第13話 これって前世でいうところのシェアハウスってやつですね


 カイトに会いに行った帰りダイルは気を利かせてプリムローズに必要な物を買いに寄ってくれた。


 明日から仕事で着るシンプルなワンピースドレスを数枚と下着やドロワーズなど数枚、それに寝間着まで。


 住まいになる屋敷に帰って来ると、ついでにこれも必要だろうと香りのいい石鹸やブラシなどを渡された。


 プリムローズは「そんなことまでして頂いては」と断ったがダイルは聞く気はなかったらしく無理やり押し付けられた格好になった。


 このままでは気が済まない。


 「ダイルさん。ではこれらはお給料から引いて頂くと言うことでお願いします」


 「そんな事言わないで下さい。これからプリムローズにはお世話になるんですから、気にしないで下さい」


 「でも、ほんとに困りますから」


 「いいえ、その代わり婚活アドバイザーの方をよろしくお願いしますよ」


 「じゃあ、せっかくのご厚意ありがたくいただきます。では、部屋に戻ります」


 「ええ、夕食は一緒に食べませんか?ダイニングルームに7時ではどうでしょう?」


 「でも、夕食はどなたが作るんです?」


 「一応、交代で…今日は私の担当なので男ばかりで騒々しいとは思いますがそこはご勘弁と言うことでお願いできれば…」


 ダイルは苦笑する。


 (確かに、男5人きっとすごい食欲と騒がしさなんだろうな。でも、私賑やかなの嫌いじゃないし…)


 子供の頃は祖母の家にはいつも大勢の人が出入りしていて賑やかだったから。


 「構いません。私、にぎやかな方が好きなので…じゃあ、私も何かお手伝いさせて下さい。これからお世話になるんですから」


 「ええ、まあ今日はお疲れでしょうから、プリムローズは休んでいて下さい。これからはいやでも掃除や洗濯や食事の当番に入ってもらうことになるでしょうからその時はお願いします。あっ、でも掃除とか食事作れるんですか?あっ、失礼しました」


 「いえ、ここ数年はやっていませんでしたが、祖母と暮らしていた頃は何でもやっていたので、でもしばらくは失敗するかもしれませんね。なのでまた色々教えて頂けたら助かりますけど」


 「ええ、もちろんです。何でも聞いて下さい。遠慮なんかしなくていいですからね」


 (ダイルさんって優しい。こんな人が旦那さんになったら素敵だろうな…いや、私ったら)


 プリムローズは部屋に戻ると買ってきたものを片づけたり、出してもらったシーツでベッドを整えたりした。


 突然扉がノックされた。


 「はい、どなた?」


 「ピックだけど入っていい?」


 「ええ、どうぞ」


 ピックがこれまた子ウサギみたいにぴょんと跳ねるように入って来た。


 「プリムローズ何か手伝うことはない?」


 部屋の中をきょろきょろ見回す。


 「ああ、大丈夫です。ベッドとかもきちんと出来たしすべて終わりましたから」


 「なんだ。もうやっちゃたの?僕、手伝おうと思って張り切ってたのに…」


 しょんぼりうなだれるピックに何だか悪いことをした気分になる。


 「ありがとうございます。でも、自分のことですから。あっ、皆さんもここに住んでるんですよね?ピックさんのお部屋は?」


 「ああ、僕の部屋は真向かいだよ。ねぇ、ピックって呼んでよ。それに僕の部屋見たくない?」


 「いえ、そんな失礼なことは出来ません。部屋の場所だけ教えてもらえればピック…」


 「そう?まあ、ピックって呼んでくれたからあまり無理は言えないかな。じゃや、部屋の教えるから来て」


 ピックはプリムローズの手をさっと取ると一緒に部屋を出て真向かいの部屋が自分の部屋だと教えてくれた。



 そしてレゴマールの部屋がピックの隣でブレディの部屋はプリムローズの隣だと教えてくれた。2階の各部屋には手狭だがシャワールームが付いている。


 ちなみにアルナンドとダイルの部屋は1階で、ダイニングルームにリビングルームや書斎、洗濯室やバスルームも1階にあると教えてくれた。


 「ここってすごい大きなお屋敷なんですね。こんな所良く借りれましたね」


 「お金はアルナンドが全部出してくれたんだ。アルナンドは竜帝の息子だけど色々あって辛い幼少期を過ごしたんだ。そんな時期に知り合った僕たちはアルナンドとはかけがえのない絆で結ばれてて彼が竜帝になってもその関係は変わることはなかったんだ。だからこうやって一緒に嫁探しをしてるって事なんだけど」


 「じゃあ、5人はかけがえのない友達って事ね。羨ましいな、そんな友達と一緒に暮らしてるなんて…」


 「プリムローズ君ももう僕たちのかけがえのない友人になったんだよ。今日からよろしくね」


 ピックが何気なくそんな言葉を言ったせいでプリムローズの胸はうれしさでいっぱいになる。


 「え、ええ。すごくうれしいわピック。これからよろしくね」


 そんなところに「「「ただいま!」」」とアルナンド、ブレディ。レゴマールが帰って来た。


 「そろそろ夕食だ。プリムローズ一緒に降りようか」


 ピックはまた手を差しだしたが、さすがにそこまでは出来ないと断った。


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