第2章 トカゲさんと街
第1話 解体所
「ケンチ、そういう日もあると思うが気を落とすなよ。俺が言うようなことじゃないかもしれないが、生きていればきっと良いこともある。俺はお前が怪我もせずに帰ってきてくれたことを喜びたい。何かあれば相談しろ」
街に帰ってきた
街の外区西門にいるこの
40代になって身体は
俺はこの、自分の欲望に忠実な
今もマーちゃんに用意してもらった酒を瓶2本で差し入れたのだが、堅いことを言わずに受け取ってくれた上に、余計な気まで回してくれるのはこの人ぐらいだったりする。
この
ここでは毎度の付け届けが己の身を助けることがある。
人は1人では生きていけない、というのはつまりはそういうことだと俺は思っている。
「
「ハッハッハ、組合じゃ
トマンネーノのおやっさんはうちの組合長だ。組長じゃなくて組合長だ。
荷物に酒しか入っていないのははっきり言って怪しい。
それでも通してしまうのがマルッキ隊長だった。もらえれば疑惑の証拠リストから消えてしまうのだ。
俺は日本に生きていた頃は身体が弱いのにもかかわらず、酒もタバコもすごい勢いでやってそれが原因で死んだ。
こちらに生まれてからは、金も無かったから酒もほどほどでタバコはやっていない。身体が資本の商売で、それが生死に直結するとなれば当然だろう。
「用意した酒が役に立って良かった。ケンチは酒は少しでタバコはやらないだろう。私としては
姿を消した状態ではあったが、物持ちのマーちゃんはそう言って嬉しそうにしていた。
彼女が本気を出せばこれらの品物で世界を
今回の件は完全に思いつきだ。
街の直前で思い立って考えた挙げ句、マーちゃんなら持っているのではないかとお願いしたら
昼過ぎの組合事務所は相変わらず閑散としていた。
化粧は薄いのに退廃的という受付
「兄貴、ただいま戻りぁした。もちろん
「早かったなケンチ。お
冷酷イケメン顔のアッコワ兄貴は、そう言うと俺の先に立って解体所へ続く扉へと進んだ。
受付
「ケンチ、神がお
解体所へ向かいながら、アッコワ兄貴にそう
ちなみにこの
探索者組合はゴーリ教会の下部組織であるため、こういったことについて
「馬車か
一瞬バレやしないかと思ったが、俺はマーちゃんと事前に話し合った内容で通した。
「分かった。充分だ。こっちだケンチ。
おい、とっつぁん! オシタラカンのとっつぁんは居るか?
解体所に到着すると、アッコワ兄貴はここの責任者であるオシタラカンのとっつぁんを呼び出した。今回は口の堅い人間の立ち会いがどうしても必要だからだ。
「アッコワじゃねえか。今は暇してんだ。たまたまだがな。
おっ! ケンチじゃねえか。手ブラでここに顔を出すたぁお
身長2メートル、筋肉の塊のようなヒゲ面のハゲが解体所の奥から出てきた。この
ここの主と呼ぶ方が
「とっつぁん、人払いを頼む。ケンチは手ブラじゃねえんだ。これで分かってくれ」
アッコワ兄貴の台詞を聞いた途端、オシタラカンのとっつぁんの顔から表情が抜けた。作業用の分厚いエプロンを
「そりゃあ……ケンチもとうとうそうなっちまったのか。街の外で
そう言うとっつぁんの俺を見る目は、昔を思い出しているだけのような、何かを
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