第10話
翌日、ネックレスを着けて、王太子妃教育に向かうと
「あら。このネックレス、魔力を感じますわ」
とソフィアに言われた。
「魔力ですか? レイリック様からいただいたものなのですが」
「婚約者にご自身の魔力を込めたものを贈るのは昔からよくあることよ」
「そうなのですね」
そのような話しは初耳だった。
あれから、言われた通りに毎日ネックレスを身に着けている。
「今日は久しぶりの休日だから、庭園にでも行こうかしら」
しばらくすると庭園に着いた。
「いつも、きれいなお花がたくさん咲いているわね」
庭園はかなり広い。庭園の終わりが全く見えない。
そのとき、ひょこっと何かの尻尾が見えた。覗いてみると、
「白ウサギじゃない!!」
白い綺麗な毛並みをしたウサギが草を食べていた。
パチッ
白ウサギと目があった。白ウサギはどこかに向かって走っていった。
「ま、待って!!」
リリカはつい白ウサギの後を追いかける。そして、
「こ、ここはどこなの!?」
気が付いたときには知らない場所にいた。王宮内で迷子になってしまったのだ。
「いや、広すぎるのよ!!」
辺りにはたくさんの木々がある。おそらく森だろう。城内には森もあると聞いたことがある。白ウサギを追いかけるのに夢中で周りを見ていなかった。
「それに白ウサギも見失うし……ツイてないわね」
ガサッ
「もしかして、さっきの白…ウサギ……」
な、何これ!?
先程の白ウサギの親だろうか。
にしてもサイズ大きくない!?
リリカの身長の倍近くある白ウサギが目の前に現れたのだ。横には先程見かけた白ウサギがいる。
こんなサイズの動物がいるはずがない。いたとするならそれは……
まさか、魔物だったってこと? 詰んだ……。
魔物とは魔石を取り込み、人々の負の力が集まって生まれる生き物だ。魔石は魔力が籠もっている石だ。魔物を倒すには魔石を破壊する必要がある。しかし、リリカは魔法も剣もあまり得意ではなかった。
得意ではないけど、やるしかないわ!!
なにも攻撃する必要はない。
防御して、逃げ切る!!
魔法には第一級魔法から第十級魔法まで存在する。第一級魔法が使える者はごく僅か。王国騎士団員のほとんどが第三級魔法までしか使えない。
そして、リリカは第五級魔法までしか成功したことがなかった。
「行くわよ!! 第五級、防御魔法!!」
リリカが叫ぶと同時に魔法が発動した。ドーム状の魔法がリリカを覆った。
とっとと逃げましょう。
そう思い、逃げようとした次の瞬間、パリンッという音が周囲に響いた。リリカの防御魔法が一瞬にして崩れ去った。どうやら白ウサギが大きな腕を振るい、防御魔法に爪を立て、叩き割ったようだ。
サアっ
リリカは青白い顔をして、身体は震えている。思わず座り込んでしまいそうになる。
っダメよ、座り込んでわ。
自身を鼓舞し、身体を奮い立たせる。
また白ウサギの腕がリリカの方へ伸びてくる。
「っいや!!」
キンッ
「え?」
目の前にドーム状の防御魔法が出来ている。それが白ウサギの攻撃を阻んでくれているのだ。
「一体、何が……」
ペンダントが光っている。
『お守りだ』レイリックにそう言われたことを思い出した。
一方、その頃、レイリックの執務室では
ピカッ
「なんだ!?」
急にブローチが光り出した。
「これが光ったということはリリカ嬢が危ない!! 場所は城内の森だ。すぐに騎士に向かうように伝えてくれ!!」
「分かった!!」
頼むっ!! 無事でいてくれ!!
レイリックはロベルトに指示を出すと、窓を開け、祈るような気持ちで執務室を飛び出して行った。
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