report.4:耳かきによる癒やしの効能について

(室内で待機する主人公、しばらくの沈黙の後、ガラガラと扉の開く音がする)

★近・中央

「さて、本日の施術は……耳かきだ。今まではマッサージ……いわゆる身体的な癒やしを主題を置いて施術を行ってきたが、癒やしというのは本来精神的なものであると私は考えている。」


「とりわけ精神に強く影響を与えるとした場合……やはり音の存在は欠かせない。ASMRというものを聞いたことはあるかい? ……ん、なんだ変な反応だな。まぁいい。」


「ASMRというのは、主に聴覚からの刺激によって、心地よい、脳がゾワゾワするといった反応・感覚を得る事を言う。なお、実は科学的な根拠はあまりないのだが……私はこれは実際に発生しうる生理的現象であると思う。」


「しかしまぁ、これは私個人の意見だ。そこで君の意見も聞いてみたいと思い……君に耳かきを施すことで、君が実際にそのような感覚を得られるかどうか。そういった事を今日は試してみたいと思う。……広さは足りてるし、ソファを使おうか。」


(室内を歩き、ヒロインがソファに腰掛ける音)

「さぁ、頭を私の膝に乗せるようにして、ソファに横になりたまえ。いわゆる膝枕、というやつだ。ほら、遠慮せず、頭を私に預けてくれ」


(ソファに横になり、布がこすれる音)

★近・右

「……よし、いい子だ。ではさっそく、施術を始めていこうか。」


「最初はこの、竹製の耳かき棒で汚れを取っていく。……あぁ、安心してくれ。これは新品だ。君のために、わざわざ新しいものを用意したんだぞ。感謝してくれよ、ふふっ」


「では、まずは見ていくが……ふむ……端的に言って、汚いな。自分ではあまり掃除はしないのかい?」

「……なるほど。まぁ医学的に耳かきは必要ないという話もあるが……やはり綺麗な方が私は良いと思うぞ。今度から、耳かきも定期的に行っていくか……まぁいい。耳かき棒、中に入れていくぞ。」


★密着・右

(耳かき棒が耳の表面をなぞる音)

「ん~……おぉ、ひと搔きだけでこんなに汚れが取れたぞ。この汚れはティッシュで拭き取って……」


(ティッシュを取り出して、汚れを拭き取る音)

「よし、取れた。ではまた、耳かき棒を入れるぞ……」


(継続して耳かき音が流れる)

「すりすり……ほじほじ……ん、どうした? ……子供っぽい? あぁ、声に出ていたか……だが子供っぽいと言ったら、今の君の方がよっぽど子供っぽいぞ。母親の膝に身を預けて、すっかりリラックスしている子供のような……それに君、こういうの、嫌いじゃないだろう。……もうそこそこ長い付き合いだからな。君の趣味も少しは理解しているさ。……さ、続けようか。」


「ほじほじ……かりかり……この、耳かき棒が耳の穴をなぞるこの感触が、音が、癒やしを与えてくれるらしい。……かりかり……す~りすり……表情が和らいで来ているな。気持ちいいかい? ふふ、それは良かった。」


「また汚れてきたから、汚れを拭き取って……更に奥の方、進めていくぞ。」


「奥のほうが敏感だから、さっきより慎重に……かり、かり、かり……大丈夫か? 痛くはないかい? ……そうか。じゃあ、続けるぞ……かり、かりかり、かり……ん~、流石に奥は見にくいな……少し覗き込むぞ。」


★超密着・右

「んん~……すぅー……ふぅ……明かりが無いとあまり見えないが……」


★密着・右

「まだ少し、汚れが残っているな。この辺り……かりかり、かり、か~りかり……ん~……しょっと。よし、取れたかな。」


「目に付くような大きな汚れはこれで取れたから、残りは……」


(ガサゴソと物を取り出し、綿棒の蓋を開ける音)

「この綿棒で、細かい汚れを取り除いていこう。……では、また中に入れるぞ。」


(継続して綿棒での耳かき音が流れる)

「すりすり……すりすり……どうだい? 竹の耳かきは感触も音も硬質的だったが、綿棒はまた違った、やわらかい感覚だろう。すり、すり……すりすり……この感覚が気に入ったら、今後は自分で耳掃除を……いや、何でもない。……あぁ、何でもないわけではないんだが……」


★超密着・右

「君の耳かきは、今後も私に任せて欲しいんだ。研究のためにも、ね。……ふーっ。」


★密着・右

「ふふ、驚いたかい? 綿棒でも取り切れない、小さな汚れを飛ばすための耳ふーだよ。……さて、右耳はこれで終わりだ。反対側を向いてくれるかい?」


(寝返りをうって布の擦れる音)

★密着・左

「ん、従順でよろしい。やっぱり君は私のいい助手だ。さぁ、耳を出して、私に見せてくれ……」


「ふむ……こっちも同様だな、汚れが多い。まずは耳かき棒で、大きな汚れを排除していく。」


(継続して耳かき音が流れる)

「かりかり……ほじほじ……ん~、よく取れる……耳かきされてる側は気持ちいいと聞くが、耳かきする側も、また別の気持ちよさがあるかもしれない。流しのしつこい汚れを綺麗にできた時のような……ほじほじ……ほじほじ……」


(ティッシュを取り出して、汚れを拭き取る音)

「汚れを綺麗に拭き取って……もう一度、耳かき棒、挿れるぞ……」


(継続して耳かき音が流れる)

「んん~……かり、かりかり……。少し場所を変えて……かりかり、ほじ、ほじ……奥の方も、慎重に挿れて……ほじ、ほじ……かり、かり……痛かったら、すぐに言ってくれ……? ……かりかり……かり、かり……よし、次は綿棒だ。」


(継続して綿棒での耳かき音が流れる)

「すりすり……すりすり……穴の周りを一周するように、くるくる……くーるくる……すりすり……すり、すりすり……。ん、良い感じだな。じゃあ、仕上げの耳ふー、するぞ?」


★超密着・左

「行くぞ? せーの……ふぅー……ふー、ふー……ふっ~~~……。」


★密着・左

「ふふ、どうだ? 気持ちよかったか? 参考にした作品の見様見真似だったが、上手く出来ていただろうか……あぁいや、何でもない。さぁ、頭を上げてくれ。」


(起き上がって布擦れが起きる音)

★近距離・中央

「さて、気分はどうだい? 施術前より耳周りが快適になったとか、あるいは気分が軽くなったなどの精神的な作用はあるかな? あぁ、すぐに答えてくれなくてもいい、が……ふむ、良かった、か……ありがとう。科学的根拠のない実験だったのでね、効果があるかは些か不安だったが、杞憂だったようだ。」


「あまり連日で耳かきするのは耳を傷つける必要があるから、何日も連続で、というわけにはいかないんだが……君さえ良ければ、今後も週に1度くらいのペースで、この施術を行わせてくれないか?」


「……ふむ、ありがとう。そうと決まれば道具の準備だな。耳かき棒の材質による効果の違いを試したいし、綿棒も形状や柔らかさの違う種類がたくさんある。また今回は行わなかった梵天や、ピンセットなどの他の道具も試したい……今から次の施術が楽しみだな、助手くん!」

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