第47話 先生たちは全く反省していなかった

「おはよー、拓雄!」

「お、おはようございます……」

 翌日、拓雄が学校に行くと、いつもと同じ様な元気な声ですみれに挨拶される。

「くすくす、何ビクビクした顔をしているのよ。駄目よ、朝から、そんな暗い顔をしちゃ。来なさい」

「あ、あの……」

 すみれは拓雄と顔を合わせるや、すぐに彼の手を引いて、近くの空き教室に連れて行く。


「んー? 朝から態度が悪いわね、拓雄。せっかく、先生が挨拶してやったのに、もっと嬉しそうにしなさいよ

「はうう……」

 教室に連れ込むや、すみれは後ろから拓雄に抱きつき、股間を手で揉み始める。

 昨日、理事長に注意を受けたばかりなのにも関わらず、全く反省する様子もないすみれに拓雄も驚いており、そんな幼い教え子をすみれも昂ぶった目をして弄んでいた。

「んっ、ちゅっ、ちゅっ……んっ、拓雄~~、まさか先生が理事長や教頭に注意されたからって、あんたにこういう事しないとでも思った? 甘いわよ、甘いわ。拓雄も学園も先生がこうする事を庇ったんだから、遠慮なんかする理由ないの。わかったあ?」

「そ、そんな……んっ!」

「んっ、んんっ!」

 昨日、理事長達の前ですみれたちを庇った事で、少しは彼女らも反省する事を期待していたが、すみれはそれがどうしたとばかりに、黙らせるように口付けを交わしていく。

「ちゅっ、んん……んっ、ちゅっ、んんっ! はあ……んーー、拓雄……あんたは先生の物よ。私の男なの。だから、学園だろうがどこだろうが、先生がセックスしたいと思ったら、あんたは応じる義務があるわ。良いわね?」

「うう……」

 耳元で甘く囁きながら、更に股間を擦っていく。

 もはや、強制わいせつの領域に入っているが、すみれはむしろ顔を真っ赤にして、呻いている拓雄を見て、優越感に浸っており、豊満な胸を押し付けて、どんどん追い込んでいった。

「ふん、まだわかってないみたいだけど、もう職員会議が始まるから、これで開放してやるわ。んじゃねー」

 と告げて、すみれは拓雄の下を去り、やっとすみれから開放されホッと息をつく。

 まさか、朝からこんな事をされるとは思わず、拓雄も泣きそうな顔をして呻くばかりであった。


「えーと、今日は版画を行いますね。やり方に関して説明するので、教科書の七十五ページを開いてください」

 美術の時間になり、美術室で彩子の授業に聞き入る拓雄。

 すみれと同じく、授業では全く普段と変わらない様子であり、穏やかな口調で、版画のやり方を説明して息、彼女が今、何を考えているか、わからなかった。

「はい、それじゃあまずは下絵を始めましょう」

 と言い、彩子に言われた通り、版画にする下絵を画用紙に描き始める。


「くす、何かわからない事でもある?」

「え? い、いえ……」

 拓雄が下絵を描いている最中、急に背後から彩子に話しかけられる。

「そう。何か先生の事をジロジロ見ていたから、聞きたい事でもあるのかと思って。わからない事があれば遠慮なく聞いてね」

「はい」

 彩子がそう告げた後、室内を巡回して行き、作業に没頭している生徒達の様子を伺う。

「先生、良いですか?」

「どれどれ……うん、良く描けてると思うわ。それじゃ、次の作業に……」

 時折、質問に答えながら、彩子は版画の指導をしていき、そんな彼女を見て、拓雄も改めて彩子が生徒に親身に接している良い先生だと感じていた。

 彩子は生徒に慕われている良い先生で、自分はそんな彼女が好きだったので、クビにはなって欲しくなく、その一心で昨日は庇っていたので、美術教師としての彩子を見て、そうして良かったと心から思っていた、


「拓雄君、ちょっと良い?」

「え……あ、はい」

 美術の授業が終わり、急に彩子に呼ばれたので、何事かと彼女の元へ向かうと、

「悪いけど、ちょっとだけ版画で修正して欲しいところがあるの。時間は取らせないから、来てくれない?」

「あ、はい」

 と言って、彩子は彼を準備室へと連れて行く。

 何か問題でもあったのかと首を傾げながら、拓雄も迂闊にも美術準備室へと入っていった。


「あの、何か……」

「えへへ……えいっ!」

「うわっ!」

 準備津に入るや、彩子はいきなり彼に抱きついて、頬にキスをする。

「ちゅっ、ちゅっ……くす、昨日はありがとう……先生が悪いのに、あなたが庇ってくれてとてもうれしかったわあ……」

「そ、そうですか……あの、版画で修正ってのは……」

「そんなの嘘に決まってるじゃない。あなたと二人きりになりたかっただけ♪ 先生、拓雄君の事、ますます好きになっちゃったなあ……先生とお付き合いしてくれる?」

「うう……」

 すみれに続き、彩子も全く懲りてる様子はなく、それどころか、彼の股間を手で摩りながら、執拗に交際を迫ってくる有様であった。


「くす、拓雄君、本当に優しいのね。先生、あなたの彼女になりたいなあ……今すぐ返事してくれない?」

「あ、あの……それは……」

「先生の事、好き?」

「っ! えっと……はい……」

「きゃーー、嬉しいわ。じゃあ、今ので返事は成立ね。今日から私たちは正式にカップルって事で……」

「あ、あのっ! そういう事じゃなくてですね……」

「え?」

 拓雄に好きと言われて、彩子も浮かれて、彼に密着していたが、拓雄はすぐさま彼女を引き離し、

「好きっていうのは、その……先生としてはって言うか……昨日は、彩子先生やすみれ先生、ユリア先生に教師を続けて欲しくて言ったんです……だから、そのお付き合いとかは……」

「んーー? つまり、どういう事かしら、拓雄君? 先生にわかるように説明してくれない?」

 うまく説明できず、拓雄も困っていたが、彩子はそんな彼を見て、笑顔でいながらも、乾いた声で迫り、明らかに怒っている様子の彼女を見て、拓雄も怖くなる。

「ですから、その……お付き合いはちょっと……んっ!」

「んっ、んんっ! ちゅっ、んふうう……んっ、ちゅっ!」

 断りの返事を遮る様に、彩子が唇を重ねていき、激しい接吻を交わしていく。

 息が詰まりそうな程、唇に吸い付かれ、混乱していたが、彩子は構わず言い聞かせるようにキスを続けていった。


「んっ、んんっ! はあ……くす、何だかよくわからないけど、先生ねえ……拓雄君の事、大好きなの。すみれ先生やユリアちゃんと同じくらい好きって意味かしら、今のは?」

「う……その……はい」

「そう。二人とも美人だものねえ。でも、先生、あなたと結婚を前提にお付き合いしたいなあ……嫌じゃないのなら、なおさら付き合ってほしいの。昨日、理事長から庇ってくれたって事は先生の事、君も好きなのよね?」

「だ、だからそれは先生に辞めて欲しくなくて……」

「先生ね。今の仕事、好きだけど、拓雄君と比較して大事って訳でもないのよ。あなたと教師の職を選べって言われたら、先生、あなたを選ぶわ。それが嫌って事?」

「そんなことは……」

「ふふ、まだ難しかったみたいね。とにかく、先生、もう拓雄君の彼女だから。そのつもりで。すみれ先生とユリアちゃんと仲良くするのは許すけど、程ほどにね。それじゃ」

 と、言い残して、彩子も美術準備室を後にする。

 すみれも彩子も拓雄が想像していた以上に真剣で好意が重く、とても受け止められそうにない程で、彼も途方に暮れるばかりであった。

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