が正確に伝わらなかった為に、後世の弟子たちはこれのことを食べ物ではなく何かの奇跡の
思わぬことから真実を知ってしまったロスナッシは、この件について教皇庁に報告するために、聖都ゴーリッシュゾウに向けて旅に出ることを決めたようだった。
内海の東のどん
「マーちゃん、ロスナッシのやつがこんな事を言ってんだがいいのかよ? 異端認定を受けるか、こっちのことがバレるんじゃねえかと思うんだけどよ」
さすがに不安になったので、この件はマーちゃんに相談してみた。先ほどから隣で浮いていたのだ。
聖人様と同郷であろう俺は、何が真実なのかもちろん知っているつもりだ。
だが人間は
「特に問題ないのではないかな。無視される可能性もある。だが自動製造工場で作ったカロリーフレンドの全フレーバーに
うちのトカゲ姉さんの方でも問題が発生していたらしい。
無人の食品製造工場にまで、神の力の影響が
「そういやぁ、デチャウ司祭様が世話になったって
肝心な部分を聞いてみた。
「もちろんマンマデヒクとは旅の途上でお会いしたことにする。私にこれを
ロスナッシの返事の内容は
この男の真横には
カロリーフレンドの製法については、チョコレート味の再現の難易度が異常に高い気がするが、この男ならば何とかしてしまうのではないだろうか。
「そういうことなら
ロスナッシも、自分の中にある
俺からはうちのボスの先輩の名前を伝えておくことにした。
そんな感じでその日は終わった。
寝る前に、俺とマーちゃんとロスナッシで
奴は完全に吹っ切れた様子で、自分の使命を
そんな顔を見てしまった
転移者『
毛皮を着た原始人どもと交流するため、彼はそのことごとくをしばき倒して言うことを聞かせるしかなかった。
だが彼は絶望せず、大陸中東部からもたらされたインディカ
つまり
マーちゃんと出会って10日目の今朝のこと、出発の準備を終えた俺たちは収納口から出た林の中で別れの
「ロスナッシ、どうせなら山脈を
俺たちはそう言ったが、ロスナッシの決意は固いようだった。
「ケンチ、これこそが巡礼の旅なのだ。目的地に到着してもまだ果たすべき使命がある。そしてその先もあるだろう。俺が死んだとしても、それからもやるべきことがあるのだ。何を恐れる必要がある?」
ロスナッシは今は白いローブを着て、神官帽子の様なものまで被っていた。背負っている
「そういうことなら気をつけて行かれよ。
ロスナッシ殿、あなたに
マーちゃんはノリノリでそんなことを言っていた。
ここには黒子さんも出て来ていて、ロスナッシにツタの
それを受け取った
黒子さんはロスナッシの
カレーパンは合成保存料が入っているだろうから30日間は
「私はもう大丈夫だ。聖なるカレーパンとカロリーフレンドがある。ケンチ、
そう言って頭を下げると、ロスナッシは南東方向の道の向こうへと去っていった。
あの方向には、ヴァンドヴォシュー伯領の港であるドラムイネイダがあるのだ。
俺たちも出発しなければならない。
今回の目的地は、ヴァンドヴォシュー地方の
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