第7話 僕たち竜人なんだ
「決まりだな。じゃあ、早速仕事の説明を」
ダイルは立ち上がると指をパチンと鳴らしてピックを呼んだ。ピックは子ウサギのように飛び跳ねるようにふたりの所に走って来た。
(もう、ここってホントに職場なの?)
プリムローズは心配になる。
「ダイル何?」
「おい、ピック。ここは職場だ。いくら何でもそんな言葉使いはよせ!」
「はーい。それで用は何?あっ、何でしょうか?」
「ああ、プリムローズは今日からここで働くことになった。新しい職業カードの作り方やそのほか諸々教えてあげなさい」
「わかりました。プリムローズ一緒に働くことになったんだ。僕はピック。よろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
プリムローズは一応挨拶をする。
席を立ってふたりで奥の部屋に向かって歩き始める。
ピックはプリムローズが書いた希望用紙を見ながら驚く。
「えっ?プリムローズって18歳なんだ。何だ。僕と同い年じゃない。これってやっぱり運命じゃないかな。僕達付き合わない?」
ピックは気さくに話をする。
(何よ。いきなりなれなれしい。同い年だからって精神年齢はずっと上なんだから)と思いつつもここは大人対応で話を合わせる。
「ピックさんも18歳なんですか。じゃあ仕事はここが初めてとか?」
「あれ?よくわかったね。そうなんだ。だからすごく毎日が楽しくって‥それにゼフェリスから出たのも初めてだし、今度こそ女の子と出会いがあるって期待してるんだ。あっ、僕君みたいな女の子好みなんだ。それにプリムローズってすごくいい匂いするんだ」
そう言うとプリムローズに近づいて鼻をひくひくさせた。
「ちょっと!そう言うのやめて欲しいんだけど。セクハラよ」
さすがのプリムローズは嫌悪をあらわにする。
「せくはら?何それ?」
「あっ、いえ、とにかくむやみやたらにそうやってなれなれしくすると女の子に嫌われるって事。って言うかあなたゼフェリス国の人なの?あの竜人の国の?」
ふと今日の生贄の儀式のときに現れた竜人を思い出す。
あの竜人の白金の髪きれいだったな。それに紫水晶みたいな瞳も…)
「ああ、みんな竜人なんだ。僕達結婚相手を探すためにこの国に来たんだ」
「結婚相手?それってまるっきり婚活じゃない」
「こんかつ?そう言えばレゴマールと話してたよね?それって何?」
「婚活って言うのは、色々な女性の中から自分にあいそうな人を探すために紹介所とかで知り合った女性と話をしたりお付き合いすることって言えばいいのかな?」
「プリムローズ。それって君もやってるの?」
「とんでもない。そんな事!第一結婚する気もないし…」
プリムローズが勢いよく顔を振って全面否定する。
ピックは翡翠色の目を輝かせてもっと聞かせて欲しいと言わんばかりにプリムローズの手を握った。
「そんな事言わないで、ねぇ、プリムローズ僕と婚活しようよ」
「無理です。そんなに女の子と付き合いたいなら結婚相談所にでも行けばいいのよ。そこで婚活パーティーとかお見合いとかすれば…」
(うわっ、私ったら何を…この世界に結婚相談所なんかないじゃない)
「こんかつパーティー?何それ?」
「あっ、違う。貴族がパーティーするように若い男女の出会いの為の…何組かのお見合いパーティーみたいな?」
「ああ、知ってる。帝王主催のパーティーにはみんなが出席してそこで若い竜人の出会いがあるんだ…でも、今は若い竜人はほとんどいなくてそれに竜人は番にこだわるから、ますます婚期が遅れてしまうんだ。それでこの国に嫁探しに来たってわけ…あっ、この話はここだけの話にしてくれる?君にこんな事話したってわかったら僕すごく怒られるから…これ秘密なんだ」
「もちろんよ。私だって竜族の端くれっよ。人間がそんな事を知ったら大変なことになるかも…えっ?でも、今日竜人が言ったの。これからはゼフェリス国とメルクーリ国は互いに行き来しようって…それってあなた達がこの国に来たからなの?」
「プリムローズってそんなこと知ってるなんて驚き…それって竜帝のアルナンドだと思うけど」
「竜帝?アルナンド?あの人竜帝なの?」
「あのさ、君って何者?」
「実は私、今日生贄になる予定だったの。でも、その竜帝が現れていきなり生贄はやめたって言ったから私は解放されてそれで仕事を探そうとここに来たのよ」
ピックは腰を抜かすほど驚く。
「やっぱり僕たち出会う運命なんじゃない?」
「そんな訳ないわよ」
プリムローズも運命的な何かを感じるがピックが結婚相手ではない事は確実だと思った。
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