三十二話 元カノ脳破壊

 まさかこんな事になるだなんて、考えてもみなかった。俺はさっきまで、のぞみ、そして花澄はすみさんと…。


「たくさん出たね…ふふっ…」


「お、おう」


 確かにちょっと前はロクに勃ちすらしなかったけどさ…それは置いといて、ちょっとやらかした気がするよ。


「初めてでしたけど、どうでした…?」


 可愛らしく布団で顔を半分隠している花澄さんがおそるおそる聞いてくる。カワヨ。


「めっちゃ良かった…」


「わぁ…嬉しいですけど、恥ずかしいです…」


晴政はるまさはもうヘトヘトね…ちょっとゆっくりしよっか」


 さすがに二人相手は経験ねーわ。死んじまう。

 さすがに疲れ果てているのでゆっくりしていると、あることを思い出す。

 ……そういえばさぁ。


「希さっき、撮ってなかった?」


 ちょくちょくスマホを掲げていたけれど、もしかして…。


「うん♪」


 ニコッじゃねーのよ。なんてことしてんだ。

 そんな可愛くしたってダメなもんはダメだ。


「…消しなさい」


「やだ!一人で使うだけだから許してよ!」


 まるで駄々をこねる子供のように無邪気に拒否しているが、内容があまりにもやべぇのよ。


「そういう報告はいらねぇのよ…ったく、誰にも見せるなよ?」


「うん♪あっ花澄さんもハメ撮りいる?」


「言ったそばからバカヤロウ」


 まぁ花澄さんなら当事者だからいいけど、目の前でやんなよ恥ずかしい…。


「欲しーです!後で送ってくださいね」


「りょーかい!」


 そんなこんなで俺たち三人に今日の様子を映したデータが手に入った。いやどーせぇっちゅねん。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 最近ハル君が連れてきた鞘本さやもとさんという人は彼と凄く仲がいい。

 帰る時も一緒だし、手も繋いでいるし…それを見る度に凄く胸が苦しくなる。


 確かに、あれから私はハル君と距離を置いてる。

 ハル君があのオッサンに監禁されて酷い目にあってから、私は彼の傍にいるべきじゃないと思って身を引いたのだけれど…。

 あれを見せられるのは正直辛い、ハル君があの時私とおっさんがシてるのを見た時もこんな気持ちだったのかな…。


 そんな私に、観納みのうさんから何通か動画が届いた。画像もある。


「え…これハル君、だよね…」


 送られてきたソレを見て私は愕然とした。

 その内容は、あの花澄さんと観納みのうさんがハル君とシているところだ。


「嘘、こんな…こんなぁ…」


 今まで私とシてる時に、ハル君のこんな表情は見たことがない…こんなに気持ちよさそうな…。

 胸がキュッと締め付けられるような苦しさを感じているはずなのに、お腹の奥がじんわりと熱くなる。


「こんなの…ダメなのに…ダメぇ…」


 自分の好きな人が他の人を抱いている姿を見て、私はみっともなく興奮していた。

 疼く身体、止まらない手…興奮は収まらず、気付けば送られてきた動画も画像も全てに釘付けになってしまった。


「はぁ…私って…マゾなのかなぁ…」


 彼が他の人とシている動画を見た私は何度も何度も絶頂し、締め付けられる胸がまた刺激になってしまっていつまでも止められなかった。



 気付けばもう真夜中だ、ずっと彼の姿を見てはもう一回、もう一回と繰り返していた。



 次の日、私はバイトに来たのだけれどハル君と花澄さんも同じシフトだったみたいで、二人を見た私は昨晩見た動画を思い出しいきなり変な気分になった。…これからバイトなのに、ダメだよ…。


 二人の様子は明らかに変わってて、いつもより距離が近いことは誰からも見て分かった。


「あの二人…これはデキてるわね、羨ましい…」


 店長は目ざとく二人がそういう関係である事を見抜いた。


「あーあ、アタシももうちょっと若かったらチャンスあったのかなぁ、ツヨシに誰か紹介してもらおうかなぁ、なんて…って裏木さん!?もしかして聞いてた…?」


 店長ほどの綺麗な女性が惚れるハル君。

 素敵な男の子なのはよく分かる、そんな彼を傷つけてその関係を終わらせてしまった自分に嫌悪も抱く。


「あはは、ちょっとだけ…でもハル君カッコイイですから、羨ましいです」


「そーなのよ、はぁ…出会い欲しいわー」


 店長は呑気にそんなことを言った。

 既に私は新しい扉を開いてしまった…どっちかと言うとパンドラの箱かもしれないけど。


 まさか自分がNTRでイクだなんて思いもしなかった。


 二人は今日も手を繋いで帰っている、その間柄はもう気の置けないものであることは誰の目から見ても明らかで…。


「今日もするのかな…うぅ、おかしくなりそう…」


 締め付けられる胸を抑えられず、私はすぐに家に帰って、あの動画で今日も自分を慰めた。

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