第8話 職業紹介所は結婚相談所に変わりました


 「ねぇ、いいからその結婚相談所とかっていう話聞かせてくれない?」


 ピックは酷く興奮した様子でみんなを呼んだ。


 すぐにブレディ、レゴマール、ダイルが集まって来た。


 奥の部屋に行くはずがまたさっき座っていた椅子に戻りプリムローズはみんなに囲まれた。


 その圧はすさまじいものがあり4人が結婚を強く望んでいるらしいと言う気持ちが伝わって来た。


 「プリムローズさん、その結婚相談所の事を詳しく聞かせてもらいたい」


 そう口火を切ったのはダイルだった。


 「いいですけど…まず結婚を希望する男女がこの結婚相談所に申し込みをするんです。そしてその中から希望に沿うような人を紹介する。そしてふたりに合わせてデートのセッティングをする訳です。うまく行くように相手の好きな物とか興味のあることなどを知らせたりして、それで真剣交際が始まればそこで紹介所の仕事は終わりです。他にもパーティーを開いて何組かをまとめて出合いの場を設けたり集団お見合いって言うのも行います。何組かまとめてパーティーをするみたいなことです」


 4人はプリムローズの話を食い入るように聞いて上半身はグイグイテーブル越しに彼女に近づいて来る。


 「あの…少し下がってもらえませんか?」


 (はぁ…息が、息が…こんな…)あまりにイケメンの猛攻に前世の吉田あかねであっても対処できそうにない。


 「「「「ああ、ごめん。悪ぃ!おっと。すみません」」」」一斉に4人が引く。


 「ですが、問題が…残念な事に、この国に結婚相談所なんてありません。きっと他の国でも同じでしょう。そんな事は、はしたないことだって思われていますから」


 「じゃあ、どうしてプリムローズはそんな事を知ってるんだ?」レゴマールが聞いた。


 (確かに…余計なことを言ったわ。どう説明すればいいんだか…こうなったら前世の事を話すしかない!)


 プリムローズは前回生贄になりそうになって逃げだして死んだことやその前世では全く違う世界で生きていた事を話した。


 その時結婚アドバイザーと言う仕事をしていたことも。


 4人は驚いたが何しろ1000年は生きると言われる竜人、一瞬驚いたがすんなりとそんな事もあるだろうと納得された。


 「では、プリムローズは結婚相談所を開いたらその運営が出来るって事なんですね?」


 そう聞いたのは冷静なダイルだった。


 「まあ、そうかもしれませんが…無理ですよ」


 「いえ、実はこの職業紹介所も始めたばかりで実のところあなたが初めてのお客様だったのです。仕事も募集を張り出しているパン屋や弁当屋などを勝手に紹介したまでで、営業に行ってもけんもほろろに断わられてばかりで頭を悩ませていたのです」


 「でも貴族のお屋敷とかもあったじゃないですか」


 「あれは、たまたまお茶屋で話している会話を聞いて…」すかさずレゴマールが会話に入って来た。


 「じゃあ、本当に私が初めての?」


 (なんてこと!こんな所に来た私がバカだった。もう、こんなところ早く出て行かなくちゃ)


 プリムローズは急いで立ち上がる。


 「あの‥私はこの辺りで失礼しますので」



 ダイルが急いで立ち上がりプリムローズの行く手を阻むように前に立つ。


 「いや、待ってもらえないか。私達にはプリムローズさん。あなたのような人が必要なんです。さっきの話ですが、ここを結婚相談所にする事にたった今決めました」


 ダイルが嬉しそうに高らかに宣言する。


 「ああ、そうだ。ダイルの言う通りここはたった今結婚相談所になった。なぁブレディ?」レゴマールがダイルに続く。


 「あっ、ああ、それがいい。どうせ職業紹介所に来た女の子を口説こうなんて誰が言い出したか知れないが、来てくれなきゃどうしようもないからな。結婚相談所となればたくさんの女の子が来るって事だろう?それってチャンスがいっぱいって事だ、そうだよなピック?」


 「ああ、すごくいいと思うよ。自分の結婚相手も探せて他にも幸せなカップルのお手伝いも出来るって事でしょう?」



 「「「「プリムローズ。ここで結婚相談所の婚活アドバイザーとして働いてくれないか?お願いします!」」」」


 4人は一列に並んでお辞儀をした。


 「そんな…頭上げて下さいよ。そんなことされたらいやって言えなくなるじゃないですか…ああ、もう!わかりました。お仕事お手伝いします。でも、私残業や無理な仕事はしませんよ。今回こそは健全な職場で働きたいんですから」


 「もちろん。勤務時間超過や過度な労働はしなくていいと約束します。では今日からよろしく頼みますね」


 ダイルは語尾を強く言うとまた全員が頭を下げた。


 プリムローズは慌てて自分の頭を下げたのだった。




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