第20話 ローリーとアルナンドお似合いなんじゃないですか?
私たちは馬車から下りると機織り工房を目指した。
通りにはいくつものも機織り工房が立ち並んで人通りも多かった。
カイトから聞いた工房に着くとプリムローズは販売をしているらしい店舗の入り口を開けてローリーに事を訪ねる。
「すみません。こちらの工房でローリーと言う18歳の女性が働いていると聞いたんですが?」
「ローリーに会いたいって?あなたは?」
応対に出たのは年の頃なら40代くらいの女性でここの販売員だろうか。
店には織り上がった布がいくつも売られていてる。きっとここは機織りと販売を兼ねているのだろうと判断する。
「私は幼なじみのプリムローズと言います。3年前に別れたきりで最近同郷の人と出会ってここで働いていると聞いてどうしても会いたくなって尋ねました。どうか合わせて頂けませんか?」
「少しお待ちを、ただいま店主に聞いてみますので」
「はい、よろしくお願いします。すこしお店の中を見せて頂いていてもよろしいですか?」
「はい、もちろんです。どうぞごゆっくりご覧ください」
店には他にも客がいて色々な布を手に取っているのが見えた。
プリムローズも客と同じようにきれいな布を手に取った。
アルナンドも一緒に店の中に入っていたが少し居づらくなったのか「俺は外で待っているから」とそそくさと店の外に出て行った。
プリムローズは店の中でも一段と目を引く白金の糸が織り込まれた布に目が吸い込まれた。
その布は軽くとてもなめらかでそれでいて華やかで美しかった。
(こんな布を織るなんてすごいわ。これで着物なんか作ったらとても綺麗だろうな)などと想いを馳せる。
しばらくすると店員が現れてローリーが表に来ると告げられた。
「お忙しい所本当にありがとうございます。あの、また今度是非買い物に来させてください。この布すごくきれいです」
「ああ、客様はお目が高いですね。これはあなたの尋ねて来られたローリー織ったものなんですよ。彼女の織る布はとても評判がいいんです」
プリムローズは驚く。
(えっ?ローリーがこんな立派な織物を織ってるの?私がくよくよしている間にローリーは頑張ったのね。すごいわ。彼女耳が聞こえなくなってすごく落ち込んでたのにほんとに立派だわ…)
「そうなんですか。ローリーに会うのが楽しみです。ありがとうございます。では、失礼します」
プリムローズはお礼の言うと表に出た。
はっとする。
ローリーの面影ははっきり覚えていた。白金の髪に緋色の瞳。少女の頃の面影は活発で元気いっぱいのローリーだったが10歳の時熱病にかかって耳が聞こえなくなってからは人前に余り出なくなって口数も減った。
それでも友達はローリーの家にしょっちゅう遊びに行ってローリーを仲間はずれにはしなかった。
プリムローズもカイトもそれは同じだった。
15歳の時辺境伯に引き取られるまでは…
プリムローズは通りを見渡した。
「あっ!」思わず声が漏れた。
アルナンドとローリーがまるで会話をしているように見えた。
ふたりはアイコンタクトとでもいうのかお互いの思っていることが分かるみたいに見つめ合って微笑みあっている。
プリムローズはそんなふたりにゆっくり近づくとローリーの目の前に立ってゆっくりと話しかける。彼女は10歳までは耳が聞こえていたのでゆっくり話せば話している内容が分かるし喋ることも少しなら出来るのだ。
「あの…ローリー?…私がわかる?」
ローリーは、私の顔をまじまじと見つめる。そしてその顔が一面の笑顔に変わって行く。
「ぷ、りむ、ろー、ず?」たどたどしくゆっくりだけどローリーが名前を言った。
プリムローズはうれしくて思わずローリーの手を取って何度もうなずく。
「うん、そうだよ。ローリー会いたかった。元気にしてた?」
「わたしも、あいた、かった…」
アルナンドが驚いて聞いた。
「彼女がプリムローズの友達か?そうか。会えて良かったな」
プリムローズはそう言えばと聞いた。
「アルナンドさん、ローリーと話してませんでした?何だかそんな風に見えたんですけど」
「ああ、さっき彼女とぶつかって、最初は耳が悪いと分からなかった。でも、彼女とは意思の疎通が出来るみたいなんだ。脳内に彼女の言いたいことが伝わるって言うか…どうも竜人には人の不自由な部分を補う力があるらしいから」
「それであんなに自然に?それってすごいじゃないですか。ねぇローリー。彼はアルナンド。竜人なの。彼ってあなたの考えてることが分かるんだって」
「ぷ、ぷりむ、ろーず、わからない。もっと、ゆっくり…」
「ああ、ごめん。アルナンドさん説明してあげてよ」
アルナンドがローリーにそのことを伝えるとローリーはまた嬉しそうにほほ笑む。
プリムローズの脳内にパチンと電気が灯る。
(これってもしかして凄い事じゃ…竜人とならローリーもお付き合いできるって事とね?)
「アルナンドさん、私たちが結婚相談所をやってるって伝えてもらえませんか?ローリーも結婚できるって!」
プリムローズはうれしさのあまりまくし立てた。
「ああ、わかった」
アルナンドは言われた通りローリーにそう伝える。
ローリーはプリムローズを見て驚いた顔をする。
「そうなの。私、この人と仕事してるの」
ローリーはまたまた驚いてアルナンドを見る。
プリムローズはまた閃く。パチンと手のひらを叩く。
「そうだ!アルナンドさんならピッタリじゃないですか?」
「なにが?」
「ローリーの相手にですよ。ふたりともお似合いですよ」
「はっ?おい、彼女を俺の嫁に?」
アルナンドはこの日、生まれてはじめて気を失いそうになった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます