第16話
コンコン
ノック音が聞こえた。
ビクッ
リリカはあれ以来1度もレイリックとは会っていない。何かと忙しいようだ。レイリックが来たのかと思い、身構えたリリカだったが、
「お嬢様、ロベルト様がお見えです」
「珍しいわね。お通しして」
「かしこまりました」
「ロベルト様、どういったご要件でしょうか」
「王太子殿下の代理で参りました。実は1週間後隣国エスフィート帝国の第2皇子殿下がお越しになる予定なのですが、リリカ嬢にも王太子殿下の婚約者として、お会いしてほしいのです」
随分急だけど、何かあったのかしら。
「承知しました」
エスフィート帝国の第2皇子殿下、確か名前はジュリアン殿下だったわね。滅多に表舞台に出ないと聞いたけど、どんな方なのかしらね。
そして、1週間が経った。今日がジュリアン殿下たち御一行をお迎えする日だ。国王陛下と王妃様は現在、外遊中だ。だから王太子殿下と次期王太子妃であるリリカだけでお迎えする。
「……」
リリカは初めての公務に緊張している。しかも皇子殿下とお会いするなんて失敗したらどうしよう、と不安で仕方がなかった。
「大丈夫だよ。普通にしていれば」
「はい……」
深呼吸してどうにか落ち着けようとする。
そのとき、「皇子殿下御一行が到着されました」という声が聞こえ、ギイッと音を立て、扉が開く。
皇子殿下らしき豪華な衣装を着た男性と、その男性の後に2人の男性が続く。謁見の間の中央付近まで来た一行は礼をする。
随分人数が少ないのね。帝国は大きな国だから、もっと人数が来るものだと思っていたのに。
「お顔をお上げください」
「はい。エスフィート帝国より参りました第2皇子ジュリアン・ディ・エスフィートと申します」
珍しい……。
ジュリアンは黒髪黒目の皇子だったのだ。この国では全く見かけたことのない色だったため驚いた。
「初めまして。僕はアルマーニ王国王太子レイリック・フォン・アルマーニです。こちらは僕の婚約者で」
スッ
「お初にお目にかかります。エバルディ公爵家長女リリカ・エバルディと申します」
「皆様、お疲れでしょう。どうぞ、ごゆっくりお過ごしください」
「はい。ご配慮ありがとうございます」
ジュリアンたちは退出した。
ふぅっ。
ようやく一息付けた。これで今日は終わりだ。あとはジュリアンとレイリックの会談が主で、リリカは最終日ジュリアンたちが帰国する際に挨拶するだけでいい。
実際には短い時間だったけど、物凄く長かったような気がするわ。レイナにリュカでもいれてもらって、今日はもうゆっくりしましょう。
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