二十一話 元カノ勧誘
「おはよう
「おはよう」
あれから数日経って、希からの
距離感も近くなり、登下校の際はよく手を繋いでくる。
「おはようハル君」
「げっ…あー、おはよう
「アンタあんなことがあったのに良く顔出せるわね…」
莉乃は相変わらず俺に接触してくる。
基本的には学校での接触が多いのだが、今日のように待ち伏せ紛いなことをしてくる事もある。
学校に到着すればさすがに彼女も友人たちとの関わりがある。
希も莉乃も離れ、俺は良月と顔を合わせた。
「おはよう
「やっ、おはよう晴政」
互いに挨拶を交わし今日も下らない話で盛り上がる。
昼になったので昼食を食べようと思ったのだが、今日は一人で食べたい気分だったので、希と良月に断って人気の無いところにやってきた。良い場所だな。
「ハル君、今いいかな?」
弁当箱を開けて母さんの手作り弁当を食べようとしたところで莉乃がやってきた。付いて来るなし。
「良くねぇよ、わざわざ俺がここに来た理由を考えろバカ」
「ごめんね」
そう言ったのだが莉乃は隣に腰掛けてきた。
いや帰れよ。
しかしアレコレ言うのも面倒臭いので無視して食事をする事にした。
「ハル君、お願いがあるの」
俺が食事を終えると莉乃が話しかけてきた。だから帰れっつーの。
「なんだよ」
「お金あげるから抱いて欲しい」
莉乃があんな事があったというのに、まだ懲りてないのかバカなことを言い出す。
「あのなぁ、俺がそんなことで良いって言うと思うのか?」
「できるだけ沢山渡すから、お願い!」
ちなみに俺はクソ親父から慰謝料を貰っているのでだいぶ懐が暖かくなっている。
それに先日からバイトも復活しており、今日もだがシフトを入れているためバイト代という収入もある。
つまりそこまでお金に困っていないのだ。
「お金を沢山渡すからってお前、俺の懐事情知ってるだろ」
「うぅ…」
あんな事があってから性欲が減退しているのか、女性を抱けると聞いてもそこまで嬉しくないのだ。
べつに無くなった訳ではない…と信じたい。
「そもそもお金渡すって、お前そんなに沢山のオッサンを相手にしてきたのか?」
いくらなんでも一人の男からそこまで沢山金が取れるものだろうか?
それともクソ親父と散々ヤりまくったか?
「それはないけど… 」
「じゃあそんなに余裕があるのか?」
「…ない、です…」
そこまで聞くと莉乃がしょぼんとしている。しょぼんじゃないのよ。
「お前、花の高校生がそんなんでいいのか?友達と遊びに行ったりオシャレしたりで金いるだろ」
「それは、そうだけど…」
「はぁ…じゃあ俺のバイト先で働くか?」
さすがにこのままではいけないと思い、バイト先に誘った。
少しでも働いてみれば凝り固まった考えが変わるかもしれん。
「え…でも…」
「汗水垂らして働けばちっとは良くなるかもしれないだろ、もう少し視野を広く持つためにもどうだ?」
「…そしたら私を抱いてくれる?」
莉乃が上目遣いで問い掛けてくる。
いやだから君ね?アホなの?
「お前そればっかやな…まぁ考えてやるよ」
いい加減疲れたので投げやりに答えるが、それでも彼女は目を輝かせた。
「うん!じゃあその事お母さんにも聞いてみるね!」
先程とは打って変わって莉乃が元気になった。
仕事を通じて性根を叩き直してやる。
俺は別に厳しい事で知られてはいないのだ。
パワハラ上等!(ダメです)
やぁってやるぜ!
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