彼女が父と''仲良し''してたなんて信じられるか？

三十九話 花澄さんと同棲しよう

「そういう訳であんまり迂闊なことをしないようにな」

「ごめんなさい」

　今は希（のぞみ）に説教中だ。

　あんまりあぁいう画像を人の手に渡さないように、例え信用できる人であっても…という話をしていた。

「まぁアイカなら大丈夫だけど、ただ花澄（はすみ）さんの様子も写ってるわけだからなぁ…」

　それをアイツが持ってるのはちょっと不安だ。

「送信するんじゃなくて他の方法で見せるべきだったかぁ…」

「というかアイツの目の前で花澄さんとイチャイチャすれば良い話だからな、ある程度は想像させてやりたいところだし」

　自分で色々考えた方がダメージでかそうだからね。

「今度はもうしないようにするけど…実はもう一人、送っちゃったんだ…」

　希が顔を背けながらボソボソとそんな事を言った。

「もしかして…美智（みさと）か？」

「……はい」

　少しだけ時間を置いた彼女が縮こまりながらそう答えた。なんてことを…。

「どうりでアイツ、俺の顔見た時赤くなってたのか。様子もおかしかったしどうしたのかと思ったけど、それなら納得だよおバカ」

「ごめんなさい…」

　まったく、もうするなよ？と釘を刺しておいた。

　それはそれとして、 今考えるのはあのバカから花澄さんを出来るだけ離すことだ。

「晴政の家に住んでもらえば？」

「さすがに母さんの前でアレコレできないだろ」

　いやまぁそこは我慢しろって話なんだけどさ…正直できる自信ない。

「それもそっか」

　さすがに察した希が納得した。いやツッコめよ。ところ構わず盛るもんじゃないだろう。

「私だって晴政を前にして我慢出来る自信ないし」

「さいですか」

　まぁ家に住んでもらうのもアリなのだが、さすがに花澄さんも緊張するだろうし母さんだって色々と困るだろう。

「とはいえ花澄さんの家に住むっての論外だしなぁ…」

　アイツは彼女の弟だからな、そうなればアイツと同居になってしまう…有り得んぞ。

「それなら同棲したら良いじゃん」

「同棲…ですか？」

「そーですぅ」

　まずは花澄さん本人にちゃんと聞いてみないとね。

　取り敢えず同棲の理由については俺の希望という事で。彼女だって弟に襲われるだなんて想像したくあるまい。

「晴政くんと同棲…」

　一体何を想像したのだろうか、彼女は ポッと顔を赤くした。かわいいね。

「さすがに急な話ですからね、考えてくれると嬉しいです」

「いえ、したいです！同棲！」

　話を終わらせようとしたら彼女はそう言った。

　前向きなのは嬉しいが…そんな即決でいいのかな？いいのか。

「分かりました、俺も色々と準備するんでまた今度連絡しますよ」

「はい、楽しみです♪」

　花澄さんは嬉しそうにそう言った。

　同棲をするならまず家を借りたい。

　だがその前に母さんに話を…という事で話をする前に花澄さんと会ってもらうことになった。

「はじめまして、晴政の母です」

「はっはじめまして、晴政くんとはお付き合いさせて頂いてます…！」

　という訳で今日、二人が初めて顔を合わせた。

　母さんと花澄さんが互いに頭を下げる。

「まさか晴政が二股だなんて、お母さん心配よ？刺されない？大丈夫？」

「怖いこと言わないでつかぁさい」

　正直どこかでちゃんとしないとマジで刺されるかもしれないとは思う。

「晴政くんは希ちゃんのことも私のことも大事にしてくれます、だから大丈夫だと思いますよ」

　それなら良かった、これからも二人とちゃんと向き合わないとね。

「…多分」

「ちょっいま多分って言ったね、不安になるよ」

　花澄さんがちょっと目を逸らしつつ付け加えた。

　大丈夫だろうか？最後は刺されましたENDなんて嫌だよマジで。

「それにしても素敵な人ね、私も鼻が高いけど…まぁいいわ、本当は親として色々言うべきなのでしょうけれど、あなた達がちゃんと考えて決めたのなら何も言わないわ」

　母さんとしては色々言いたいのだろうが、俺たちの意志を尊重してくれた。

「ありがとう母さん、それと今回花澄さんに会ってもらった目的というか、理由なんだけど…」

　ここからが本題だ、花澄さんと同棲したいと言う旨を母さんに伝える。

「はぁ…せっかく晴政と一緒になったのに、もう女の子と同棲だなんて色々とやりすぎじゃない？まぁなにか考えがあると思うけど…」

「いやぁ、返す言葉もない」

　チクチクと母さんがそう言うが、どう考えても俺が悪いので言い返せない。

「ごめんなさい」

「あら冗談よ…ふふっ、私が手伝えることなら何でもするから言ってね」

「ありがとう母さん」

　花澄さんが謝ると母さんがすぐに笑ってそう言った。本当に感謝しかないな。

「でも、たまには私に会いに来てね？」

「もちろん」

　母さんがおどけたようにそう言ったが、もちろん会いに行くよ。

　と言っても同棲はまだもう少し先の話だから、ちゃんと準備しないとね。