第4話 探索者組合
昨日はすっかりマーちゃんにお世話になってしまった。
風呂の後で散髪までしてもらい、ついでに歯科検診も受けて歯石まで取ってもらった。
この世界でも虫歯は怖い。甘いものが少なくても酒があるからな。
それから俺がパンツで苦労していると勘違いしたマーちゃんは新しい下着として、伸縮性と通気性に優れたボクサーパンツを何着か用意してくれた。
こっちの方が
今日の俺は後ろと両脇を刈り込んで2ブロックになった
念のために言っておくと茶髪は生まれつきだ。
俺だって危ない
マーちゃんからは「街の外にある大森林に連れていってほしい」と頼まれてしまっていることもあり、お世話になりっぱなしという俺の立場もあって、探索者組合で依頼を探してみることになったわけだ。
「
「ファガダァァ!」
組合事務所の入り口付近、両開きの扉の前で、ふて腐れたような
蹴り倒したのは俺だ。茶色い革のズボンをはいた脚を思いっきり振り抜いて、これまた茶色いショートブーツの爪先を相手の脇腹にめり込ませてのことだ。
蹴り倒された方は髪と同じ茶色の
何かに失敗して誰かに
「ケンチ、アレはあの対応で良いのか?」
まだ、探索者組合の事務所前だってのにマーちゃんがニュっと出てきてしまった。
今の質問は念話だ。相変わらず何でもありだ。
「マーちゃん、探索者には『負けが込んでて
それにどの神様もああいう奴には
蹴り倒されたヤツがよろよろと歩いて逃げていく様子を見ながら、俺はマーちゃんに出来るだけ
マーちゃんは念話が使えるが、俺は聞こえるだけで念話を発することは出来ない。
この会話も
探索者になる奴ってのは孤児院で育った孤児のごく一部、俺みたいな地方出身の次男や三男、そして街の出身者で占められる。
街の出身者だと、親もいるのにガキの頃から手のつけられない
探索者として上手くいかない奴は犯罪者になるし、それでしくじったら
「とにかくだ、さっさと依頼を見てこようぜ。もし依頼が無くても、森には絶対に連れてくから安心してくれ。
それから他のヤツらに見つからないようにしといてくれ」
昨日からの
ここは事務所の入り口の前だ。
こんな場所でぐずぐずしていたら、どんな噂が立つか分かったものではない。
今の俺はマーちゃんと日本語で会話してるから、入り口の前で未知の言語を
「そこは期待しているぞ、ケンチ」
こっち側に出てきてしまったマーちゃんはそう言うと姿を消した。流石に器用だ。
そんなわけでようやく、俺たちは『オーデン伯領 衛星都市ズットニテル』にある探索者組合の事務所の扉を
探索者組合の事務所内は昼の時間は
フロアの広さは幅も奥行きも30メートルぐらいあってそれなりに広い。
この国や他の国もそうなんだが、長さや重さはメートル法が古代から使われてる。転移した
俺自身が大したことない人間なものだから、そこら辺は気にしたことがない。
入り口から入って右側にはカウンターが長々と並んでいる。受付窓口ってやつだ。
中には顔とスタイルの整った
こいつらは『
シャツの胸元は全開で、ついでにスカートは脚の付け根までしかないようなタイトな
それなりの金さえ積めば、どんなことでもやってくれるんだが、正直言って
今回、用があるのは一番奥のカウンターだ。
「おはようございます。アッコワの兄貴」
一番奥のカウンターに居るのは、
ピシッとしたジャケットとオールバックの銀髪が目に
このアッコワ・ユシュトルって
「ケンチか。今日は働きに出るみてえだな。神様は失敗についてはお優しいが、
今日は依頼の確認か?」
そう言うアッコワの兄貴の声は落ち着いたバリトンだったが迫力があった。
まだ30代じゃなかっただろうか。
「へい、久方ぶりに森に行ってこようと思ってるんですが、何か良い依頼はねえでしょうか? 今回は無くても行ってこようと思ってまして」
それを聞いたアッコワの兄貴はスッと紙を出してくれた。
「
運の良いことに依頼があった。
しかも大型生物の運搬だ。
俺のアイテムボックスにピッタリの依頼だ。
「それでお願いしやす。実は……大きい声じゃ言えねえんですけど、新しい
俺はポソポソと答えた。
ちなみに言葉づかいが悪いのは俺が田舎出身の
こちらの言語だけならまだしも、日本語の言葉づかいまで悪くなってしまったのはいただけない。引きずられ過ぎだ。
「ケンチ。前から思ってたんだがお
「アッコワの兄貴、ありぁとうございます」
そんなわけで、俺はマーちゃんを連れて大森林に入り、
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