四十話 チャラ男再びって…もうええわ
あれからしばらく経って、俺は
学校の時以外は殆ど一緒にいるというなんとも幸せなことだ、たまに
風の噂だが、どうやらあのチャラ男が帰ってきたらしいが、家に姉がいないことをどう思っているのか気になるところだ。
今日もバイトを終えて花澄さんと一緒に家に帰る…その途中での事だ。
例によってまた莉乃が先に帰っていったはずなのだが、彼女がこちらに走ってきた。
「はっハル君!」
「あ?」
かなり血相を変えており、その様子はいつもよりも切羽詰まっていることか窺える。
「待てよ裏木!」
その後ろからやって来たのはあのチャラ男である。そういえば戻ってきたんだっけ、来なくていいのに。
「ひっ…たっ助けてハル君!」
よほど怖い目に遭わされたのだろう、莉乃が顔を青くして助けを求めてくる。
「花澄さん、莉乃を頼んだよ」
「えっ、ぅっうん」
こちらに来た莉乃を花澄さんに任せる。
花澄さんは何が起きたのか理解が遅れているようで、だいぶ困惑している。
俺は二人を庇うように前に出てヤツと対峙する。
「て…めぇはっ、
ヤツが俺の顔を見たその瞬間凄い顔をしてがなった。うるせぇな。
「ちょっ、晴政くんにそんな態度…」
「姉ちゃんも姉ちゃんだ!どうしてこんなヤツ…なんでだよ!」
おいおい、俺に噛みつきに来たと思えば姉にまでそれとは相当狂っているようだな。
「えっ?えっ?」
「どうしてこんなヤツと付き合ってるんだよ!」
凄く辛そうな声と顔だが、同情する気も起きん。まぁそうなるように仕組んだのは俺だから当然だが。
「どうしてって、晴政くんは…」
「ソイツはそこの裏木にDVしてたんだぞ!」
「え!?」
また随分懐かしいことを言っているが、そんなことを花澄さんが信じるわけもない。
「嘘だよね、晴政くん?」
「もちろん、なんなら本人に聞けばいいんじゃない?」
まぁ当の本人がこんな時に、加害者ではずの俺に助けを求めたのだから、その話が真実である可能性は極めて低いだろうと思うはずだけどな。
というか普通に俺の方を信じるだろう、DVした男と一緒に仕事してるくらいだしな。
それが事実なら距離を置くものだ。
「それは…それはあの時私がついた嘘で…あれは…」
「あぁ、今更どうこう言わねぇよ。もう終わった話だ」
クソ親父から取るもん取ったら終わった話だったのに、トチ狂ったチャラ男とクソ親父のせいで話がややこしくなったんだ。
まぁそれがなければ花澄さんと会うことはなかったから結果オーライと言えるだろうけどな。
とはいえ今の状況でそれは言えんか。
「そっか…色々大変だったんだね」
「まぁその辺の話はちゃんと話すよ」
ここまで彼女を巻き込んでしまった以上、話さなければいけないと思う。
いつまでも彼女を欺き続けるのは心苦しいからな。
「なんで、なんで信じるんだよ姉ちゃん!」
「なんでって…」
なんでもなにもないだろう、あまりにも無理やり過ぎるからな。
荒唐無稽というやつだ。信じるに値しない話であり根拠の無い噂だ。
「ふざけやがって…
「やめてよ!晴政くんはそんな人じゃない!」
おぉ、花澄さんが怒った。
びっくりだが、まぁ確かに俺がその立場なら怒るだろうな。
「ちくしょう…なんだよ…」
花澄さんから怒られたことでチャラ男がショックを受けて俯きながらボソボソと何かを言い始めた。どこか様子がおかしい。
「ふざけやがって…ぶっ殺してやる」
そう言ってヤツは顔を上げた。その目は明らかに異常だ。
そのまま俺の所に走ってきて殴りかかってきたが、そんなものを受けることは無い。
その拳を掴んでその鳩尾に一発入れると、そのまま距離を取った。マジか。
加減をしたつもりはないんだけどな。
「ゲホゲホッ…クソォ」
とはいえダメージは入っているようで、少しフラっとしている。
しかし油断は出来ない、こういう手合いは正常な思考も判断も出来ない上に何をしてくるか分からない。二人の元には絶対行かせられない。
「死ねやオラァッ!」
またもや一直線に殴りかかってくる。
先程同様にもう一発入れようとしたのだが、ある事に気付く。
もう日が沈んだ時間帯で辺りが暗かったのもあってヤツの手元が良く見えていなかったが、その手には小型のナイフが握られていた。
突然のことで避けることができずに刺され…なんて事も予想済み。
ナイフを持った手の手首を掴んで思い切り捻ってやると、ヤツはそのままナイフを落とした。
振り回されたら危なかったが、さすがに小型ナイフでは突き刺さない限りはなんとかなる。
動脈さえ守れればね。
落ちたナイフを蹴ってヤツが取れないようにして思い切り足を蹴った。
すると俺にバランスを崩されたコイツは思い切り転んだ。
とはいえ油断は出来ないので拘束をした状態で、花澄さんに警察を呼んでもらおうと思ったのだが、大丈夫かな?
「うん、分かった」
まさかとは思ったがあっさり呼んでくれた。
ここまでのことをしたとはいえコイツは彼女と弟だ、多少なりとも情があると思ったが…。
「やっていい事と悪いことがあるもん、ちゃんと反省して」
彼女は鋭い視線をチャラ男に向けた。
それを受けたヤツは完全に意気消沈し、項垂れたのだった。
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