第9話 こんな人が所長?

 そこにアルナンドが入って来た。


 「なんだ?お客さんか?それって最初の…」


 白金の髪を後ろで束ね颯爽と入って来た彼をみんなが一斉に見る。


 「アルナンド、ちょうど良かった。こちらプリムローズさん。プリムローズさんこっちはうちのボスで所長のアルナンドです」


 「いらっしゃい。それでいい仕事出来たのか?お前たちがちゃんとやるって言うから俺は…ったく。客商売はやめろってあれほど言ったのに、どうしてもやるって言うから…」


 アルナンドはプリムローズの顔をちらりと見るとぎょっとした顔をした。


 不審者のようにきょろきょろしたかと思うといきなりプリムローズから顔を反らした。


 その後は4人にもごもごと文句を言っている。


 プリムローズは動揺する。


 (あの時の竜人!)


 神殿で見かけた時もだが、彼を見ると何だか胸の奥が締め付けられるような気持ちになる。


 きっとあんな夢を見たから後ろめたい気がするだけかもしれないが、それでも彼がそばにいると思うと何だか普通とは違う気がした。


 (もう、そんなはずある訳ないじゃない。だってこの人とは会った事もないんだし。あっ、それに所長って事は一番偉い人じゃない。話勝手に決めたけど良かったのかな?でもさっきはいなかったんだし結婚相談所の話も聞いてないわよね?せっかく仕事が決まったのに…)


 迷った挙句ついダリルに聞いてしまう。


 「あのダリルさん。さっきの話は決まりなんですか?所長にはまだ報告してないんですよね?」



 「何の話だダイル?」


 「ああ、ここを結婚相談所にすることにした」


 「なんだって!結婚相談所?そんなものどうやってやって行くんだ?今でさえ四苦八苦してるって言うのに…」


 アルナンドは狼狽する。


 よくよく見ればアルナンドは整った顔ではあるが、かなりいかつい顔をしている。


 目は三白眼で瞳はとってもきれいな紫色だが、見かけは恐いくらい冷たい感じがして態度もいまいち。


 (あの時は全然わからなかったけど彼って恐いタイプなのかな?それともお坊ちゃんタイプなのかな?優柔不断なのかな?)



 「アルナンド心配するなよ。プリムローズが言うには彼女は前世でそんな仕事をしていたらしい。経験者が付いていればきっと俺達の婚活もうまく行くと思うんだ?結婚したい女の子が来てくれれば気に入った者同士付き合いを始めれるし結婚も期待できるだろう?」


 レゴマールがアルナンドに説明する。


 「お前らな。そんなにうまく行かないからこうやってメルクーリ国にまで来てるんじゃないか…なのに…どうするつもりなんだ…」


 アルナンドの喋り方は相変わらずきつい。


 「アルナンド俺達は番認識阻害薬を飲んでるんだ。何人かの女の子と付き合えばきっと結婚も出来るさ。なっ、そう思うだろう?」


 「そうだけが…」



 プリムローズは何て頼りない所長なんだと唇を歪めた。


 (神殿に現れた時は何だかすごく威厳があったと思ったけど…でも、あの時もずいぶん素っ気なかったわよね。竜帝と言ったってきっと父親の代替わりでなっただけなんだわ。なんだ。もっと頼りがいのある竜人かと思ったのに… 


 まあ、そんな事関係ないか。仕事はどんな仕事でも一生懸命やるつもりだし、まあ自分の時間を犠牲にしてまではやるつもりはないけど…)


 そんな事を思っていた。


 


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