第34話
「ここがフィアーズ伯爵邸か」
リリカたちはフィアーズ伯爵邸に到着し、乗り込んだ。屋敷の中は眩しいぐらい綺羅びやかな場所だった。見せつけるように綺羅びやかな装飾品が至る所にあり、絵画やら美しい花瓶やらが飾られていた。まるで美術館のようだ。
「こんなお金、一体どこから……」
そうレイリックが呟く。
フィアーズ伯爵家は名門貴族というわけではないにもかかわらず、他のどの伯爵家をも凌ぐ豪華さだ。いくらなんでもここまで豪華なのは妙だ。
「誰だ!!」
この屋敷で雇われている護衛だろう者たちが現れた。この屋敷に乗り込んでから、それらしき者の姿を一切見かけなかったが一応はいたようだ。
「僕は王太子レイリック・フォン・アルマーニだ。大人しくしてくれるのなら君たちには何もしないでおこう」
レイリックがそう告げると王太子相手に何をしても無駄だと悟ったのか、はたまた伯爵家の者たちを王太子に楯突いてまで守る気はないのか護衛は動きを止めた。
「伯爵及び伯爵夫人はどこにいる?」
「この時間でしたらダイニングに皆様お集まりかと」
「へぇ……ちょうど良いね」
まとめて捕らえられる。
「スカーレットさんもそちらに?」
「っいえ……スカーレットお嬢様とフレディお坊ちゃまは別室にいらっしゃいます。ご案内いたします」
「お願いしますわ。ではレイリック様、私はスカーレットさんのところに向かいます」
「ああ、頼んだよ。そうだ、スカーレット嬢とフレディ殿を伯爵たちのところまで連れて来てくれないかな」
「承知いたしました」
「ロベルトは伯爵の執務室に向かってくれ。諸々の書類を確認したい」
「かしこまりました」
リリカたちは一旦別行動を取ることになった。
レイリックは護衛に案内されダイニングに到着した。護衛はレイリックたちを案内するとそそくさと去って行った。
ドンッと大きな音を立ててダイニングの扉は開かれた。
「きゃっ」
「何者だ!! 護衛は何をしている!?」
「護衛の人たちが案内してくれたんだよ。余程慕われていないらしい」
少しでも主人を慕う気持ちがあれば、居場所をあっさり吐くような真似はしないし、案内もしない。
「なにっ!?」
「捕らえろ」
禄に戦うことは出来ないらしい。抵抗こそされたか、すぐに捕らえられた。
「私を誰だと思っている!! なんの権限があってこんなことを」
「離してちょうだい!!」
「離しなさいよ!! 私は伯爵令嬢よ!?」
いきなり捕らえられた伯爵と伯爵夫人、アイラは叫ぶ。
「おいっ、態度を改めろ!! この方は王太子殿下だぞ!!」
「なっ!?」「「えっ!?」」
伯爵たち3人は揃って驚きの声を上げる。
「伯爵、君とは以前パーティーで会っているんだけどね。あのときは尊敬しているだのなんだの言ってすり寄って来たのに、あの言葉は嘘だったのかな。服装が違ったら分からないなんて、眼科医に診てもらうことをおすすめするよ」
「っ!!」
レイリックの言葉を聞いた伯爵は顔を真っ赤にしている。
「まあ、今はそんなことよりも伯爵と伯爵夫人、君たちは王宮への届け出を偽造した。知っているだろうけど、これは大罪だ」
「なんの証拠があってこのようなことを?」
伯爵は証拠などないはずだ、と謎に自信があるようだ。
「僕たちが証拠もなしにこんなことをするとでも? すでに証拠は集まっているよ。僕たちを侮らないことだね」
「何を言って!!」
纏めて話したいし、話しの続きはスカーレット嬢とフレディ殿が来るのを待ってからしようかな。彼女たちにも関係あることだし。
そう思い、しばらく無言のまま待つことにしたレイリックだったが、伯爵たちは側で騒ぎ続けていた。
「はぁ……静かにしてくれ」
レイリックが冷たい声で睨みを利かせながら、そう静かに告げると、皆、危険を感じたのか一斉に大人しくなった。
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