二十四話 囚われの…
夜が明けて朝になった。
ヤツは朝っぱらから俺を殴ってご満悦になりながら会社へ向かった。
あれから二日ほど経ち、正直かなりやばい状況だ。
まず食事がとれていない。水くらいは飲まされているのだが、それでも足りないくらいだ。
手首足首はロープでしっかり縛られており、そこが擦れて皮膚がめくれたようで、血が滴る感触がある。
散々殴られてしまったため首が捻挫したようで割と痛い。
アバラ骨もヒビが入ったのかは確かめようがないものの、強い痛みを感じる。
ただクソ親父は力があまり無かったようで、奇跡的に歯は折れていない。
しかしこのままでは時間の問題だろうけど…何より栄養がないのか空腹も感じており、それがまた精神的に来る。
今も頭が痛く、体がとてもしんどい。
あまりのしんどさに口から息が出てしまうし、咳も出てくる。
ぜぇはぁと呼吸をしてしまいまた喉と口が渇く。
あまりのしんどさに度々意識を失う。
目が覚めると、丁度クソ親父が俺の部屋に入ってきたところだった。
「ふん、ようやくお目覚めか。人が働いているというのに自分は家でお休みとは、随分と良いご身分だな」
どう考えてもクソ親父の嫌味だが、そんな言葉に返事をできる程の余裕など無く、睨みつけることしか出来ない。
「っ…このクソガキ!」
そこからはまた繰り返しの暴行だ。
奴が俺の腹に蹴りを入れた時に俺は後ろに倒れ、そのまま机に頭をぶつけた。
俺はその衝撃でまた意識を失った。
ーーーーーー時間は昼頃に遡るーーーーーー
マサ君がいなくなってからというもの、いやにあのクソ親父の機嫌が良い。
どう考えても怪しいのでヤツと接触をする。
「栄渡さん、ちょっといいすか?」
俺はヤツの弱みを握ってはいるし、わざわさま下手に出ることも無いが、それはあくまでそれは裏向きの話だ。
会社ではちゃんと表向きの態度で接さなければならない。
「ん、どうしたんだい酒匂君?」
「最近マサ君が見当たらなくて、栄渡さんならなんか知ってるかなと思ったんすけど」
どうせ知らないと言うのだろうが、敢えて聞いてみる。
今日の本命は別にあるからな。
「っ…いや、分からないな」
クソ親父は白々しく答えた。
もしかしたら本当に知らないのか…と信じてしまう人がいてもおかしくないくらいには。
「そうっすか、分かりました」
そもそもこんな人のいる所で正直に答えるわけもないが、どちらかというとヤツの反応を見たかった。
あの質問に対して、妙に怯んだような態度を一瞬だけだが取ったのだ。
怪しくないわけがない。
仕事が終わり、俺はクソ親父をあとをつけた。
奴が車に乗って会社から出た時に、俺も数秒の間隔を開けて外に出る。
奴は途中でコンビニに寄ってから家に向かった。
クソ親父が車から出て家に入ったことを確認し、家に近付く。
もしかしたらマサ君はここにいるかも?と思うが、まさか家に拉致した人間を置いておくか?とも思ってしまう。
しかししばらくすると、いつかクソ親父を追い詰めた部屋から、異常なほどにドンドンと騒がしい音が聞こえてきた。
一人暮らしでそんな音がなるなどありえない。
これは間違いないかもしれないな…。
俺はすぐに彩藤さんに連絡し、明日に行動を起こすことにした。
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