三十三話 これがお前への復讐だ
時間は元カノ視点から少し戻る…。
残暑の残る夕方、俺たちは今日も事を終えてホテルから出た。今日はヤりまくって疲れたっす。
「もしかして
「いえ全然、前に彼女が一人いたくらいでして…」
というかこんな事になるなんて思わないやん?
あの時はこういうことするのはずっと莉乃だけだと思ってたくらいだから…まぁ結果はアレだけどな。
「意外ですね、てっきり色んな女の子と付き合ってるのかと思ってました…希さんともそういう感じかと…」
「アイツとロクに喋ったのはホントつい最近ですよ、まぁ色々あってまた仲良くなりまして」
疎遠になっていたのは例の通りだ、恥ずかしがりにもほどがある。
「幼馴染なんでしたっけ?」
「です」
なんとも因果なものだ、よりにもよって仲良くなった理由が元カノなんだからよ。
そんなこんなで彼女の家に着いた。
「もう着いちゃいましたね…」
「まぁまた今度遊びましょう、流石に今日みたいなのは疲れるんでたまにがいいですけど」
色々と幸せな気分ではあるけど腰いてぇしアレもいてぇよ。ちょっとしんどい。
「ふふっ、そうですね…今度はちゃんと遊びに行きましょうか」
優しく笑う花澄さんは出会った時のオドオドとした態度はどこへやら、魅力に満ち溢れている。
…と思えば彼女がモジモジとし始めた。
「お別れ前に、キス…したいです…」
急に恥ずかしそうに顔を赤くした彼女は、少しだけ目を逸らしそうねだってきた。それ反則やろ。
「……いいですよ?」
こっちも照れてしまい思わず目を逸らしてしまう。顔も熱い。
そう返事をするとすぐさま彼女が飛びついてきた。
それを受け止めて抱き締めてやると彼女も首に手を回してくる。
その奥には、なんと丁度いいことにチャラ男もいた。今回は別に狙ってないんだけどな、運の無いやつだなアイツも。
しばらくそのままにしていると、彼女は顔を離した。その目は少し潤んでいる。
「えへへ…それじゃあ、また明日!」
「えぇ、おやすみなさい」
可愛らしくはにかんだ彼女に手を振って踵を返す。
アイツは自分の姉が、気に入らないヤツに飛びついているところを見てどう思うのか気になるところだが…。
そう思いチラッと後ろに目を向けると、ヤツはただ呆然と立ち尽くしていた。
距離があるためその詳細は分からないが…その姿は凄く惨めに見えて、思わず口角が上がってしまった。
お前にはその姿がお似合いだよ…これが俺の復讐だ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺はただ立ち尽くすことしか出来なかった。
姉ちゃんは事もあろうに自分からヤツに飛びついてキスまでしやがった…。
それも長いこと…まるで永遠かと思うくらいには長かった。
まさか栄渡のヤロウが彩藤さんたちと仲が良いだなんて思わず、俺はケンカを売るどころか危険な目に合わせてしまった。
殴られるだけなら耐えればいい、けどこれはあんまりだ。あんなヤツに姉ちゃんが…。
ショックのあまり家に入れず、俺はただ外をふらふらと歩き回るしかなかった。
あんなクソ野郎のどこがいいのか、姉ちゃんはもうくびったけだ。あんな表情見たことないしあそこまで変な空気を纏ったこともない。
ここで俺のスマホにメッセージが届く。
正確には画像だけどな。
誰かと思い送信者を見るが、よく分からないアカウントだった。
その画像というのは…。
「なっ…んだよこれ……」
それは、栄渡のヤロウと姉ちゃんがヤってる姿…もうとっくのとうに姉ちゃんはアイツの手の中だった。
さっきのだけでも相当辛かったが、この追い討ちは俺のナニカを壊すのに充分だった。
「嘘だろ…っはは…なんだよ…なんだよこれはぁ…」
その画像にどうしてか俺の体は反応してしまう…嘘だろ、姉ちゃんだぞ!
他でもない姉ちゃんがアイツに抱かれて、よがってるのを見てこんな…。
「っくは…ハハ…ハッハハハ…」
自分でも理解できない現象に、俺はただ暗い夜道でひっそりと狂ったように笑うことしか出来なかった…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます