第58話 すみれ先生の補習授業はセクハラやりたい放題

「はーい、席に着きなさい。すみれ先生の放課後、個人レッスン始めるわよ」

 ユリアの補習を受けた次の日、今度はすみれの補習を受けることになり、教室で一人座っていた拓雄の前にすみれが座る。

 彼女の補習を受けるのは初めてではないが、それでも緊張してしまい、黒のタイツに包まれたすみれの足がとても色っぽく、明らかに拓雄を挑発していた。

「ねえ、拓雄。先生と付き合いなさいよ」

「えっ!?」

 急にすみれがそう言って来たので、拓雄もびっくりして、声を張り上げるが、すみれは身を乗り出して、顔を近づけ、

「何、そんな声出してるのよ。前から言ってるじゃない。私の男になりなさいよ。イエスかハイで答えて。はむ……ちゅっ、んんっ!」

「――っ!」

 突然の告白に動揺していた拓雄に追い討ちをかけるように、すみれが彼の隣に座って、体を密着させて、耳たぶを口でしゃぶる。


「んっ、んん……ねえ、先生と付き合いなさいよ。いつまで、キープし続ける気?」

「き、キープとかそんなんじゃ……はうう……」

 甘い声で囁きながら、すみれが拓雄の股間を手でさすり、胸を腕に密着させて、強引に迫ってくる。

 彼女の甘い香水の匂いが鼻を付き、更に手で股間をさすられ、拓雄も顔を真っ赤にして俯き、この拷問に等しいセクハラ行為に耐えていたのであった。

「これから、二人きりになったら、毎回聞いてやるから、覚悟なさい。全部、あんたのせいなのよ、これは。返事を曖昧にさせた拓雄のね。わかるっ?」

「うう……」

 強い口調でそう宣告しながら、すみれは股間を思いっきり手で握り、拓雄も泣きそうな顔をして、頷く。


 毎回、こんな事をされては、拓雄も耐え切れなくなってしまい、何をしてしまうかわからない恐怖感に駆られていったのであった。

「くくく、いけない先生よねー、私。生徒にこんなことしちゃうなんて♪ ま、拓雄はこんな美人先生をクビに追い込むことはしないって信じてるから。でも、あんまり返事を引き延ばすと、先生も我慢出来なくなっちゃうなあ……このままだと、妊娠しちゃうかも。わかるっ? 妊娠の意味が?」

 と、未だに気持ちが定まらずに、返事を躊躇していた拓雄に業を煮やしたのか、すみれが怒鳴るような口調でそう迫り、拓雄も彼女の言葉を聞いて恐ろしくなる。

 まさか、本気で言っているのかと、拓雄も担任の女教師にまとわりつかれながら、思っていたが、すみれは一向に引くつもりはなく、このまま押し倒して、既成事実を作ってやろうかと、本当に思っていたのであった。


「ふん、しょうがないわね。じゃあ、先生にキスしなさい」

「え?」

「キスよ。今日はそれで勘弁してやるわ。それとも、それ以上のこと、して欲しい? 今日、先生、危ない日だけど、それでもよければいいわよ。ちゃーんと、口づけをするのよ、わかった?」

「うええ……は、はい……」

 すみれが着ていたスーツを脱ぎ、下着を少し見せながら、教師らしからぬ卑猥なことを口にしてきたので、拓雄も泣きながら頷き、すみれと向かい合って見詰め合う。

 そして、徐々にすみれに顔を近づけ、

「ん……んっ、んんっ!」

 すみれの唇に軽く触れた所で、彼女が拓雄の顔を掴んで、思いっきり唇を啄ばみ始める。

 思いもかけず強い吸引を受け、拓雄も目を見開いて、息が詰まりそうになっていたが、すみれは構わず、教え子の顔を掴み、濃厚な接吻を教え込んでいった。

「んっ、ちゅっ、んん……はあっ! はあ……ふふ、今日はこれで良いわ。でも、次の補習でもまた返事聞くから覚えておきなさい」

「は、はいい……」

 ようやく口を離すと、すみれは妖艶な笑みを浮かべながらそう告げ、拓雄も目を回しながら頷く。

 こんな事をされては、拓雄も身も心も持たないと思ってしまい、憂鬱さは増すばかりであった。


「教科書出しなさい。ついでに、補習授業してやるから」

「は、はい」

 すみれが着ていたスーツを調えて立ち上がり、テキストを取り出すと、今日やった授業のおさらいも兼ねて、二人きりの補習が開始された。

「今日は三角比の正弦定理のおさらいをするわよ。教科書の……」

 普段の授業より、機嫌良さそうな表情で、すみれが補習授業をしていき、拓雄も彼女がホワイトボードに書いていた図形や数式を書き写していく。

だが、授業にまともに集中出来るはずはなく、すみれの講義は半分近く頭に入らなかったのであった。


「んじゃ、今日の授業は終わりね。あ、そうそう拓雄」

「はい?」

 一時間弱ですみれの補習授業は終了し、帰り支度をしていた拓雄に、

「今度の先生とのデート、何処か行きたい所ある?」

「えっ? デートって……」

「何、しらばっくれてんのよ。デートはデート。今度の日曜はユリア先生とだけど、次は私よ。文句ある?」

「い、いえ。でも、いきなり言われてもよくわからなくて……」

「ったく、しょうがないわね。じゃあ、先生が勝手に行きたい所、連れてくわよ」

「はい……」

 本当に毎週、三人とデートさせられるのかと、拓雄も頭を抱えながら、教室を出て、家路に着く。

 流石に毎週、日曜を彼女達の為に空けないといけないのは、拓雄も憂鬱であり、足取り重いまま、廊下を歩いていった。


「あ……」

 一階の昇降口の近くまで行くと、拓雄はユリアとバッタリ会い、しばらく彼女と見つめ合う。

 ユリアはいつもと変わらない淡々とした顔で、拓雄をジッと見ていたが、

「今、帰り?」

「はい。あの……さようなら、先生」

「うん、さようなら。気を付けて、帰るのよ。あ、そうそう、拓雄君」

「はい?」 

「これ」

「?」

 帰りの挨拶を交わした後、ユリアが一枚のメモ用紙を差し出し、拓雄も何事かと受け取ると、ユリアは一礼して、足早に職員室に戻る。

 拓雄は何だろうと思い、メモ用紙を開いて見てみると、

『日曜日。午前十一時に私の家に』

 と、キレイな文字で書かれていた。

 次の日曜日、ユリアとまた会うことになり、ドキドキしながら、拓雄もメモ用紙を鞄に入れて、下校していったのであった。

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