三十六話 事を終えて
「どうして
思い出したかのように
「まぁ色々あるけど…視野を広く持って欲しかったってのはあるな」
「へぇ」
「それに…まぁ単純に同情というか、哀れとか思ったりしたのもあるし、何より抱いてくれって言ってくるのをやめて欲しかったのもある。後はまぁ…気まぐれだな」
「キマグレ?」
思い出しながら質問に答えると、希がまるでオウムみたいな声でオウム返しした。
力抜いてたのか結構変な声だったな今。
「そりゃそうだろ、今になって思えばあんな冤罪掛けてきたやつを同じバイトに誘うなんて正気じゃねぇよ」
「自分で言っちゃうそれ?」
あの時は、何故か
「どうしてアイツはあんなことしちゃったんだろうな。あんなことしなければ…」
'' 別れることは無かったしあれだけの騒動になることもなかった '' という言葉が出そうになり、すんでのところで飲み込んだ。
まぁそんなことは考えたって仕方ない、だから俺はもうその事を考えるのをやめた。
あの時の莉乃がそうしようと思ったんだろう、それも後先考えずに…な。
そんなこんなで二人で話していると学校に近くなる。
すると、隣にいる
「あっ、
「おはよー」
「そういえば、この間は大丈夫だったの?鞘本に絡まれたって言ってたけど」
「あー、実際に絡まれたのは私っていうか、
そういって希の友人が隣にいる男を見やる。
「アイツには去年もやられたから今回は警察沙汰にしたけど、それで済んだしまぁいいんじゃね」
「そういえばアイツ、去年の真ん中くらいに問題起こしたとかで停学になったとか聞いたけど、それってもしかして
そう希が彼に聞く。
なんと、どうやらアイツは去年も問題を起こしたらしい、やっぱりバカだったか。
でももしかしたらアイツがこの男…天美に絡むきっかけに俺が関わっていたのだとしたら…。
「どうしたの晴政、顔色悪いよ?」
俺の様子に気が付いた希が心配そうな声を出した。
「いや…もしかした俺のせいで二人は…」
「それは違うでしょ」
それの言葉を希…ではなく彼女の友人である長名が遮った。
「ごめんね?少しだけ希から話は聞いたけど、今回はどう考えてもアイツが悪いから、栄渡くんが気にすることじゃないと思うな。ね、好透?」
「まぁな、そこまで詳しい話は知らないから知ったようなことは言えないけど、あくまでアイツは俺にケンカを売ってきたのであって、栄渡の差し金ってわけじゃないどころか、むしろ被害者なんだろ?だから気にするな、時間と体力の無駄だ」
二人は特に気にした様子もなくそう答えた。
もしかしたら本当に俺のせいかもしれないのにそう言ってくれる彼らに感謝の気持ちが出てくる。
「…ありがとう、二人とも」
「え?何が?」
「ふふっ、ホントのことだから気にしないでよ」
俺の言葉に天美はきょとんとして、長名は笑ってそう返した。
あまり関わったことのない二人だが、かなり良い人たちなのだと言うことがよく分かる。
彼らと別れてから教室に入ると、莉乃と目が合った…が彼女は顔を真っ赤にして目を逸らした。
何なんだろう?と思ったが多分 希のせいだ。
席に着くと
「おはよ晴政、だいぶ調子良さそうだね」
「まぁな、おかげさまで無事に片付いたよ」
「そういえば、前に晴政にケンカを売ってきたバカが捕まったらしいね」
「だな」
良月まであのチャラ男が捕まったことを知っているらしい。
俺が知らないだけで意外と広まっているのかも?
「しばらく晴政が学校に来なかった時は心配だったけど、またこうして一緒にいられるのなら嬉しいよ」
良月は可愛らしい笑顔でそう言った。
コイツはモテるけどこれほど可愛いのなら納得だ。
「よかったら明日とか遊びに行かない?」
「良いな」
なんだかんだコイツとは仲がいいんだ、嫌なことは忘れてゆっくり遊びたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます