第9話 ひのきの棒パワード
「マーちゃん! クソッ、
コボルトどもは俺の方にも10匹ほど押しかけてきた。
マーちゃんのところに行きたいが、目の前の原始人をどうにかするのが先だ。
俺は腰の曲刀を抜くや、近寄ってきたヤツの首を3つほどなで斬りにした。
これは切り札の1個目を出さないと
俺は大きく踏み出すと
今のは『空歩の術』だが、これがスタミナを意外と食う。
こっちの魔法は全部そうだが、スタミナを消費して使うわけだ。
精神力が減るのは
最初のコボルトども10匹を殺しきったところで、ようやく俺は周りの様子をうかがうことが出来た。
黒クモさん達は近寄ってきたコボルトどもを150センチメートルもありそうな
クモの
ぶっ倒れたヤツが、空気に溶けるように消えているところを見ると収納してるんじゃないかと思う。魔法の気配を感じるから『転送の術』ってやつじゃないだろうか。
入り口担当の俺と距離が離れているのに何て器用な
「マーちゃん、そっちはどうなってんだ?」
声をかけるのは俺が危険かもしれないが、普段からお世話になっている立場だ。マーちゃんの現状を把握しておかないといけない。
「ケンチ、無事だったか。
実際、マーちゃんは今でも物理的に打ちのめされている真っ最中だった。10匹のコボルトどもは、先ほどから
自分たち以外の連中が、とっくの昔に
コボルトどもの棍棒はマーちゃんの身体に届いていなかった。
魔法の気配がするから、おそらくは『
「私はこれでも色々な世界を見てきた。イヌ科やネコ科に近い知的生命というのも観察したことがある。もしもだ、コボルト語が彼らの言語体系に近いものであれば上手く行くのではないかと思ったのだ」
『ルールルルルル』ってのは絶対に違うだろ、と思いながら俺はマーちゃんの言い分を聞いていた。
知識があるということは時に人を
ロボットさん達を見ていれば分かるが、マーちゃんは
「あれはイヌ語のワードだと思うんだが、それを念話で話した瞬間に彼らが
マーちゃんは『ある国に旅行に行ったときに言ってはいけない言葉』というやつをすごい確率で引いたらしい。奴らが爆発したきっかけはよりにもよってマーちゃんだった。
「マーちゃん、不幸な行き違いがあったのは残念だと俺も思うぜ。ただ、こっちの国じゃ奴らは人間の敵ってことになってる。本当は森に入らなきゃまず会うことはねえんだけどな。いい加減そいつらをどうするか決めてくんねえかな?」
俺がそう声をかけると、マーちゃんは目をつぶって首を
ちなみにコボルトどもはどうなっていたかと言うと、7匹ほどがゼーゼー言いながら地面に座りこみ、残り3匹はヘロヘロだがまだ頑張っていた。
3匹の方はよく見ると木じゃなくて鉄の棒を振ってる。きっとリーダー格なんだろう。
「ここは仕方がない。『ひのきの棒パワード』だな……。黒クモさん、言いたくはないが頼む」
マーちゃんがとうとう黒クモさん達に命令を下した。
『ひのきの棒パワード』というのは例の150センチメートルもある
黒クモさん達は5秒ほどでコボルトどもをブチのめして、さっさと転送してしまった。あの広大なフロアの
そう言えば、俺のアイテムボックスには生き物を入れる事が出来る。俺も入って寝ているのに今ごろになって気が付いた。
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